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40話 売れっ子アイドル


「そこの今入ってきた人達……誰?」


 彗星はワイヤレスイヤホンで音楽を聞きながら踊っていた。鏡の角度から視覚で捉えることも不可能だ。なのにこの場にいる他の誰よりも早く俺達に気づく。


「ねぇ……誰って聞いてるんだけど?」


 彗星はイヤホンを外しバク転して俺達の目の前に着地する。


「俺は君のボディーガードだよ。ほら、プロデューサーさんから聞いてない?」


「あぁ……そういえばそんなこと言ってたね。でもボディーガードは一人って聞いてたけど……」


 彗星は俺と友也とを交互に視線を動かし品定めするように見つめる。


「俺がそのボディーガードなんだけど、こっちの彼はその……ついてきたよく分からない人なんだ」


「ならその人こそ不審者で摘み出さないといけない存在じゃないの?」


「えっ!?」


 当然の反応だ。俺はここで良い感じに友也を摘み出して大学にでも戻そうと試みる。


「ちょっ、ちょっと待ってよ! オレもちゃんと頼りになるからさ! 君の夢を守るから一緒に居させてくれない!?」


 しかし友也は諦め悪くこの場に居残ろうとしがみつく。


「夢ね……じゃあやっぱその人もワタシのボディーガードになってよ。お金は払わないけど」


 何を考えたのか、彗星は意見を一転させ友也をここに留まらさせようとする。


「本当!? やったぁ!! お金なんていらないから大丈夫だよ!!」


「はぁ……金銭がなくてもやるからには責任持ってしっかりやれよ?」


 気分的にはあまり乗り気にはなれないが、よく考えてみれば友也は調査の件を知らない。仕事をボディーガードの件だと勘違いしている。それに彼が目立ってくれればその分自分も動きやすくなる。


 仕事に私情を持ち込まないか……あいつの気持ちが分かった気がするよ全く。


 俺は溜息を心の中に留め、早速仕事に取り掛かる。護衛という建前を使い彼女のダンスを実際に見せてもらう。

 もちろん怪しまれないようにその間も周りを警戒するフリだけはしておく。


「どうだったワタシのダンス? こうやって練習を人に見てもらうのは久しぶりだけど」


 鮮やかでキレのあるダンスだ。どう見ても一年前まで下半身が動かせなかった者の踊りではない。


「ん? 見てもらうのは久しぶりってどういうこと? それにそういえばダンスの先生とかそういう人はいないの?」


「いないよ。ワタシ天才だから。動画見れば一発だし、居ても時間と金の無駄。今あなた達に聞いたのだって自己満足で偶にはいいかなーって聞いただけだし」


 誰からも教えられずにここまで上達したのだとすると怪我云々なしに凄い才能だ。このまま成長して大人になればどんなアイドルやダンサーを凌ぐ実力を手にできるだろう。

 

「へぇーすごいじゃん! オレなんかとは全然違うな……すっごいキラキラしてるよ!」


 不審感を覚え素直に褒められない俺とは対照的に、友也は疑いを微塵すら見せず率直に彼女を褒め称える。


「これで今度のライブも完璧ね」


「あっ……」


 今度のライブ。その単語を聞き俺は予定に異常が発生してしまったことに気づく。

 そのライブは花華達と行くことを約束していたはずだ。だがその間もボディーガード、そして彼女の身辺を調べるために観客席には居られない。


 やばい花華達になんて説明すれば……


「あ……れ……?」


 頭を悩ましていたら突然彗星が足元をふらつかせてその場にしゃがみ込む。


「どうしたの!? 大丈夫!?」


 お腹を押さえる彼女に友也はすぐに背中に手を回し摩るが、その手は振り払われ何事もなかったかのようにケロりと立ち上がる。


「ちょっとお腹が痛くなっただけだから。お手洗い行ってくる」


 不安げな表情を浮かべバッグを手に取りトイレのある方へと早足で行ってしまう。


「どうしたのかな……大丈夫かな?」


「大したことなかったのにお前に触られたのが気に障ったんじゃないのか?」


「えっ!? そんなぁ……!!」


 友也は深く肩を落とす。だがそんなことはどうでもいい。それよりも俺は今彼女が持っていったバッグの方が気になった。

 もちろん中で化粧の確認などに使う可能性もあるが、彼女の先程の態度はまるで人目を気にしているようだった。

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