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第十二話 成果

 


 レイネティア王国・港町タール




 いつもは穏やかな雰囲気漂う港町タール、規模は大きくは無い町であるものの、様々な国から来航した貿易船や、商業も栄えている町であるため、活気がある町でもあった。


 町の酒場には、外国から来たドワーフや獣人などの人間以外の種族も入り混じって酒を飲み合う、ファンタジー世界。


 そんな異世界の町は現在、

 町の住民や、噂を聞きつけた大量の野次馬などで騒然としていたのである。

 ある者は怯えた目で見つめ、ある者は好奇心の溢れる目で見つめる。

 彼らが注目している物、


 それは町の沖合に5隻の日本海軍艦艇が、その厳しい姿をまるで、王国人へ見せ付けるように停泊していたためである。





「おい、あれって何処の国の船だよ。知ってるか?」


 港で艦隊を眺めていたある住民が、同じく眺めていた行商人の男に話しかけた。


「さぁ、私にもわからんな。でも海軍に務めている私の友人から聞いた話なんだが、鉄で出来た巨大船がバルバラスの戦列艦隊を全滅させたって話が専ら噂になっているらしい。

 ・・・もしかすると、あの船達のことかもしれない。」


「バルバラスの艦隊を!?それは凄い話だな。確かに強そうな船達だよな。

 特にあの一番デカい船、至る所からデカい大砲が飛び出してて強そうじゃないか。

 ・・・まるで飢えた狼のようだな。」


「飢えた狼?中々良いネーミングセンスだな。」




 彼らの目線の先にあったのは、

 飢えた狼こと重巡洋艦『足柄』であった。足柄は戦前、地球にいた頃の英国国王ジョージ6世戴冠記念観艦式に招待された際に、現地で飢えた狼と異名を付けられており、

 奇しくも異世界人からも同様の感想を抱かれるのだった。










 タール伯爵屋敷



 時は、休憩から15分が経過した頃。




 再び、交渉が始まろうとしていた。


 まず王国側としては、日本との国交を結び、尚且つ強力と思われる日本軍からの軍事支援又は相互防衛協定などの締結まで踏み切りたいという、国家存亡を賭けた重要な思惑があった。


 一方で日本側としても、国交開設と共に通商条約などの締結を果たし、何としても食糧や資源を得なければ国民が飢え死ぬという、割と切実な事情であった。


 そのため、もしも今回の交渉で国交開設又は通商条約の締結に失敗した場合には、最悪武力を盾にし脅してでも、強制的に通商条約を結ばせることも想定していたのである。


 故に、使節団の護衛と言う名目で来航した艦隊の目的の裏には、交渉が失敗した場合に脅す為の、保険的な意味合いも込まれていたのである。





 こうした中、両国の存亡が掛かった交渉が今始まった。



 テーブルを挟んで席に着いた両者、最初に口を開いたのは王国側だった。


「では、再開したいと思います。まず我が国としては貴国との国交開設はとても前向きに考えております。また、通商条約の締結なども同時に視野に入れております。」


「っ!!! それは、我が国としては大変喜ばしい事です。」


 いきなり最初に日本の存亡を握る最重要課題が、達成されそうな流れになったことで、堤と松岡は驚きながらも少し拍子抜けしそうになった。



「ただ、それと同時に我が国は大日本帝国との相互防衛協定の締結を望んでおります。」




 ヘンスはここで、王国の最大の望みを伝えた。


 だが、ヘンスはあえてバルバラス帝国との関係悪化などの情報を出す事なく、ただ相互防衛協定の締結だけを提案した。

 戦争に巻き込まれると分かっていながら相互防衛協定を結ぶ国など無いためである。

 日本側がレイネティアとバルバラスが戦争一歩手前だと言う事を知らないからこそ出来る事であった。


 ある意味で日本側を騙すようなやり方であり、今後の日本との関係を考えると、望ましいやり方では無い事は王国側も承知していたものの、王国側は目先の国家存続を優先する他なかったのである。




