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第八話 会談

ここから日本側視点です。


時は、大和副長の能村大佐が臨検隊を率いて、ガレオン船への乗り込みを試みていた時間に戻る。



「ん?あれに乗り込めと言う事か?」


ガレオン船の甲板上からこちらに向けて手旗信号を振る乗組員の姿が見えた、

だが、その信号は解読不明であるため、能村大佐は何となくの意味で向こうの意思を理解しようとした。


能村大佐と他20名程の陸戦隊が乗る内火艇は、ガレオン船団の旗艦と思われる船へと到達した。


早速乗り込んでみると、甲板上では白人で古臭い格好の船乗り達が、皆こちらへ恐怖と好奇心の混じった眼差しを向けてきた。


「私は大日本帝国海軍、第二艦隊旗艦大和の副長を務める能村次郎大佐だ。ここの指揮官とお会いしたい。」


能村は名乗りを上げた。

すると、こちらへ一人のリーダー格らしき格好の男が歩み寄ってきた。


「私はこのレイネティア王国海軍第5艦隊を率いる、ライロス・レオルドといいます。」


『!?!』


目の前の白人である男から突然日本語が飛び出したため、能村と陸戦隊の面々は一瞬面食らった表情をしたが、すぐに立ち直る。


「し、失礼。レイネティア王国とは、何処にある国又は組織なのでしょうか?」


「我が国は、ベルジア大陸の西端に位置する王国です。」


「??ベルジア大陸?」


能村は聞いた事のない国名や大陸名に、目の前の人物が揶揄っているのではと思い始めた。


「こちらからも、質問して宜しいか?」


「あぁ、どうぞ」


「失礼ながら、大日本帝国と言う国名は、この周辺国では聞いた事がありません。貴方達の船に掲げてある旗も、私の記憶では見た事のない旗なのです。どこから来られたのですか?」



(日本を知らない?ここは日本近海の筈だぞ。一体この連中は何者なんだ?)



「我々は現在作戦行動中であり、詳しくは話せませんが、ここから近くに存在する日本本土から出航しました。」



当然、レオルドからしたら理解し難い話であった。

お互いに認識の何かが噛み合わない事を察した。


「とりあえず、立ち話は何ですので、艦内にお入りください。案内いたします。」



そう言うレオルドの言葉に従い、能村一行は艦内へと降りていった。

ガレオン船の中は、お世辞にも快適とは言い難いような環境であり、案内された応接室も最低限の装飾に抑えられたシンプルな部屋であった。



「どうぞ、お掛けに。」


「では、失礼します。」


レオルドと能村はテーブルを挟み対面した。


「改めて、大日本帝国海軍の能村次郎です。」


「レイネティア王国海軍のライロス・レオルドと言います。」


二人は改めて自己紹介をした後、本題へと入った。


「まず、あなた方はここが何処の海域であるとの認識でいますか?」


能村はいきなり核心を突く質問を問い投げた。


「ここはバルバラス帝国の領海であるとの認識でいます。」


「バルバラス帝国?」


またもや聞いた事のない国名が出てきた。


「我が大日本帝国は現在、米国英国を始めとする連合国軍と戦争状態でありまして、我々第二艦隊も現在作戦行動中なのです、その道中であなた方と先程攻撃してきた不明船に遭遇した次第です。

