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26話 面接


「シャーロット探偵事務所……ここか」


 面接の日。俺はシャーロット探偵事務所まで足を運ぶ。事務所は中々大きく石階段を登って茶色のドアをノックする。


「はい。面接に来た人でしょう……か……」


 ドアを開けてきたのは助手のベラドンナで俺の顔を見て驚き少しの間固まる。


「こちらへどうぞ」


 しかしすぐに業務態度に戻り私情を挟まず淡々と応接間に通す。


「所長。バイトの面接を受けに来た者です」


「おや……君は確かこの前の。ふふっ。そういうことか。この前のお礼代わりに雇って欲しいってところかな?」


 シャーロットは応接間のソファーに足を組みながら座っており、堂々と所長としての風格を出そうとしている。

 小柄な体型のせいか子供が背伸びしている感じが拭えないが流石に口には出さず大人しく向かいのソファーに腰をかける。


「いやこの前の件とは関係なく……ちょっと色々あって仕事を探してたからだ……です」


 つい先日のことがあったせいかタメ口で話しそうになってしまい、ギリギリのところで軌道修正する。


「別にタメ口でいいよ。正直日本語にそこまで慣れてないから敬語を使われても分かりにくいだけだしね」


「そうか……分かった。じゃあそうさせてもらうよ」


 世間話もそろそろにして面接に入ろうとした時にベラドンナが紅茶を二杯持ってきてくれる。


「ありがとうベラドンナ君。さっ、紅茶を飲みながら優雅にいこうじゃないか」


 ベラドンナは何か別の仕事があるのか裏に下がり、俺とシャーロットの二人で面接が始まる。

 とはいえやけに西洋風な室内の雰囲気と話し方以外普通のバイトの面接と大差なく、順調に面接は進んでいく。


「じゃあ……最後に一つだけ個人的な質問をしてもいいかな?」


 数分の質問と出勤時間等の書類の書き込みの後空気が一変する。真面目で重苦しいものとなり、真剣な眼差しがそれが勘違いではないことを確信させる。


「君にはどうしても叶えたい夢のようなものがあるとする。しかし病気により余命がもうあまりない。

 そんな状況だったら、君だったらどうする?

 この質問は採用とは何にも関係ない。君自身の考えで答えてほしい」


「余命があと少しだったらか……」


 採用とは関係ないということで直感的に答えを出そうとするものの少し考え込んでしまう。

 もし自分が死んだら残される者達はどうなるのだろうか。フォルティーや敷島さんは俺なんていなくても自分の力だけで道を歩んでいくタイプだから問題ではない。

 しかし心配なのは霧子と花華だ。


 霧子は最近成長してきたもののまだ危なっかしいところがあるし、花華にとって俺は数少ない友達だ。

 死ぬわけにはいかない。しかし余命宣告を受けたら果たしてどうしたらいいのか。


「ならその余命が一日でも延びるように、無駄だとしても抵抗しますかね。もちろん夢も叶える前提で」


「そうか……分かった。今結果を決めたよ。君は……不採用だ」


「そんな……!!」


 一体何がいけなかったのだろうか。シフトかそれとも俺自体の何かしらの要因か。

 それとも先程の質問の採用に影響しないというのが建前だったのか。


「と言いたいところだが、採用に影響させないと言ってしまったからね。約束を破りたくはないし採用という形にしておくよ」


「よ、よかったぁ……」


 しかしシャーロットの気前のおかげでバイト探しを振り出しに戻す必要はなくなった。

 

「でも、君の実力次第ではクビもありえる。頑張ってもらわないと」


「じ、実力?」


「そうだよ。ベラドンナ君! 例の件頼んだよ!」


「では夜道さん。こちらに」


 彼女がひょっこりと顔を出し、俺は紅茶を飲み干してからその後をついていく。

 

「ではまずは洗濯からお願いします」


 連れて行かれた先は洗面所。そこの洗濯機の前に案内され指示だけされ放置される。


「この中にある洗濯物にしかるべき処置をお願いします」


「なるほどね。了解」


 多分これはバイトの研修に当たるものなのだろう。何ができるか試されている。なら存分に自分の実力とやらを見せるしかない。

 洗濯物を掴み、傷つけないよう引っかかりなどを考え持ち上げ籠に入れる。


「ハンガーとかはある?」


「はい。二階の干すスペースに。こちらです」


 二階のベランダで俺は渡されたハンガーなどを用い手際良く次々と洗濯物を干していく。

 中には女ものの、二人の下着等もあったが俺は慣れているしベラドンナも何も言わないので特に構わず干す。


「なるほど……まぁ合格でしょう。手際もかなり良いですし、なによりわたくし達の下着などに変な気を起こす素振りすら見せなかったですしね」


「合格? これって試験か何かも兼ねてるのか?」


「えぇ。ちなみに下着を手に持った時変な気を少しでも起こしていたら即クビでしたよ」


 俺の背中に悪寒が走る。

 もちろんそんな卑猥なことなど考えてはいないが、クビという二単語に体が震え上がってしまう。


「ま、まぁ俺は妹とかで慣れてるしそういうことは絶対しないから安心してくれよ」


「そうですね。では次はこちらに」


 そうして俺は次のテスト? とやらに向かうのだった。

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