「相互防衛協定ですか...」


 堤は多少浮かれていた気分を落ち着かせ、冷静になった。

 日本側からすれば、相互防衛協定のメリットはほぼ皆無である。何故なら文明レベルの差から考えると王国側の軍事力は、ほとんど当てにならないためであった。


 故に相互防衛協定と言う名の、実態は日本側からの一方的な軍事支援を意味する物であった。



「相互防衛協定の締結は少し時期尚早ではありませんか?」


「ですが、貴国は国ごとこの世界へ転移してきたため、この世界の事情には疎い筈です。

 我が国との相互防衛協定は悪い事ばかりではありません。」



 王国側は苦しみ紛れな説得を続けた。

 結局、彼らにしてみれば、自分達よりも技術水準の高い日本が何を求めているのかと言う事を測りかねていたのである。

 どうみても明らかに説得材料が不足していた。


 結局、王国側の説得にも、日本側の反応は芳しくはなかった。

 そこで、ヘンスは思い切った行動に出た。




「・・・・・実を言いますと、現在我が国は、バルバラス帝国からの侵略の危機に瀕しているのです...。」


「!!戦争ですか・・・」



 いきなり王国の実情を話したヘンスに対し、補佐のカーネは慌ててヘンスに対し耳打ちした。


「マズイですよ。それは秘密の筈ではないですか」


「仕方ない。これ以上は誤魔化せない。」



 そう言うと、ヘンスは堤と松岡に向き返った。


「我が国はとてもバルバラス帝国に抗する力を持ち合わせてはおりません。

 このままですと、我が国はいずれバルバラスの手に落ちてしまいます。

 バルバラス帝国は非常に攻撃的な国家ですので、我が国が落ちれば、いずれベルジア大陸中が支配されてしまいます。」



「...そ、それは、我が国としても非常に困りますね...。」



「どうか!!バルバラスの侵略に共に対抗してくださらないでしょうか?

 相互防衛協定が締結された暁には、我が国は貴国に対して最大限の配慮をする用意もあるのです!」



「・・・・」


 堤は悩んでいた。

 転移の混乱から落ち着きを取り戻し、ようやく空襲で荒らされた国内の復興へと政府主導で舵を切っていた頃である。

 そんな日本に文明が劣る相手とは言え、再び戦争をさせるのは酷な話であった。


 だが、王国がこのまま征服されてしまえば、折角開けた食糧供給の道筋が途絶えてしまう。

 バルバラスの様な国家が相手では交渉などマトモに出来た物ではないと予想されていた。

 つまり王国の敗北は日本国民の飢え死にを意味していた。



 悩んだ末に、堤は決断した。



「・・・分かりました。貴国との相互防衛協定も締結いたしましょう。」


「!!!!それは、誠に感謝いたします!」



 ヘンスはたまらず椅子から立ち上がり、堤と松岡に対して頭を深々と下げたのだった。



「ちょ、ヘンスさん。頭をお上げください。」


「し、失礼しました。ですが、これで王国は救われる事になります。貴国の英断に感謝申し上げます。」




 こうして、交渉がまだ続いているのにも関わらず、双方共に重い肩の荷が降りたかの様な雰囲気となり、その後の交渉は穏やかな空気で進むことになった。




 一通りの調整も終わったことで、交渉も終盤に差し掛かろうとしていた時。

 ふと、松岡が気になりヘンスに質問した。


「そういえば、貴国には油田などはありますか?」


 正直日本側は、王国の技術水準から考えて、油田の存在には期待していなかったのである。

 だが、


「えぇ、ありますよ。」


「!?有るんですか?油田がっ?」


 堤と松岡は驚愕し身を乗り出して聞き返した。

 ヘンスとカーネは若干引き気味に答えた。


「え、えぇ。国内では油は使用されていませんが、外国への輸出用に小規模の油田は開発されています。」



 日本側はここで思わぬ成果を上げることが出来たのであった。





 その後、王国と日本は国交を開設すると同時に、相互防衛条約を結び、王国は心強い味方を手に入れることが出来た。


 一方の日本側も通商条約の締結により、待ちに待った食糧が国に届くことになり、さらに偶然のたわもので石油の供給の目処も小規模ながら立つ事になった。



 それと同時に、王国側からこの世界の情勢についても、情報を入手する事が出来たのであった。

こうして、外交使節団は一定以上の成果を上げることが出来たのであった。







皆様が誤字報告をしてくださり大変助かっています。


まだまだ拙い文章ですが、これからも宜しくお願いします。


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