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45話 限界


 有名アイドル保志町彗星のライブ。友也は関係者チケットで特に並ぶこともなく通され、売店で買ったパスタと青色の染色料が使われたアップルジュースを手に席へ向かう。

 

「あれ!? もしかして霧子ちゃん!?」


 友也は賑わう観客達を掻き分け進み、最前列にて霧子と花華を見つける。


「げっ……何であなたがここにいるの?」


「ちょっと何その反応! っていうよりやっぱ夜道くん霧子ちゃんにチケット渡したんだね! そっちの子は……クラスメイト?」


 花華はクラスで周りを考えず騒ぐような彼みたいなタイプの人間は苦手で、この中では一番歳上だというのに霧子の背後に隠れてしまう。


「兄さんの友達だよ……はぁ。こんなことなら今から一般席に行こっかな」


「ま、待ってよ! 一緒に見ようよ別に迷惑かけないしさ! ほらそっちの子も名前教えて?」


 友也はあくまでも善意で花華にも近寄るが、こういう積極的な異性に彼女は更に怯えてしまう。


「それ以上近づいたら本当に一般席の方に行くからね」


 霧子は兄の友人を守るよう自分の身体に隠し、相手が嫌がることを脅しの材料に友也を退かせる。


「わ、分かったよ! 怖がらせてごめん……」


「全く……一緒に見ても良いけど余計なことはしないでよ?」


 霧子も彼が悪人ではないことは知っている。だから釘を刺す程度で済ます。

 そこからは友也も自重してひっそりと話しかけ世間話する程度に収め、三十分程でライブ開始の時刻となる。


「やっほーみんな!!」


 水色のウィッグをつけた天使が壇上に舞い降りる。歌も、ダンスも、話も。全てが高水準。いやトップクラスだ。

 その人を惹きつける魅力にこの会場にいる誰もが盛り上がり、いつもクールな霧子も目を輝かせている。


「彗星ちゃんは今日も可愛いよー!!」


 いつもの決まり文句が後ろから飛んでくる。友也達も空気を読みそのコールをし場の空気を盛り上げるのに一役買う。

 

「おぉ盛り上がってきたね〜じゃあ彗ちゃんももっと……」


 盛り上がりが最高潮に達し、それから数曲歌ったところで彗星に異変が起きる。急に体を硬直させマイクを落としてしまう。

 ざわつく観客席。友也達もどこか体調に異常が起きてしまったのかと心配してしまう。


「うぅっ……あがっ……!!」


 彗星は胸の抑え、口から血を吐きその場に崩れ落ちる。

 スタッフが駆け寄り彼女の肩を支え一旦舞台裏へと運ぶ。


「えっ……?」


 最前列で、尚且つ視力が1.5ある友也だからこそ気づけた。彗星の瞳の黒い部分が細く爬虫類のもののように変貌していることに。

 しかしすぐに瞼で遮られるため確信までには至れない。


「まさか……大丈夫彗星ちゃん!!」


 友也はある決心をしハンカチを取り出しつつ彗星の元へと向かう。

 

「なっ……!! 誰だね君は!! 席に戻っていなさい!!」


 スタッフは観客席から飛び出してきた彼を抑え戻そうとする。


「うわっ……!!」


 しかし友也は足を滑らせ転んでしまい顔面を強打する。その際に手に持ったハンカチが彗星の落とした鮮血を吸い取る。彼はスッとそれをポケットに仕舞うのだった。



☆☆☆



「何かあったんですか!?」


 俺は彗星がライブ中に倒れたと聞き救護室に駆けつける。だが目は閉じているものの顔色は良くどこも悪そうには見えない。

 

「うっ……うーん?」


 彗星は段々と意識を取り戻しゆっくりと目を覚ます。


「あれ……ここは?」


 彗星は医者らしき人物に事情を説明され表情を曇らせる。せっかくのライブを台無しにしてしまったことへの罪悪感なのだろう。

 とりあえずの応急措置は終わり俺は彼女と話させてもらえる。


「ねぇ彗星……一つ聞くんだけど、これは何かな……? ただの風邪薬やサプリには見えないけど……」


「やめてっ!!」


 彗星は冷静な態度を崩し形相を変えて俺が取り出した黒色のカプセルを奪い取り飲み込む。

 だがまだ数粒財布に入れておいた上映像や写真をシャーロットと共有している。彼女に言い逃れする道はない。


「はぁ……はぁ……」


「ねぇ……聞かせてくれないか? この薬のことを……」


 彗星の顔から血の気が引いていく。そして瞳がじっとりと湿潤を帯び爬虫類特有の細長い黒目が含まれたものへと変化するのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは。 友也、ちょっと怪しい行動した? 今まで見せてたお気楽兄ちゃんって訳じゃない可能性が出て来たか…?
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