我々からすると、ここは日本本土近海であるとの認識なんですが...」


「残念ながら、この近くの周辺国で現在戦争をしている国は私の記憶にはございませんし、この先の海域には陸地は存在しない筈です。」


「・・・なにか、地図の様な物はお持ちか?」



これでは埒が開かないと考えた能村は、この船に積んであるであろう地図を見せて貰いたいと要求した。


「しばしお待ちを。只今部下に持ってこさせます」


それからすぐに、部下が地図を運んできた。

レオルドはそれを受け取ると、テーブルへ地図を広げて見せた。


「!!これは一体!」


能村は驚愕の声を思わずだした。

その地図には日本列島はおろか、ユーラシア大陸や米大陸などの全ての大陸や地形が丸々変わっていたのである。

代わりに見覚えの無い大陸が二つと、小さな島々が存在するだけであった。


「ここがベルジア大陸です。そしてこの国がレイネティア王国であり、その隣の大きいのがバルバラス帝国となります。」


能村の頭は混乱していた。

見た限りだと嘘をついているとはとても思えない、

だが、仮にこの地図や話が本当だとしたら、別世界に来てしまったとしか説明が出来ない事態であり、

それはまだとても信じられない事であった。


「能村殿、先ほど貴殿らが滅された艦隊はバルバラス帝国の戦列艦隊です。

我々の艦隊には現在、レイネティア王国第一王女のリーア姫様が、お乗られになっております。

先ほどはバルバラスの艦隊から、我等と王女様を偶然とは言え救って下さった事に感謝を申し上げます。」


レオルドはそう言うと能村に対して頭を深々と下げてきた。

能村は慌てて、


「いえ、お礼を言われる様な事はしておりません、我々はただ応戦したのみですので。

それにしても王女様がお乗られになっているのですか?」


「はい、実はその事で一つお願い事がございます。」


「なんでしょう」


「どうか、王女様の身の安全の保障だけでも約束し...」




そう言いかけた時、

コン、コン、


部屋のドアが軽くノックされた後、ドアが開かれた。

そこに立っていた人物を見て、レオルドは驚愕した。




「リーア王女様!!なぜここへ?」


「お、王女様?!」


二人が混乱するなか、

リーア姫が口を開いた。


「私はレイネティア王国の王女である、リーア・ティル・レイネティアと申します。」


美しい顔立ちをした金髪の女性は自身を王女と名乗ったのである。

それに対し咄嗟に能村も立ち上がると、


「私は大日本帝国海軍、戦艦大和副長を務める能村次郎と申します。」


そう言うと、能村は姿勢を正し、海軍式の敬礼をしてみせた。

それに対しリーア姫も王族特有の礼で答えた。


「会談中に突然の乱入をお許しください。

どうか、話し合いに私も参加させて頂けないでしょうか?」


能村はレオルドに視線を向けた、

どうやら彼も予想外の展開であったらしく、本意では無い様子ではあったが、姫の要望に応えない訳には行かなかった。


「能村殿、よろしいか?」


「私は構いません。」





こうしてレオルドの考えとは裏腹に、リーア姫を交えた3人での会談となった。


「能村様、まず最初に私たちを救って下さったことに感謝を申しあげます。

それと同時に、私の方から一つお願い事があるのです。

...どうか、私の身はどうなっても構わないので!

ここに居る艦隊の皆の命の保障していただけないでしょうか?」


「な!何をおっしゃいます!ここにいる将兵は皆姫様をお守りするため戦っているのです!」


「ですが提督、私の命の為にこれ以上大勢の方が亡くなっていくのは、弱い私にはもう耐えられないのです!能村様!どうか、私の身と引き換えに皆の命を救って...」


「...ちょ、ちょっと待ってください、

なにも我々は貴方方を取って食おうなどとは考えてはおりませんし、そんな余裕もありません。

とりあえず、このまま日本近海から退去して頂けるのならそれで十分です。」


能村は自分達が何か誤解されていると思い、咄嗟に話を遮って本音を話した。


『ほ、本当ですか!』


リーア姫とレオルドは同時に言うと、お互い安堵の表情を浮かべていた。

誤解を解けた能村も、これには苦笑いをする他なかった。

部屋の雰囲気が軽くなっていたその時、

突然、ドアがノックされレオルドの部下が入って来て報告を上げた。



「お話中失礼いたします、東方向の上空に王国近衛隊と思われるワイバーンが3騎ほど姿を表しました。」


「!!ガルズ! 提督、能村様、一旦失礼します。」


報告を聞くなり、姫は早速さと部屋を後にした。


「あ、姫!お待ちを!能村殿、申し訳ないが、少々お待ちください。」


「いえ、よければ私もご一緒頂けないか?そのワイバーンとやらを見てみたいので。」


「? 分かりました、ではご一緒に。」


そうして、二人も姫の後を追って甲板へと上った。







「!無事だったのね、ガルズ...」


リーア姫は甲板で空を見上げながら呟く。


上空には、ボロボロになりながらも無事に艦隊の元へと飛行してきたガルズ達の姿があり、いま竜母船へと降り立とうとしていた。


リーア姫は他の乗組員達の人目の中で、涙を溢してガルズの姿を見上げていた。


すると、そこに辿り着いたレオルドと能村もワイバーンの姿を目撃した。


「あれは!!!嘘だろ,....」


空を見上げて絶句する能村や、甲板に待機していた陸戦隊の面々の驚愕した姿に疑問を浮かべたレオルドは尋ねる。


「一体どうされました?ワイバーンが珍しいのですか?」


「・・・いえ、珍しい所の話ではありません....」


能村にはそう答えるのが限界であったが、同時に自分や艦隊が今いるこの場所が、今までの世界の常識が通じない物であるのだと、ようやく理解した。





それからしばらくして、精神を落ち着かせた能村はレオルドに対してとりあえず日本近海だと思われるこの海域からの退去の約束を交わしたとともに、お互いの国の事に対して情報を交換して、理解を多少は深めていた時である。


「能村大佐!大和より至急船へ戻るよう命令が届きました。」


「なに?わかった。レオルド殿、とりあえず我々は船へと戻ります。」


「分かりました。では、我が艦隊もそろそろこの海域から離脱いたしますので。私事ではありますが、貴国の事について興味がありますので、いずれ国交が結ばれればと期待しております。」


そう話すと、二人は敬礼を交わして、能村は部下とともに大和へと戻り、王国艦隊も離脱を開始していった。








第二艦隊・旗艦大和艦橋にて



「只今戻りました。」


能村は艦長の有賀と長官の伊藤へ敬礼し、

向こうで起きた事の顛末を簡潔に報告した。


「そんな事があったのか、それにしてもベルジア大陸にレイネティア王国にお姫様、ふざけた話のようではあるのだが、さっきのワイバーン?だったか、あんな物見せられてはな。

まるで別世界にでも来てしまったのか、我々は。」


有賀が訳がわからんと言う表情で呟く。


「それで、至急戻る様にとの命令ですが、何か起きたのですか?」


「あぁ、それなんだが。先ほど本土の司令部より連絡が入った。天一号作戦は中止。直ちに内地へ帰還せよとの指令が下った。」


「作戦中止ですか?本土で何かあったんでしょうか。」


「分からない。だが、案外こちらと似たような事態が本土でも発生したのかも知れんな。

あれから米軍の偵察機や潜水艦が急に鳴りを潜めたのも何かしらの関係があるのかも知れん。

兎も角、我々第二艦隊は急ぎ本土へ帰還する。」


「了解しました。航海長、針路を本土へ向けよ。」



こうして、大和と第二艦隊は作戦を中止し、日本本土へと引き返していった。







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