シュラドまでの道
海岸沿いを走る荷馬車が七台続く。
通り過ぎて行く他の荷馬車の者達が驚いた顔をして、ルイ達の乗っていた荷馬車を凝視していた。
「あー海って気持ちいい」
潮風が顔にあたる。
眼前に広がる海は遠くまで見渡せた。
所々に岩が突き出て、その岩の色も赤や緑や黒など様々な色をしている。そこに飛行する緑色をした魔海獣が住んでおり、羽を広げ飛び立つと海の中に飛び込んでいく。
波しぶきがあがり海が白く泡立つと海面に波紋が広がる。
そしてしばらくすると魔海獣が海から飛び出てきた。
「あれは見た事がないわね」
ルイがそう言うとロウフェンが直ぐに答えてくれた。
「そうなのか?あれはコルドンって言う魔海獣だ。ちなみに知っているとは思うが海は魔海獣、陸は魔獣、ダンジョンは魔物というんだ」
「へー知らなかったぁ。そんな違いがあるんだ」
「おいおい知識がなさすぎだろ」
それでそんなに強いのかよ、とロウフェンは理不尽さを感じた。
しばらく楽しむとルイは収納魔法で包みを取り出す。
これはルイが出発する時にクララから貰ったものだった。
その時の事を思い出す。
「ルイちゃん、これを受け取って」
「いいの?おねぇさん」
宿屋の前でルイはクララから包みを受け取った。
「私が焼いたクッキーなの。冒険者の方々と一緒に食べて道中仲良くすごしてね」
包みが温かく感じてルイは食べるのが勿体なく感じた。
「そうだ、おねぇさん。私からも受け取ってほしい」
ルイは二つの首飾りを出すとクララの手の平に乗せた。紐の先についた白い物体は、ラブオウにもあげていたデルミデイナの盾の欠片だった。
ラブオウにあげたものより小さくして、より着けやすくなっている。
仕事中にも着けられるようにとルイが削って小さくしたものだった。
「おねぇさんと旦那さん二人の分だよ。不格好だけど少しだけ癒しの効果があるものらしいから、仕事中に着けていると疲れが軽減すると思う。だからこれを着けて、いつまでも健康でいてほしい。
壊れないように強化もしておいたよ」
そうルイは言った。
「ありがとう、ルイちゃん。シュラドの街に行っても元気でね」
「うん、大丈夫。私はいつでもどこでも元気でいるよ」
ルイは思い出しながらクッキーを見る。
今もこれを見ると温かさを感じていた。
包みを開けるとクッキーが沢山入っている。クララが言っていた冒険者の分もきちんと入っていた。
一緒に乗っている黒き山脈の皆で食べるといいわよね、とルイは隣にいたフラミーに声をかける
「これ、宿屋のおねぇさんからいただいたクッキーで、皆で一緒に食べてって貰ったものなの。フラミーはクッキーは食べれる?」
「ええ、大丈夫よ」
「じゃあ手を出して」
ルイはフラミーの手にクッキーを何枚も乗せた。
「ちょっ、こぼれるっ」
フラミーは慌てながら、こぼれそうなクッキーを口でくわえる。落ちるのを防げてホッとした。
メルナとジャッカルド、ロウフェンの手にもクッキーを沢山乗せる。メルナの手は小さかったので、口の中にもクッキーを入れてあげると目を白黒させていたが、美味しかったようで嬉しそうにモグモグと口を動かしていた。
ルイは自分の口の中にもクッキーを入れる。クララらしいほんのりとした甘味のある優しい味でとても美味しかった。




