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出店



異世界のお店は見た事もない物が沢山売られている。ルイは楽しそうに目を輝かせながら並べてある商品を見ていた。


幼げな顔は興味ありげに商品に釘付けで、海のような青い髪は肩口で切り揃えられている。

そんなルイは商品を一つ指差した。


「これ下さい」


選んだのは木彫りの少女が青色の光沢のある一センチほどの球体の石を掲げたもの。

ただの木彫りではなく木の色が薄桃色で、西の大陸には桃色の木が普通に生えているのでこうして売られていた。


少女はワンピースを着て、髪には銀の粉が振りかけられてコーティングされているので、日に当たるとキラキラと輝く。


髭の生えた露店の店主が気軽に答えた。


「二千カイル。銀貨二枚だよ」

「じゃあこれ」

「まいど」

ルイが値切らずに買ったので店主はニコニコしている。


二千カイルのカイルは初代王様の名前で、通貨の名前になっていた。


銀貨二枚は二千円ぐらいの価値で、小銅貨一枚が十円で銅貨一枚が百円、銀貨が千円、大銀貨が五千円。金貨が一万円といった感じでルイは覚えたが、実際はかなり適当。


物価は一々変わるので、今日安くても明日は高いなんて普通にある。何なら店で値段が違うので、安く買いたいなら安い品物を置いてある店で買うのが一般的だった。


異世界では金鉱石は沢山あり別の大陸でも普通に通貨として使われているので珍しくない。


金鉱石より価値のある鉱物は数限りなく存在するそうなので、ルイはそれらを見るのも楽しみにしていた。


買ったものを収納魔法を使って仕舞う。

魔法は便利よね、とルイは思っていた。


「お嬢ちゃん、収納魔法をもってるのかい。いいねぇ」

「運が良かっただけよ」

じゃあね、と店主に言ってルイは次に行く。



今度は首飾りや指輪の装飾品を扱っている露店に来た。


「うわぁぁぁ、綺麗」


周りが金縁になった緑の大きな石のついたネックレス。中心部分に向かって黄色が強くなり中心は透明だ。陽にかざして影を作ると森林の木漏れ日のよう。


買っちゃおっかなぁ、とルイは思う。


こっちの赤い石のついたのもいいし、黒いのも捨てがたい。黒曜石っぽいのもいいと、目についたもの全てが良く見えた。


そんなルイの様子に、白い帽子をかぶった若い男性の店主が声をかける。


「紐の長さは変えられるよ」

「それはしなくていいんだけど、じゃあこの五つ下さい」


ひょいひょいと選んで手に持つ。それを見て若い店主は笑った。


「いっぱい買うね。一つ二千五百カイル。五つで一万二千五百カイルだよ」


値段を言ってきたのでルイは収納魔法でお金を取り出す。


「なら金貨一枚銀貨二枚銅貨五枚ね。これでいい?」

「ぴったりだね。この髪飾りのリボンもやるよ」

無造作に店主はリボンをとるとルイに差し出す。


「わぁ、赤の淡い色合いが好き。ありがとう」


直ぐに髪につけると店主は嬉しそうに褒めた。

「似合ってるよ。また来なよ」

「ええ、それじゃあまた」


ルイは店主に手を振って別れる。

買ったものはまた収納魔法で空間に仕舞った。

「ああ、幸せ。後で宿屋の中でじっくり楽しもう」


そう思っていると、ルイに男性がぶつかってくる。

「おっとごめんっ・・ごはっ」

前方からぶつかって来た男性は、まるで鉄板にぶつかったかのように撥ね飛ばされた。


地面に倒れると、呻いたまま起き上がらない。それを驚いた様子もなくルイが見下ろしていた。


「この世界のレベルって面白いよね」


この異世界は単純に言うとレベルの高い方が勝つので自分を害せるものなどほとんどいない。

最高レベルが20で、自分はレベル19。ほぼ勝確定だとルイは思っていた。


「それにしても貴方、スリね」


ルイが顔を近づけると、スリの男性は地面を這いずって逃げようとするが、怯えてうまく動けずにいる。


「ひぃぃぃすいません。もうしません」

ひたすら謝っている中、ルイは男性の持ち物を見ていた。


犯罪者をタダで野放しにしたくないので奪う事にする。人のものを盗むのなら自分の物も失う覚悟ぐらいあるでしょ、とルイは思っていた。


「あら、良いネックレスと腕輪ね」

「さ、さしあげます!命ばかりはっ」


男は必死になって命乞いをする。

レベルの高い者は犯罪者に報復してもよしとされているのをルイは思い出していた。


「くれなくてもいいから。いくらなの?買い取るわ」


無料で奪うのは嫌なので、金銭を支払って奪う事にしたルイは、男性の着けていた蔦模様の鈍い銀色の腕輪を見る。


「へ?これは自分で作ったヤツで・・・」

「じゃあ銀貨四枚。腕輪だけいただくわ」


男の手から腕輪を受け取る。


そして、まだまだ剥がすものがないかルイがじっくりと見ると男性は恐怖で震えだした。


「髪の毛を結んでいる赤色の飾り紐と上のジャケット。それはどこで買ったの?」


「これも妻と娘が作ったものでっ・・」

「金貨十枚でいいわね。寄越しなさい」

娘と妻、凄いわー、とルイは思いながら男性から奪い取った。そして金貨を握らせる。


「え、え、えぇぇぇー!?」


手の中にある金貨を見て男性は大声を上げた。

安物で作った飾り紐とジャケットだけで金貨十枚は高額すぎる。

そんな男性を放って、ルイは自分のやるべき事は終わったとばかりに離れて行った。


男性は放心しながらその背を見送る。


「何だったんだあの女。絶対10レベル以上だぜ。殺されなくて良かった。これからは物作りでもして稼ぐか。あんなのがいたんじゃ命がいくつあってもたりやしないよ」


庶民の一月の生活費は五万程度。貧乏な家庭は三万で生活していた。

男は肩を落として歩き出すが懐は暖かかった。


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