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第十三話 国内と国外状況




日本・帝都東京




場所は、首相官邸。

首相の鈴木貫太郎と外務大臣は、レイネティアとの外交交渉の詳細が記された報告書に目を通していた。



「食糧の目処はこれで立ちました。その上に石油も僅かながら得られる。上々ですな。」


鈴木は上機嫌に話した


「はい、国内の復興もこれでやっと軌道に乗れますね。それにこの世界の情報についても入手できたようですし。」


2人は報告書に目を向けた。




報告書にはこの世界の情勢が記されていた。


この世界は三つの大陸と複数の島々で構成されている。

日本から見て南に位置する大陸がレイネティアやバルバラスなどの国が存在しているのがベルジア大陸である。

現在のベルジア大陸はそのほとんどがバルバラス帝国の支配領域となっており、他には残った小国が点在しているだけであった。

ちなみに、獣人やエルフといった人間以外の国家も世界に存在していた。


そして日本から見て西に位置しており、ユーラシア大陸より少し小さい程の大陸がディアス大陸と呼ばれる大陸であった。

この大陸には大小含めて30以上の国が存在しており、その中でも超大国と呼ばれる国が相当な領土と国力を有していた。

その力は周辺各国に対しても絶大な影響力を与えているという。


そしてこの二つの大陸とは真反対の位置に第三大陸と呼ばれる人類未踏の大陸が存在しているという。

純粋に距離が遠いため辿り着くのが困難という理由もあるのだが、これまでに無数の船や船団が第三大陸を目指して行ったものの、無事に戻った船は一隻も存在しない謎の大陸だという。





「なんとも不思議な世界に来てしまいましたな。だが、これでようやく生き抜く為の基盤が整ってきたところですな。」


「ですが、交渉では相互防衛協定も結ばれました。現状ではレイネティアとバルバラスは、かなりきな臭い状況です。」


「王国からの食糧は我が国にとっての生命線です。これだけは何としても守らなければなりません」


鈴木は覚悟を決めた表情で語った。




現在日本国内では隠し通すことは不可能と判断されたため、政府により国土ごと異世界へ転移したとの情報が公表されていた。


これに日本国民の反応は様々であったが、幸にして政府が懸念した大きな混乱は発生せず、むしろ戦争が突然終わりを告げたことに安堵する声も多かった。


日本国内では破壊されていたインフラ設備や工業地帯の復興なども急速に推し進められており、

外地から現れた部隊などの編成や傷ついた海軍艦艇の修理など、陸海軍も体制を整えつつあった。

さらに食糧供給や石油確保の目処が立ったとの情報も発表されたことで、日本国民は明日への希望を徐々に取り戻しつつあった。



だが、そんな中で日本の生命線である王国へのバルバラスによる侵攻の可能性が高まった現在、

日本政府は陸海軍の一部部隊を、相互防衛協定に基づいてレイネティア王国国内へ派遣する準備を整えていたのである。







レイネティア王国・城郭都市アデス

バルバラス国境付近





険しい山岳の谷間に、街全体が壁で覆われた要塞のような都市が存在していた。


帝国からの侵攻が予想されている今、帝国との国境に最も近い場所に位置した都市である城郭都市アデスは名前の通り都市の周りを城壁で囲まれており、1万の兵が配置されているこの都市は、前線の中でも特に厳重に防備が固められた要塞でもあった。


王国にとっては陸戦における最大戦力とも言えるこの城郭都市に求められた役割とは、援軍として来るであろう大日本帝国の部隊が到着するまでの間、バルバラスを足止めする事が求められていた。






