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第三話 遭遇



1945年4月6日 午後

日本・九州近海







神風特別攻撃隊がドラゴンと遭遇していた一方その頃、戦艦大和率いる第二艦隊の11隻は豊後水道を抜け、偽装航路で沖縄へ向かっていた。



司令長官の伊藤中将は真っ直ぐ前方を見据えていた。

するとそこへ若い士官が報告してきた。


『報告します。通信室より、米潜水艦からと思われる米艦隊宛の電報を傍受しました。』


そう言うと、士官は伊藤へ紙を手渡し、伊藤はそれに眼を通した。


「どうやら、見つかったみたいだな」



そういうと、伊藤は隣にいた艦長の有賀大佐にも紙を手渡した。



「平文で『ヤマト』ですか、連中舐めているようですね。」


「なんにせよ、これで此方の動きは敵に筒抜けとなったわけだ...」



この時、豊後水道を抜けた第二艦隊の動きを、海中から2隻の米潜水艦が監視しており、その内の一隻が平文で暗号も組まずにヤマトと電文を送っていた。そしてその電文は大和の通信士官にも傍受されていた。

ここで艦隊は自分達が既に補足されている事を悟ったのである。


米軍に発見されたとの情報は即座に艦隊全体へと共有され、第二艦隊はより一層警戒心を高めることとなった。



「にしても、元から分厚い雲だったのが、さらに厚くなって来たな。」



伊藤がそう呟く。

この日、艦隊上空は低く分厚い曇り空であったため、もし敵航空機から攻撃を受けた場合、対空迎撃が非常に困難になることが予想された。




その頃、大和の防空指揮所にて対空監視をしていた見張り員達がある異変に気づく。



「なんだか霧がかって来てないか?」


「言われてみると、急に視界が悪くなってきたな」



それは艦隊の周りを囲むようにして、霧が発生していることに気がついた。


「こんなところで霧とは珍しいな」



艦橋にいた伊藤や有賀など、他の艦橋要員たちも船の周りに霧が張っていることに気がつく。


まだ薄いとはいえ、濃霧が発生する可能性もあることから、艦隊へ注意を促そうかと考えていた伊藤だったがここで予想外の事態が巻き起こる。

発見から数十秒も経たない内に霧はみるみる内に濃くなっていき、次第に艦隊の視界を遮るように拡大しながら、しかも迫ってきたのである。



「!これは不味いぞ。全艦へ濃霧に注意するよう警告を。それと航海長、くれぐれも衝突事故には注意するよう気をつけてくれ。」


「はっ」



司令長官の伊藤は矢継ぎ早に指示を出すと、艦橋か外へと視線を移した。

そこには既に外周の駆逐艦のうち、旗艦大和から見て斜め左を進んでいた「磯風」と「浜風」が濃霧に呑まれて姿を消していた。

いつの間にか霧は艦隊を包むようにして、全方位から接近しており外周の駆逐艦は次々と霧の中へと姿を消していった。


現在の第二艦隊は対空警戒を重視したため、旗艦大和を中心とし、その外周を駆逐艦が一定間隔で円形に囲むように配置しており、そのため必然的に中央に居る大和は最後に霧に呑まれる位置にいた。


そのせいもあってか、味方艦が次々と姿を消すなか霧が全方位から迫ってくる光景は、恐ろしさを感じる物があり、大和乗組員に対して恐怖心を抱かせていた。


普通だったら霧のあり得ないスピードで広がっている事に多少は違和感を覚えるはずであるのだが、全員が目の前の光景に圧倒されているためか疑問を呈するものはいない。



とうとう駆逐艦が全て霧に呑まれた中、残る大和も霧の中へ呑まれようとしていた。



「く、くるぞ」


艦橋の誰かが、少し震えた声で囁くのが聞こえた。

艦橋から見ると既に大和の艦首が呑まれており、次第に主砲から艦橋へと迫っていた。


次の瞬間、一瞬にして艦橋の全ての窓が真っ白に曇った。太陽光が遮ったため艦橋全体が心なしか薄暗くなったと伊藤は感じた。



「まったく、これでは何も見えん。他艦どころか大和の主砲塔さえ、ここから見えないではないか。」


艦長の有賀が呟いた。



霧の中へ呑まれた艦隊は各自の装備してある電探でそれぞれの位置を把握しながら慎重に航行を続けていた。

霧の中での航海と言うのは文字通り目隠しされた状態での航行なので、各艦は衝突事故などを警戒して進まなければならず、皆生きた心地がしない心境であった。




それから3分くらいたった頃だろうか、


「ん?晴れてきたか?」



誰かがそう呟いたのを皮切りに全員が眼を凝らして外を見据えると、微かだが視界が開けて来ているのが確認できた。

それと同時に太陽光の光も差し込んで来ており、全員がようやく出られると安堵していたその時。大和の前方約1.5km先を進んでいた軽巡洋艦「矢矧」から、『我、所属不明艦見ユ』との報告が全艦へ届いたのである。

先程の安堵は何処へやら、一瞬にして緊張感が艦橋を支配した。


おそらく矢矧はすでに霧から抜けており、その先に日本艦艇か米艦艇がいるものだろうと艦橋の誰もが予想していた。



だが、その予想は斜め上の展開で裏切られる事となる。





 



「さぁ、そろそろ抜けるぞ」



最悪、霧を抜けてすぐに所属不明艦と戦闘になる可能性も考えながら伊藤は呟いた。


次の瞬間、艦橋の窓の視界がバァーと開けると同時に太陽の光が薄暗かった艦橋を照らした。

伊藤は日の光に眩しさを感じつつ、前方を見据える。



そこには、先行していた「矢矧」と同じく前を進んでいた駆逐艦「磯風」と「朝霜」がいた。


だが、それより目を引くのが赤く装飾された木製の船体から古臭い大砲が大量に飛び出た戦列艦のような船が12隻ほど、前方の約4km先におり、そしてそれよりも向こう側には、更に古臭い中世のガレオン船のような一回り小さな船が3〜40隻近くいた。



「なんだあれは... なぜあんな古臭い船がこんな所にいるんだ?しかも結構な数じゃないか。」


「...どうやら戦っている様子ですな。」



戦列艦の右舷側の大砲から砲煙が立ち込めているのを有賀は確認した。

艦橋の誰もが目の前の有様に困惑しているなか、後方では艦隊の最後尾を進んでいた駆逐艦「雪風」と「初霜」が霧の中から姿を現した。

雪風らが姿を現した頃には既に濃霧はほとんど消え去っていた。


「しかも、旗も見た事がない国旗だ...」


「これは困ったな...」


「いかがします、長官」



途方にくれた部下たちが伊藤に向けて指示を仰いでいた。


「... 航海長、とりあえず進路を230度へ変針してくれ。様子を見よう。」


「了解、進路230度へ変針。面舵一杯!」


不明船達は第二艦隊の前方にいるためこのままでは衝突する可能性から、向きを変えさせた。



一方で、不明船達も突如姿を現した11隻ほどの第二艦隊を前に驚いたためか戦闘を中止しており、海域には謎の静寂が支配していた。





やはりミリタリー系の小説を書くって難易度が高いですね、、、

自分もある程度ミリオタとして知識には自信があったんですが、本当の軍隊用語や現場の描写って難しいです。

極めて知識不足を痛感しました。

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