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52話 潰えた夢


「うわぁぁぁあ!!」


 腕が千切れてしまい彗星は年相応の悲鳴を上げる。


「二人とも危ないっ!!」


 いつのまにか魔物が眼前まで来て剣を振り上げるが、友也が俺達を抱えて転がってくれたおかげで首の皮一枚繋がる。

 

「彗星お前それ……!!」


 しかし事態はより深刻な方へ進展してしまう。彗星が着けていたパティシーにヒビが入り真っ二つに割れてしまっている。

 戦闘で傷つき先程の強烈なタックルが決め手となったのだろう。    

 本来ならそんなことなる前に地上へ転送されたり等されるはずだが、彼女の肉体は魔物になっている。不具合が起きたのだろう。


 これにより生じた問題。それはパティシーがないと地上へは、地球には戻れないということだ。

 先程までは地上に逃げる選択肢もあったが、彗星が取り残され殺されてしまうのでその道は閉ざされる。


 つまり今の俺達でこの強大な敵を倒さないといけないというわけだ。


「何であいつ……ワタシ達を!!」


「いいから彗星はここで安静にしてて!! あいつは俺達三人で倒すから!!」


「で、でもあいつは……!!」


「いいから!!」


 俺は彼女を木にもたれ掛からせて、交戦を始める二人の元まで急いで向かう。

 

「こうなったら……!!」


 友也はオーブをセットして液体をカプセルに注ぎ込む。右手に赤い薔薇が舞いそれが龍の頭を形造る。

 その手を奴に向かって突き出す。龍の口から真紅の炎が吐き出される。いや吐き出されたものは薔薇の花弁だ。花びらを吐き出している。

 一見意味のないような行為だが問題はその量と速度だ。花弁は吹雪のように、色合いもあってまるで炎のように奴に襲いかかる。


 花弁に当たった木はまるでナイフで切られたように跡をつくり、それが奴の全身を覆う。

 漆黒の鎧は所々傷がつき奴は数歩後退する。


「霧子今だ一気に畳み掛けるぞ!!」


 友也が抑えてくれている内に俺と霧子はオーブを変え武器を変更する。

 霧子はクロスボウを出現させ、俺は蜘蛛のアーマーに変えて弓を装備する。

 俺はボタンを三回。霧子は注射に液体を戻してまた注入する。


「はぁぁぁぁ……!!」


 狙いを定めて同時に矢を発射する。通常の数倍の速さで矢は放たれ、エネルギーを纏い空を切り裂き奴に真っ直ぐ飛んでいく。

 奴は未だに薔薇の牢獄に囚われている。避けようがなく命中は必至だ。


「ゴォォォォォ!!!」


 まるでライオンのような獣の雄叫び。奴の纏う闘気が膨れ上がり花弁が吹き飛ばされる。

 そして両手の剣を振り下ろし二本の矢を容易く叩き落とす。


「あの威力の矢を片手で……!?」


 俺は驚きが隠せない。普通の魔物なら盾で守ろうが容易に貫通する威力なのに。

 その動揺は友也にも伝染し隙を作ってしまう。そこに奴の二本の剣が叩き込まれ、友也はアーマーから火花を散らしながら吹き飛ばされ木に激突する。

 そして間髪入れずに跳ねるようにこちらに急接近してくる。


「しまっ……」


 標的は俺だ。このアーマーは近接戦には適していない。それに必殺技も先程使ってしまった。再使用するには時間が要る。


「兄さん!!」


 ギリギリのところで霧子が割り込みクロスボウで剣を防ぐ。しかしクロスボウの木材はミシミシと悲鳴を上げ崩壊する。

 衝撃がモロに霧子の腕に伝わり横に跳ね飛ばされる。


「あがぁっ……!!」


 骨にダメージがいってしまったのか、霧子は腕を押さえクロスボウは消滅する。

 そして誰も庇ってくれない状況で奴が迫ってくる。

 気迫と異様な気配。他の魔物を卓越した強さ。その一撃を貰えば安全システムやアーマーを無視して命すら奪われかねない。


 斬撃を弓で防ぐものの防御は崩され弓は遠方に飛ばされる。

 手首に裂傷ができアーマーの中で血が止めどなく溢れる。死が迫ってくる。


「クソ……うぉぉぉぉ!!」


 突き出される剣を躱わすことはできない。受ける武器もなければ腕で守ろうと貫通してしまうだろう。それでも俺は僅かな可能性に賭けるしかなかった。

 目の前に迫る死の恐怖につい目を瞑り祈ってしまう。目を開ければ五体満足で地上にいるようにと。


 しかしいつまで経っても痛みは襲ってこない。


「はは……何でワタシ……こんなこと……」


 おかしい。先程まで背後にいたはずの彗星の声がすぐ前方から聞こえる。

 俺はゆっくり目を開ける。まず映るのは俺の腹部に当たる直前の切先にそこに垂れる赤い液体。


「彗星……?」


 そして腹を貫かれこちらに光のない瞳を見せる、人の姿に戻った彗星の背中だった。

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