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第五話 向こうの事情①

ここで初の異世界側の描写です。



ここで時は少し巻き戻る。

場所は地球世界とは異なる世界での話。








話の発端は、この世界における三大大陸と呼ばれる大陸のうち、東に位置する"ベルジア大陸"と呼ばれるオーストラリア大陸より少し大きい程度の大陸で起こった事である。






ベルジア大陸・バルバラス帝国

湾岸都市メリル






「なんですって?!それでは話が違うではありませんか!!」


ベルジア大陸の大半を支配する大国、"バルバラス帝国"の湾岸都市メリルにある、

赤色を基調とした豪華な屋敷の一室で、金髪に白い顔立ちをした可憐な美女が声を荒げて、目の前のバルバラス帝国外交官に対して抗議していた。



「話が違う?難癖を付けるのは辞めていただきたいものですなぁ?言っておきますが、我が帝国が貴方方の様な小国に対して最大限の譲渡をしているのですよ。」


「譲渡ですって?王国の民達が、貴方たち帝国民の奴隷となるこの条件がですか?」


美女は机の上にある一枚の紙に指差し訴える。




そこに書かれている内容は、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


1、貴国は国内に存在する地下資源の採掘権を全て帝国へ譲渡すべし。


2、貴国は帝国軍の監督の元、即座に軍を解体すべし。


3、貴国は国内に帝国から派遣される統制機関を受け入れるべし。


4、3が達成された後、貴国は外交、内政、国防、その他全ての権限を帝国統制機関に譲渡すべし。


5、貴国の王室は帝国皇帝"バルバラス5世"の権威の元、存続を許される。


などである....




「人聞きが悪い、我がバルバラス帝国民の優れた生活レベルを貴国も享受できると言っただけですが?」


「話しになりません。今回の会談はこれで失礼させていただきます。ただ、我が国は決してこのような条件は飲めないという事だけは、今ここで伝えさせていただきます。」



そう言い残すと、高級なドレスを身に纏った金髪の美女は立ち上がり、入り口付近に待機していた護衛と共に部屋を後にした。




一人残ったバルバラス帝国外交官は呟く。


「ふん、元から条件など飲むとは思ってないわ。お前をここに誘い出す事が目的だったのだからな。"第1王女様"」



その王女とは、たった今護衛を引き連れながら部屋を後にした、

"レイネティア王国" 第一王女

リーア・ティル・レイネティアである。



現在、彼女はバルバラス帝国が突如としてレイネティア王国に押し付けてきた理不尽な要求に対して、その詳細を確かめるため、この港湾都市メリルまでリーア姫みずから足を運んだのである。




「会談はいかがでしたか?」


リーア姫に廊下で話しかけて来たのは、

青色と銀色の装飾が施された鎧を身に纏った大男、王国近衛騎士団で、今回の護衛部隊の隊長でもある"ガルズ"であった。


「全然よ、まるでこちらの聴く耳を待ってくれなかったわ。」


「あの様な宣戦布告とも取れる内容を送ってくるとは、帝国は仕掛けてくるつもりでしょうか。」


「残念だけど、帝国から攻撃されれば王国はとても耐えられない。どうにかして戦争だけは回避しないと...」



そんな会話をしている間に、屋敷を抜けた一行は広い広場に駐機していた"ワイバーン"の元へと向かった。

今回の会談は急を要するものであったため、時間のかかる陸路ではなく、空を飛ぶことの可能なワイバーンでリーア姫一行は来ていた。


広場にはワイバーンが全7騎おり、その内の一騎は騎士の乗るサドルの後ろに豪華な装飾の施された馬車のようなものが取り付けられており、雨風が防げるものとなっていた。これは王族専用のワイバーンであり、普通のワイバーンよりも大きく、スタミナの多いワイバーンであった。


