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第十五話 魔法




バルバラス帝国・帝都バレル




豪華な城の巨大な会議室にて、皇帝バルバラス5世と各帝国省庁のトップが集まり、軍幹部からの報告を聞いていた。


「・・・でありまして、攻略は当初の計画通りに進んでおります。」


「うむ、大義である。」


皇帝は語られる戦況と戦果の数々に機嫌を良くする。




「そういえば、魔導研究所からも此度の攻略軍に人員を派遣していたな?今回はどの様な魔法を開発したのだ?」



皇帝からの問に、赤黒いローブを着た紫の髪色の魔女の様な女性が立ち上がった。

彼女、帝国魔導研究所所長のアルターネは答えた。



「はい陛下、今回開発しました召喚魔法はその魔力の消費が激しいため、まだ高位の帝国魔導師しか扱う事は出来ませんが、これまで複数人の魔導師が集まって召喚していました"精霊兵"の召喚効率を改善し、たったの一人の魔導師で召喚出来る新魔法を開発いたしました。」



『なに?!あの精霊兵をたったの一人で?』


『信じられん…。』



会議室全体にどよめきが広がる。

だが皇帝が手を上げると声が静まり返った。



「それは非常に良い成果だ。いずれは精霊兵の召喚が出来る魔導師を大量に配備が出来れば、超大国など簡単に滅ぼす事ができよう。大義である。」


「はっ!有り難きお言葉です。陛下」



次に皇帝は全員を見渡して一人に目を付ける。



「後はどの様に王国と方をつけるかだが....

それで?リゼルよ、先の失態に関しては既に尻拭い出来たのであろうな?」



突然矛先が向けられた外交局長のリゼルは体をビクリと震わせて答えた。



「と、当然でございます陛下。既に外国に対しては十分な説明を行い、我が国への誤解を解く事が出来ております。」


「そうか、まぁいい。お主には時期に降伏するであろう王国への対応を一任する故、今度こそは失敗せぬ様にするのだぞ?」


「は、はっ!有り難き幸せです!このリゼル、陛下のご期待に応えてみせます!」



既に帝国上層部は戦勝気分で戦況を見ていた。








レイネティア王国・ソーヤ平原




ルイス率いるバルバラス帝国軍は進軍を開始してまもなく、ソーヤ平原に到達した地点にてレイネティア王国軍主力と遭遇したため互いに距離を取り睨み合っていた。




「あれは何の真似だ?」


帝国軍のルイス司令は疑問の声を出す。

それは自分達といま対峙している目前の王国軍の行動が要因であった。


王国軍はアスターへ向かう帝国軍の進路を阻むようにして掘ってある長い穴の中に身を伏せていた。


「奴ら何をしている?地面に落とし穴でも掘っているのか?馬鹿にしおって。」


ルイスは王国軍の行動の意図が分からず、苛立っていた。



「ええい!全て砲撃で吹き飛ばしてしまえ!」


「聞いたな、大砲発射よーい!」



帝国軍自慢の大砲100門が目前の王国軍へ向けられる。


「撃て!」



『ドーン!』『ドーン!』『ドーン!』




号令と共に100門の大砲から一斉に砲弾が発射され、穴の中に隠れている王国軍へと向かう。



次の瞬間、王国軍の居たであろう平原一帯に大量の土煙と爆煙が広がった。

その光景を見たルイスは勝利を確信した。


徐々に煙が晴れていきた。

視界が開けた時に広がる王国軍の惨状をルイスは想像しながら目前を眺めていたが、



「!砲撃効果見受けられません!」


「なに?!」


観測兵からの予想外の報告に彼は動揺した。

極めて見てみると、確かに穴から姿を見せた王国軍の数に先程と殆ど違いが無かった。


「な、なぜ砲撃が効かない!!」



混乱している帝国軍を他所に安堵している者がいた。







レイネティア王国軍第2軍団




「ふぅ、何とか耐えたな。」


部下と共に潜んでいた穴の中でそう呟いたのは王国軍第2軍団長のハウザーであった。


彼はあらかじめ帝国軍を迎え撃つにあたり、帝国軍の侵攻ルート上に大量の穴を各所に作らせていたのである。


彼は以前よりバルバラスとの対決を予想しており、その過程でバルバラス軍の使用する大砲の威力を一番の脅威と認識していた。

そのため大砲の砲撃を無力化する戦法を研究した結果、彼が導き出したのが地面に穴を堀ってやり過ごすという事であった。

これは現代で言えば"塹壕"であり、一見すると当たり前の様な戦法の一つと思われるが、これまで帝国軍はこの様な対処法をとられた事が無かった為、この戦法は有効に思われた。