既に住民の大半の疎開が済まされたため、街の規模にしては寂しい雰囲気が漂う城郭都市の城壁にて、


「ん?あれは・・・」


城壁の塔の上で見張りに当たっていた兵士が、ある異変に気がつく。


遠くの空から何かが向かって来ていた。


「!!!ワイバーンだ!敵襲〜!」


そこには帝国の竜騎士団と思われる騎が20程いた。

見張りからの報告に、蜂の巣をつついたかの様に続々と王国兵たちが配置につく。



「ついに来たか。バルバラス!」


兵士と共に城壁の上に姿を見せたのは、城郭都市アデス防衛指揮官のケーニスであった。


彼は即座に命令を下した。


「敵はワイバーンだ!魔導師隊は整列し、対空攻撃魔法の準備を開始せよ。それ以外の者は配置に着き対空戦闘の用意だ!」




兵たちは即座に対空戦闘の配置につく。

城壁に設置されたバリスタや、魔法で貫通力が増したボウガンを兵士たちは敵ワイバーンに対して構えられた。


「放て!」


彼の号令の元、一斉に大量の矢がワイバーンへ放たれた。



「カキッッン」 「カキッン」



だが、放たれた大半の矢は虚しくもワイバーンの硬い鱗に弾かれていた。

貫通力を付与された矢であっても、ワイバーンの鱗を貫通するのは容易では無く、僅かに鱗の薄い部分に運良く突き刺さる矢が軽くワイバーンを傷つけるだけであった。

だが、ワイバーンの上に搭乗していた敵騎士は無事では済まず、盾を貫通した矢が数名の敵騎士に突き刺さり、幾人かがワイバーンから落下した。


ワイバーンは騎士の命令通りに動く様にしつけされている為、搭乗騎士を失ったワイバーンはその戦闘能力を著しく低下する傾向があった。


矢での攻撃はそれが狙いであった。




「くっ、もう少しくらいは落としたかったな。

全員!攻撃を緩めるな!敵の気を引きつけろ。

魔導師隊は準備出来次第に各自で攻撃しろ!」


だがケーニスが命令した直後に、ワイバーンからの火炎攻撃が降り注ぐ。


「隠れろ!」


「ぐあぁああぁ!!熱いぃ!」


「誰かぁあ!火を消してくれ!!」


城壁の兵たちが火炎を直に浴びて断末魔を上げながら苦しみもがく。


城砦を飛び越えたワイバーンは街へと火炎を撒き散らしながら、空を飛び回る。


「クソ、魔導師隊はまだか!」


ケーニスは目の前で燃える部下の姿を前に呟く。


次の瞬間、ワイバーンに向かって城壁の各所から複数の光線が放たれた。


光線は断続的に放たれ続け、それに当てられたワイバーンは、その鱗にみるみる内に深い傷を与えられた。


頼みの綱であった魔導師隊の対空攻撃魔法により、最終的に4騎が撃墜された敵竜騎士団は撤退を開始し、なんとか敵を追い払う事に成功したのであった。







「魔導師隊は水魔法で消火作業にあたれ!

クソ、初戦でかなり削られたな。」


ケーニスは少なく無い損害に、このままの調子で守り切れるか不安となった。



『前方に敵地上部隊を多数確認!』



突然の報告にハッとなったケーニスは城壁から遠くの地上を見下ろす。


「あれはっ!大砲なのか!」


「なんて数だ...」



そこには、100門を超える牽引式大砲を装備したバルバラス陸軍が山岳の間から続々と姿を表し始めていた。


バルバラス陸軍は即座に隊列を展開し、大砲を城郭都市アデスに指向する。



「ドーン!」「ドーン!」「ドーン!」



遠くで白い砲煙が見えたと思った次の瞬間、

城壁の至る所から爆発が連続的に起こった。


バルバラス帝国自慢の魔力で炸裂力が増幅されている砲弾は次々と城壁に着弾し大きな爆発を引き起こしていた。

あまりの砲弾の嵐の前に、城壁はその効果を一瞬で失い、至る所で崩れ落ちていた。

さらに砲撃は城郭都市内部の王国兵たちにも牙を剥き、城内の兵士を無差別に吹き飛ばしていた。



「・・・帝国の力とはこれほどなのか...」



最早逃げる事も戦う事も出来ない状況下で、ケーニスはあまりにレベルが違う敵からの一方的な攻撃の前に、少しでも戦えると考えていた自身の甘さを悔いた。


彼は圧倒的な帝国の物量と暴力の前に何も出来ないまま、爆炎に飲まれていった。



この日、王国最大の城郭都市アデスは帝国軍の攻撃により、あまりにもあっさりと陥落してしまったのである。









レイネティア王国・王都ケーシル

王城




「アデスが陥落しただと?!」


最前線アデスで帝国の侵攻が開始されたとの報告を受けた直後の城郭都市アデス陥落の報に、

王の間で大将軍から報告を受けたレイネティア国王は絶望感に包まれていた。


「はい。敵の移動式の大砲による砲撃により、守備隊1万もほぼ全滅いたしました。」


周囲の重鎮達にも動揺が広がる。

帝国の技術力や軍事力はとてつもない事など理解していた筈であった。

だが同時に城郭都市アデスなら持ち堪えるであろうという期待が皆の中には存在していたのである。

だが余りにも早いアデス陥落を前に、その脆い期待も打ち砕かれる事となった。


「... 外務卿、速やかに大日本帝国に対して相互防衛協定に基づいて参戦を要請してくれ。」


「わ、分かりました!」


外務卿は慌ただしく部屋を飛び出していった。



「‥… 最早、一日でも早い日本からの支援を頼りにする他無い。.....」







城郭都市アデス



帝国の砲撃により、城壁の至る所が無惨にも崩れ落ちたアデスに我が物顔で入城する一団がいた。




「100門も大砲を準備した甲斐があったな。お陰で簡単に堕ちた。」


そう語りながら部下を率いてアデスに入城したのは、今回のレイネティア攻略軍を率いるバルバラス帝国軍のルイス司令官であった。


「しかし、奴等も哀れだな。

こうも一方的過ぎると敵であろうと情けを掛けたくなるものだ。」


彼は周りに目線を向けた

周囲には大量の王国兵の死体が山のように積み重なっていた。

逃げる事も戦う事も叶わずに、ただ砲弾の餌食になった彼らの死体は無造作に放置されていた。



「今夜はここで泊まる。明日早朝には進軍を開始する故、死体はてきとうに退かすだけで良い。処理は後続の部隊に任せるとしよう。」


「は!」




この日、突如として侵攻を開始したバルバラス帝国は、約11万の陸軍を動員して各所でレイネティアの前線を突破していた。




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