ワイバーンの上には既に待機していた近衛騎士が出発準備を整えており、後は姫一行が搭乗するのを待つのみであった。


だが、


「.... ん?」


護衛隊長のガルズが異変を感じとる。


周囲に無数の"魔力"反応を感知したためだ。


「? どうかしたの?ガルズ」


「っ!!姫様っ 早くワイバーンへ!」


ガルズがそう叫ぶと同時に、周囲の建物の窓から大量の紫に輝く光の矢の様なものが一斉に姫へと放たれたのである。


ガルズは咄嗟に姫の周囲へ防御魔法を展開させ光の矢を弾き返した後、

姫をワイバーンの陰へと隠れさせた。


「姫様!私が合図したらワイバーンへお乗り下さい。援護いたします。」


「わ、わかったわ、、」


姫は状況をまだ理解できていなかったものの、反射的に首を縦に振った。


ガルズは前へ向き直り、周囲の状況を把握する。

部下の近衛隊らはワイバーンに騎乗した状態で何とか敵からの攻撃を捌いていた、

どうやら敵の攻撃魔法は威力が十分でないのか、ワイバーンの鱗を貫通することは出来ないでいた。


すると、屋敷の門の中から続々とマスケット銃で武装したバルバラス兵が現れると、近衛隊目掛けて一斉射撃してきたのである。

精鋭の近衛隊といえども不意に放たれる銃弾を防ぎきることは叶わず、数人の兵がワイバーンから落下し血を流した。


「っ!? 帝国兵だと、この襲撃はバルバラスの仕業か!ならば遠慮は要らんなっ!」


帝国の屋敷が近くにあったため、それを配慮して反撃出来ずにいた近衛隊だったが敵が帝国だと分かった今、ガルズはすかさず部下へ命令を下した。


「全員、ワイバーンの火炎で広範囲攻撃を実施せよ!」


それを聞いた近衛兵達は待ってましたと言わんばかりにワイバーンの口を周囲へ向けさせて、火炎を全方位に放たせた。


『うわぁあああぁ、熱い!助けてくれぇ!』


数人の帝国兵が火だるまになりながら苦しみもがく。

帝国兵たちが怯んだ一瞬の隙を見てガルズは叫んだ。


「今です姫様っ!!」


ガルズの合図でリーア姫はすかさず王族専用騎へと乗りこんだ。

それを確認したガルズは自身のワイバーンへ騎乗すると、


「全騎発進せよ!」


ガルズの号令のもと近衛隊ワイバーンは一斉に翼を広げて、空中へと飛び立った。


地上からは帝国兵がしつこくマスケット銃を放つが全て空振りで終わっていた。




「さて、後はどうやって王国へ逃げ切るかだが、」


ガルズは後ろに視線を送る、

搭乗騎士を失ったワイバーンが2騎おり、残った騎の近衛騎士も皆軽く負傷していた。

ガルズは一直線に王国へと辿り着くのは困難だと判断する。


「やむを得なんな、魔信で艦隊へ至急救援の要請を出せ。」


『は!』


ガルズが命令すると部下の近衛騎士は丸い球体を取り出し、それに向けて救援を要請しだした。










「地上確保は叶わなかったか... やはり非殺傷性の攻撃魔法ではワイバーンはとても貫け無いな。」


ワイバーンが飛び立った後の広場で、戦死した部下の姿を横目に呟くものがいた。

今回の"リーア姫捕縛作戦"の指揮をとっていた、


バルバラス帝国軍 メリル駐在司令

ケルス・ライアン司令官であった、


するとそこへ




「チッ、帝国の屋敷を焼き払うとは。恐れ知らずの蛮族だな。それにしても地上確保に失敗した挙句、これだけの兵員が居ながらワイバーンを仕留められないとは、やはり辺境の部隊は練度が低いな。」


先ほどの帝国外交官の男が文句を言いながら歩いてきた。


「お言葉ですが、事前連絡無しでいきなり姫を無傷で捕えろと命令されたのは貴方です。非殺傷性の麻酔攻撃魔法ではワイバーンを仕留める事は出来ません。」


「フンッ、まぁいい。それで?追撃のワイバーンはもう出したんだろうな?姫の搭乗騎だけは間違っても落とすんじゃないぞ。」


そう言い残すと、外交官は待機してあった馬車でそそくさと現場を後にした。


「まったく、帝都から派遣されてくる人間というのは何故こうも傲慢な奴ばかりなんだろうか。」


ケルス司令は後ろに控えていた副官へ言葉を漏らす。


「司令、そんな事聞かれでもしますと...」


「あぁ、すまんな。 それで追撃には何処が上がった?」


「第4竜騎士団の13騎が現在追撃中です。」


「よし。護衛のワイバーンを撃墜した後、姫の搭乗騎は無傷で捕えるよう、今一度伝えておいてくれ」


「了解致しました。...司令、一つお伺いしてもよろしいですか?」


「なんだ?」


「なぜ、屋敷の中で姫を拘束しなかったのですか?そうすればワイバーンで逃げられる事は無かった筈です。」


「政治的な理由らしい、一応あの屋敷は帝国外交庁の物だからな。その中で捕えると帝国が関与している事に言い訳が出来なくなってしまう。まぁ、あの外交官様が咄嗟に兵士に突撃を命じたせいで、それも台無しになったがな。」


「政治とは面倒な物ですね。」


「兎も角、我々も司令部へ戻るぞ。これから忙しくなるからな。」






新しい用語や人名が沢山出てしまいましたが、ご了承ください。

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