実際に、運悪く砲弾が直撃した場所以外には損害を受けた部隊は無いように思われた。



「よし、このまま砲撃を耐えるぞ。いずれ敵は焦って距離を詰めてくる筈だ。それを待つ。」


『了解!』


『いけるぞ!』



恐れていた帝国の砲撃に耐えた事により、王国軍の士気は上がるのだった。







バルバラス帝国軍



「クソ!穴のせいで砲撃の効果が薄れてるのか。小癪な真似を!」


ルイスは塹壕の効果に勘づいた。



「癪だが仕方ない、竜騎士団への攻撃要請は可能か?」


「最寄りの基地から飛び立ってもここまでは航続距離が足りないでしょう。奥地に入り過ぎました。」


「くっ...」



ルイスは悩んだ。


(どうする。砲撃が効かないなら接近しての白兵戦となるが、その場合は損害が確実に発生する。)



目の前には広大な平原に横へ長く掘られた塹壕が3列に連なっていた。その規模からして潜んでいる敵兵の数は数万はくだらないと考えられた。


帝国兵は武器がマスケット銃であるため剣や鎧で武装した王国軍相手に接近戦ではどうしても不利になってしまう。


ルイスは接近戦に持ち込んだ場合に予想される損害を前に躊躇していた。

だがそこへ、


「あらあら、司令官さん。手間取っているご様子ですね。」


「!!貴女は...」


ルイスの背後から現れたのは帝国魔導研究所の魔導師ザーラであった。


赤黒いローブに身に纏った20代ほどの彼女は今回、帝国魔導研究所が発明した新たな召喚魔法の実験もかねて攻略軍に派遣された人間であった。


「お困りのようでしたら、私が魔導研究所の開発した召喚魔法で敵を殲滅して差し上げましょうか?元々実験データが欲しくてこんな遠征に付いてきましたので。良い機会でしょう?」



ルイスは彼女の高飛車な物言いに苛立つ。



「いえ、我々の力のみで殲滅できますのでご心配無く。」


「あら、そうですか?残念。」



(戦場を知らない小娘が出しゃばるなよ。)


彼は内心で毒吐いた。

するとそこへ、


『伝令!只今後続のヴァイアス隊が予定よりも早く城郭都市アデスに到着したため、そのまま此方へ向かい次第合流するとの事です。』


「なにぃ?」



さらに予想外の出来事にルイスは混乱する。

彼は出世願望が強い人物であったため、今回の王国攻略作戦の手柄を自身の物にしたいと考えていたのである。

故に、このまま目の前の敵を殲滅するのに手間取っていたら最大の手柄である王都制圧が後続部隊を率ている犬猿の仲であるヴァイアス司令官に奪われる可能性があった。



「くぅ、クソ。なんて間の悪さだ!」


「やっぱり、私の助けが必要なんじゃないです?」


プライドの高いルイスであったが、同時に出世欲と天秤に掛けた結果、彼は結論を出した。



「・・・、ではここは貴女に任せる...。」


「そう来なくては!では早速、召喚魔法呪文詠唱を開始します。」




そう言うとザーラは持っていた杖を構えてブツブツと唱え始めた。

数十秒が経ったその時、一斉に杖から放出された大量の光の粒が目の前に密集すると、段々とそれが形を成していき次第に眩い光を放つ6mほどの巨大な鎧姿の様な異形の姿が形成されていった。



