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グロリア・フォン・コードウェルの断罪と復讐(書籍版:悪役令嬢グロリア・フォン・コードウェルの断罪と復讐)  作者: 万丸うさこ


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第8話 A子いわく

 A子いわく。


 ケイトが小間使いとして公爵家に雇われ始めたある日、母が病に倒れてしまった。母子家庭では薬を買う金もない。


 母の容体が悪化するなか、悪役令嬢グロリアはバザーに寄付するため孤児院へ向かった。

 慈善事業で受けがよさそうな幼い使用人として同道を命じられたケイトは、意を決して悪役令嬢に「母を助けてほしい」と頼みこむが、冷たく断られる。


  ……というエピソードがあるらしい。


 確かに「なぜ下級メイドごときを、お前なんぞの頼みで助けなければいけないのだ」と、断った覚えがある。あの無礼な子供はケイトだったのか。

 

 今聞いてもその必要性がわからないし、頼みを断ったからといってケイトがグロリアを敵視する意味もわからない。


 平民とは図々しく道理もわきまえない生き物だという証拠だ。

 頼みを唯々諾々と聞いて具合の悪い使用人を全員助けて回っていたら、やがて公爵家だけでなく王都中の平民のために薬代を払わなくてはならなくなるかもしれないではないか。


 特別な事情があるか、助けることで公爵家に利益がなければ下級メイドなぞ救う価値がない。なぜわからないのか。馬鹿なのか。


 今世でも対価を何も提示せず図々しくグロリアを頼って泣きじゃくるケイトを、ゴミを見るような目で見そうになって慌てて頭を振った。


 (その話には続きがあってね。ケイトは訪問先の教会に併設された孤児院で育てられた、聖女になる前のヒロインに出会うの)


 悪役令嬢グロリアから離れ、泣きながら神に母の快癒を願うケイトに優しく話しかけたのがヒロイン(メロディ)だった。

 ケイトの事情に同情し、悪役令嬢の言葉に憤慨したヒロインは、ケイトと一緒に「ケイトのママの病気が治りますように」と神に祈る。


 (――で、みごと神様に願いが届いて聖女様爆誕。その話を聞きつけたソールズベリー男爵が、亡くなった初恋相手との子供だったヒロインを引き取ってメロディ・フォン・ソールズベリー男爵令嬢に。ちょっと時間が飛んで、学園入学から本編スタートって感じ)


 ケイトは使用人の仕事を放棄して教会で遊んでいたらしい。気づいていたら職務怠慢でクビにしたのに。

 そう思って眉を顰めると、A子があきれたように言った。


(いやいや……てか、気にするのそこじゃなくない? 聖女誕生秘話だよ?)


 それよりも、聖女が義弟と親しくしていたわけが腑に落ちた。

 貴族の愛人だった平民の女から生まれた者同士、話しやすかったのだろう。


 「お、お嬢様……だめですか?」


 顔をしかめたグロリアに、ケイトの顔色がさらに悪くなる。


 「カイラは私にとっても重要な人なのに、具合を悪くしていたことに気づけなかった自分が許せなくてな……」


 そう言って、グロリアは生ぬるい砂糖水のような笑みを浮かべた。


 「すぐに医者をカイラのもとへ向かわせよう。薬で良くなるといいのだが」


 なにせA子の話では、カイラの病は聖女の願いを聞き届けて神が癒したというのだ。公爵家の医者は優秀だが、神には負けるだろう。


 とはいえカイラはグロリアにとっても今や重要人物であり、手を尽くして助ける価値がある。


 カイラの病が医者によって癒えたなら、メロディはソールズベリー男爵家に引き取られることもなく、おそらくは孤児のまま、この世を生きることになる。


 王太子たちの精神的なご主人様だった聖女が存在しない世界で、はたして彼らはどこまで劣等感で出来たその性質を取り繕えるだろうか。


 グロリアに駆け寄ってその足元にしがみついて泣くケイトのつむじを見下ろしながら、グロリアは首を傾げた。


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― 新着の感想 ―
触るな下民!汚れるだろ。って心の独白がなかったことにちょっと驚いてる
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