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第四話 砲撃戦



1945年4月6日 午後

日本・九州近海







第二艦隊が現れて、場が静寂に包まれている現在。大和から見て斜め左側に戦列艦、斜め右側にはガレオン船団が位置しており。

それぞれ戦列艦、ガレオン船、第二艦隊と上空から見た時に綺麗な三角形の位置にそれぞれ一定の距離感を保ちつつ、監視し合っていた。



司令長官の伊藤は、艦橋で双眼鏡を握り不明船達を凝視する。

よく見ると、戦列艦の後部にデカデカと掲げられている国旗は赤色の布地の中央に翼を広げたドラゴンの絵が煌びやかな金色の装飾で描かれていた。一方でガレオン船の国旗は青色を主として中央に王冠が描かれたシンプルなデザインであった。

しかも、それぞれの甲板上で此方を指差し、今も騒いでいるように思われる不明船団の乗組員は明らかに西洋風の顔立ちと、時代劇のような古臭い格好をした外国人であることは間違いなかった。


米軍に襲われる危険もある事から、いつまでも睨み合っている訳にもいかず、伊藤はこちらからコンタクトを取る事を決めた。



「作戦行動中だし手短に済ませんとな… とりあえず、国籍と所属を聞こう。そして何故こんな日本近海であんな格好と船で砲戦ごっこをしていたのか問わなければいかん。」



伊藤はそう言うと、続けざまに



「それと、念の為全艦に総員配置に付くよう下令せよ。ただし砲はまだ向けないように。」


「了解」



伊藤の命令を機に各艦では各種砲座に人員が配置さ

れ始めた。



「さて、肝心の連絡手段だが、あの見てくれの船では通信機器を積んでいるかすら怪しいな。まぁとりあえず無線で呼び掛けて、それで応答なければ発光信号を送るか。」



戦艦大和から不明船に対して無線による通信が試みられたものの、不明船たちからは一向に応答がなかった。



「まったく、このご時世に通信機器すらまともに使えない木造船でよく海に出ようとする連中がいたものですな。」



艦長の有賀が少し苛立ちと呆れが混じった声で話す。それに対し、艦橋の数人も同意見だと言わんばかりの顔をしていた。

それもその筈で、艦隊は一路沖縄へ向かっていた最中であったので、こんな所で道草を食っている時間は本来なら無い。

だが、日本近海で腐っても大砲を装備した国籍不明船団を放置する訳にも行かず、艦隊は時間を割いて不明船への対応に当たることとした。



「仕方ない、では発光信号で先ほどと同じく国籍と所属を問う内容で送ってくれ。」


「はっ」



続けて、先程の無線通信と同じ内容で発光信号の光が不明船団に向けて放たれた。





それから少したった頃だろうか、

艦隊の全員が不明船団からの返答を期待して、固唾を飲んでいた時、ついに第二艦隊から見て左手の位置にいた戦列艦隊が動きを見せたのである。

だが、それは伊藤達が期待した形での返答ではなかった。



戦列艦隊は突如船を回頭し始め、第二艦隊に対してその物々しい大砲が大量に突き出た横っ腹を向け始めたのである。




「なに!? 一体なんの真似だっ!」


艦長の有賀が叫んだ次の瞬間、


『敵艦発砲!』

艦橋要員の報告が聴こえたと同時に


『ドオッーン』『ドォッーン』


と連続した砲音が次々と鳴り響き、静寂だった海域に突如として爆音が鳴り響いた。


戦列艦隊から放たれた砲弾は第二艦隊の最前列に位置していた軽巡矢矧に集中し、数多くの水柱とともに派手な爆煙が矢矧を覆った。



「あぁ!クソッ」


爆煙のあまりの大きさに皆矢矧の身を案じたが、徐々に煙の中から矢矧の姿が出てくると、多少艦上構造物が焦げた程度で、何事もなかったの如く航行を続ける軽巡矢矧の姿がそこにあった。



『矢矧健在です!損傷軽度の模様!』


艦橋要員が矢矧の健在を報告し、皆胸を撫で下ろした。


矢矧の健在を確認した伊藤は即座に次の命令を艦隊に出した。



「応戦するぞ。全艦へ伝達、左砲戦用意!」


「了解っ、左砲戦用意!」



「長官、私は戦闘指揮所に移ります。」


「頼んだ。」


艦長の有賀は伊藤へそう告げると、足早に戦闘指揮所へと向かった。

艦隊は既に戦闘準備を済ませていたため、即座に各砲は先ほど発砲してきた戦列艦隊に指向した。


大和の艦橋からは、戦艦大和の主砲である45口径46糎三連装砲塔がその巨砲を重々しく回転させ、今敵艦隊に向けようとしている様を拝むことが出来ていた。


戦闘指揮所に移動した艦長の有賀は指揮を取りながらも、その固い表情とは裏腹に、僅かながらも心を震わせていた。航空機が戦場を支配したこのご時世において、まさかこんな形で世界最大の戦艦の艦砲を大昔の戦列艦相手とは言え、敵艦隊に向けて放つ機会に恵まれた事に、有賀は内心嬉しく思っていた。



