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44話 薬物


「あっ、ごめんごめーん! 周りの音がうるさくて聞き逃しちゃった! どうかしたの?」


 一瞬体を萎縮させ心理的に距離を置いてしまうが、彼女から感じられた違和感はすぐに引っ込む。

 

「あっ、いや……昨日誘拐事件があったらしくて。お前の家の近くで血痕が見つかったらしいから気をつけろよって言ったんだよ」


「へぇ……」


 彗星は目つきを鋭くさせ、先程までとはいかないが疑念の視線をこちらにぶつけてくる。


「血痕があったなんてニュースでやってなかったはずだけど?」


 俺は間抜けにも見え見えの落とし穴に落っこちてしまった。動揺のあまり小学生でも気づきそうなボロを出してしまう。


「えっとそれは……」


「あぁそれ知ってるよ! 確かネットの記事とかで見たんだよね!?」


 渡りに船か。友也は横から顔を覗かせて話に割り込んでくる。


「そっか……テレビで言ってないことを先に勝手に……ネットのそういう人達には困ったものだね」


「そうだよね……あはは……」


 友也のフォローのおかげで疑念の視線はなんとか取り消される。彼にはアイコンタクトで礼を伝える。


「まぁでも大丈夫だと思うよ」


 彗星は謎の余裕を見せ鞄から二枚のチケットを取り出す。


「はいこれ。これがあれば今度のライブ最前列で見れるから」


 関係者用ということなのだろうか、だが俺には探偵手伝いとしての仕事がある。ライブなんて見ている暇なんてない。


「夜道さんはワタシのボディーガードがあるから、家族や友人とかに渡していいよ。数人知り合いとかいれば一人くらいワタシのファンいるでしょ。

 だってワタシ人気アイドルだし」


 すごい自信だ。しかし実際に花華はファンだし霧子も曲を聞いたことがあると言っていた。若者からの人気は俺が思っている以上のものなのだろう。

 

「まぁ俺は後ろから君を見守らせてもらうよ」


 プロデューサーさんやシャーロットからはこのライブの時が彗星の手荷物を調べるチャンスだと述べていた。

 人の物を勝手に触るのは気が引けるが、これで彗星が無実と分かればそれに越したことはないしプロデューサーさんも安心できる。


「その日オレは観客として行くよ。そっちから彗星ちゃんを見てみたいし」


「楽しみにしててよ。最高のライブにしてみせるから」


 先程から不安を微塵も感じさせない自信たっぷりの表情と態度だ。

 そんな前向きな姿勢を崩さず、ずっと明るいままライブの練習や休みなど同行しライブ当日になるのだった。


「ライブの準備は大丈夫?」


 当日の朝。俺はライブ直前の準備をしている彗星に話しかけにいく。水色のウィッグをつけており普段とはまた異なった空気を纏っている。

 誰もが振り向き視線を奪われてしまうような美少女が今目の前にいる。そんな事実に不意に胸の鼓動が高まる。


「大丈夫に決まってるでしょ。ワタシは保志町彗星よ?」


 相変わらずの自信でライブ直前だというのに緊張の色は見せない。


「あっ、でも最後に一人で集中したいからあと五分したら部屋を出て行ってくれるかしら?」


「ん……? 分かったなんなら今から出ていくよ。ライブ頑張ってな」


 また人目を避けたがる行動だ。俺はこの場は引き下がり会場の裏手に待機する。十分程で彗星が会場の方に来て壇上へと上がる。途端に歓声が上がり熱気がこっちまで伝わってくる。


「……あー痛たたた……!! すみせん少しお手洗いに行ってきます!!」


 しばらく歌い会場の盛り上がりが最高潮を迎えた時。俺は腹を下したフリをしここから立ち去る。

 そしてトイレの前を素通りし誰もいなくなった、先程まで彗星が使っていた彼女専用の控室に入る。

 事前にプロデューサー等に話を通しているためここには警備はおらずトラブルなく侵入できる。


「ごめんな彗星。ちょっとしらべさせてもらうぞ」


 俺はスマホのカメラアプリを開きビデオ撮影を開始し彼女の鞄の中を探る。

 財布に化粧品にハンカチなどごく一般的な物しか出てこない。


「ほっ……やっぱり思い違……ん?」


 安堵し荷物を鞄に戻そうとするがその時に手に違和感を覚える。鞄の布地の触り心地が変なのだ。

 見てみるとそこには鞄の布地と同じ生地の布が縫い付けられており小型のポケットのようになっている。横からしか入れられず上からの視界は遮断されている。

 

「まさか……」


 俺は恐る恐るそこに手を伸ばす。伝わる硬いプラスチックのような感触。取り出せばそれは半透明の箱だった。

 そして中には禍々しい黒色のカプセルが大量に入っていた。

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