それはまるで神の作り出した兵士と形容できる程に神々しい白色の光を放っており、溢れ出た大量の魔力が可視化されている証拠でもあった。

空中に軽く浮遊し、鎧姿に天使の羽の様な物が着いた異形の姿は見る者を圧倒する程の力強さがあった。


ルイスと周りの帝国兵達はその迫力に後退る。


「せ、精霊兵だと・・・、たったの一人で召喚するとは一体どんな魔法を使ったんだ...」



「これが帝国魔導研究所が開発した新魔法です!」


ザーラは得意げに語った。






レイネティア王国第2軍団





「な、なんて恐れ多い物を!精霊兵だと?!」


塹壕の中からバルバラス側で召喚された精霊兵を見てハウザーは冷や汗を垂らしながら呟く。


バルバラス軍と対峙していた王国軍はいきなり目前で召喚された眩い光を放つ精霊兵に驚愕していた。


精霊兵は普通、その強力な力と引き換えに大量の魔力を召喚時に消費するため、高位の魔導師が大量に必要であった。その上に召喚後も持続的に召喚主が魔力を消費されるため大量に量産して長期的に配備するなどの軍事転用は非現実的であった。


そのため、普通は費用対効果に合わない精霊兵は滅多に召喚される事が無いのである。

故に目の前で召喚された事に王国兵たちは衝撃を受けたのであった。



ハウザーは精霊兵の動きに気がつく。


「まっ、マズイ!攻撃が来るぞ!魔導師部隊は防御魔法を展開!」


彼は咄嗟に命令を下した。



次の瞬間、浮遊する精霊兵の待つ大きな杖から大量の光の矢が大きく曲射を描いて王国軍の隠れる塹壕へと放たれた。


『ぐぁあ!!!』


『助けぇっ!!』


平原に3列に掘られていた塹壕の内で最前列に位置していた塹壕の中から大量の悲鳴が一斉に響いた。ほぼ真上から襲いかかった精霊兵の攻撃魔法は防御魔法を糸も簡単に貫いて王国兵達を殺戮していった。


2列目の塹壕にいたハウザーはその光景に絶望した。


一瞬で最前列の塹壕にいた部隊が壊滅したのである。彼は精霊兵の力に恐怖したが、観察していると2撃目を放つ気配がなかった。

流石の精霊兵でも連続してあの規模の攻撃を放つ事は出来ないと彼は即座に分析する。


(くっ、このままここで隠れていたら死を待つだけだ!術者を仕留めなくては!)


彼は決意すると命令を下した。


「全軍!精霊兵からの2撃目が来る前に打って出るぞ!狼狽えるな!術者を仕留めれば精霊兵は消失する!」


彼は怯えている兵士たちを何とか鼓舞した、

すると彼は塹壕から飛び出して雄叫びを上げながら

先陣を切って突撃した。

それを見た多くの兵達も覚悟を決めて後に続く。

 





バルバラス帝国軍



「ん?奴等出てきたな!歩兵隊で迎え撃つぞ!」


ルイスは王国軍が突撃して来るのを確認した。

彼は即座に命じると、マスケット銃で武装した大量の戦列歩兵達が配置につく。



『構えっ!狙え!ーーーー撃てっ!!』


号令と共に大量の銃声が響いた。


すると雄叫びをあげて突撃してくる王国兵達の前列から次々斃れていく。


だが、王国兵たちは倒れた味方を無視して突撃を続けた。



「うぉおおぉ!!!」


戦列歩兵からの1射目でハウザーは身体の至る所に銃弾を受けながらも、いまだ突撃を続けていた。

だが、敵の2射目が彼目掛けて放たれる。



『パーン!』『パーン!』『パーン!』


「うぐっ!!!・・・・・ドサッ」



ハウザーは足から崩れ落ち、全身の力が抜けてうつ伏せに倒れた。

最後に彼が薄れゆく意識の中で見た光景は一方的に銃で撃たれて斃れていく部下たちの姿であった。






王国軍最後列



「な、なんてこと...。」


3列目の塹壕にて指揮を取っていた副団長のエレーネは、あっさりと殲滅されていく友軍兵たちの姿に何も出来ないでいた。


やがて1列2列目の塹壕の部隊は全滅してしまい、残るは彼女が指揮する僅か8千程の部隊だけとなってしまった。



塹壕から出れば大砲と銃による一斉射撃、籠っていてもいずれ精霊兵の魔法攻撃で全滅してしまう。



彼女に出来ることはただ死を待つ事のみと思われた。







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― 新着の感想 ―
塹壕って画期的ですよね
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