「目標、左舷敵艦隊」


「主砲、砲撃始めいっ!」







『ドボォガッッッーーーーンンンンン!!!!』





先ほどの戦列艦隊の砲声とは比べ物にならない程の爆音が海域を震わせた。



戦艦大和の射撃と同時に合わせて他の艦艇も射撃を開始しており、帝国海軍から放たれた砲弾の数々は透き通った海面を高速で這うようにして戦列艦隊へと吸い込まれていった。



第二艦隊からするとほぼ至近距離からの砲撃であるため砲撃はほぼ水平に行われており、射撃開始とともに、一瞬で戦列艦隊周辺に大量の水柱と爆炎が降き荒れた。

特に一際巨大な大和の放った46センチの零式通常弾は後列を進んでいた不運な戦列艦に一射目で命中し、木製の船体をいとも容易く貫きながら船体を蹂躙した後で、時限信管が起動し戦列艦の船体真下でその威力を遺憾無く炸裂させた。


結果として、他とは比べ物にならないほどの爆発が一隻の戦列艦を包み込み、その爆発の余波は近くにいた戦列艦の船体へも強い衝撃を与えた。





艦隊が射撃を開始してから僅か1分たらず。

大和が二射目を放つ準備を終えた頃には既に、他の友軍艦艇たちの連続射撃により敵戦列艦はほぼ壊滅状態となっており、これ以上の攻撃は不要と思われた。




「全艦、砲撃中止せよ。」


伊藤は結果を見届けて艦隊に砲撃を中止させた。


既に12隻の戦列艦隊が存在していたと思われていた場所には跡形の残らない木片が水面を大量に埋め尽くすだけであった。

そしてその木片に僅かに生き残ったであろう乗組員達が必死にしがみついていた。



「駆逐艦に溺者の救助を命令してくれ。」


「了解しました。」


「さて、残る問題は...」


そういうと伊藤は双眼鏡を持ち直し、次に視線をガレオン船団へと向けた。


「ん?」



伊藤が視線を向けたのと同時にガレオン船団の低いマストには白旗が掲げられ始めたのが見えた。



「潔が良いのは構わんが、攻撃してこない限りは反撃するつもりは無いんだがな。」



いきなり降伏してきたガレオン船団を見て、伊藤は苦笑いしながら言うと双眼鏡を下ろし、後へ向き返った。



「全艦、総員配置はそのままに、もしもの時に備えて警戒してくれ。」


「はっ」



「それと。とりあえず、臨検隊を編成してガレオン船に向かわせようと思う。」


「長官、私も臨検隊に同行する許可を願います。」




伊藤の言葉を聞くなり、そう申し出たのは大和副長の能村次郎大佐であった。



「副長、いくら白旗をあげているとはいえ、副長自ら行かれるのは危険です。」



周りにいた航海長やその他幹部が反対する中、副長は続ける。



「心配いりません。もしもの時の護衛も着いているのですから、今の我々は作戦行動中であり、時間が惜しいですので、多少権限を待ったものが赴いた方が会話も円滑に進むでしょう。」


「それはそうですが...」



会話を聞いていた伊藤は口を開いた。



「分かった。臨検へは副長も同行してくれ。くれぐれも用心するように。」


「はっ!」




そう言うと直ちに能村大佐は臨検部隊を編成させた後、艦内の装備で武装した陸戦隊員20名程を引き連れて、大和の後部格納庫に収容していたカッターボートでガレオン船団へと向かっていった。





初の戦闘シーンです。

いきなり戦艦大和の砲撃シーンを出してしまい、少し勿体なかったかなと思いましたが、これからも大和には活躍して貰う予定です。

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― 新着の感想 ―
→そして何故こんな日本近海であんな格好と船で砲戦ごっこをしていたのか問わなければいかん 普通に問答無用に攻撃しても良かったのでは?戦時中の国家の近海で大砲の撃ち合いなんて、その行為そのものが宣戦布告…
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