第79話 諫言か、暴言か
あの後ブライアンは、グロリアの思った通りの行動をした。
エドワードに「ケイトを解放しろ」と言い、「〝真実の愛〟はメロディに捧げたのではなかったのか」と問い詰め、「あんたを慕っている人間は一人もいない」と核心を突き、「お前はただのだらしない女好きだ」と罵ったうえ、「王妃陛下のご心痛を考えろ!」と怒鳴って殴った。
考えられることを全部やった。フルコースである。
怒髪天を衝いたエドワードはブライアンを捕らえ、地下牢へと入れた。
ブライアンは確かに暴言を吐いた。が、耳に痛いことを言ってくれる者は得難い財産であると、一応グロリアは減刑を求めた。
しかし彼の言葉を「諫言だ」と言ったグロリアが庇うほど、エドワードは反発した。これもまた予想通りである。
エドワードはブライアンの言葉を完全に否定するために、複数の女とケイトを引きずるように地下牢へ連れていった。
エドワードはまずブライアンの目の前でケイトの首を絞めながら犯して、徹底的に傷つけ、自身の真実の愛の相手でありブライアンの惚れた女を叩きのめした。
その次に「王妃陛下のご心痛」など知ったことではないとばかりに、ぐったりするケイトを地面に投げ捨てて複数人の女と同時にまぐわった。
自分の言葉によってかつての主君であるエドワードの愚行を正せると思い、そのために死刑になるのならば本望。
騎士になれなかった自分でも、最後の最後に騎士らしい行いができた……自分は正義を貫いた。と一人悦に入っていたブライアンは、鉄格子の前で繰り広げられた光景に何を思ったか。
ブライアンの人生をかけた諫言はエドワードには何も響かず、むしろ悪化させただけ。
惚れた女の努力も主君グロリアの心痛も、むしろエドワードを通してブライアンこそが荒々しく踏みにじったといえる。
数日後にブライアンは処刑され、その首は王を傷つけた犯罪者として王都の処刑場にさらされた。
ケイトはあまりのことに心を壊し、聖地に建てた療養所に親子そろって入所した。
真実の愛を捧げたはずの相手をいらなくなった人形を壊すように投げ捨てて、親友だったはずのブライアンの人生などその程度、と言わんばかりのエドワードの行為を報告された時、グロリアは思わず笑ってしまった。
さすがに前世で気に入らない婚約者を濡れ衣を着せてまで処刑した人間のやることである。
目下と見下していた人間を仕置きするために取った手段が、なかなかどうして容赦がない。
ブライアンは絶望しながら死んでいき、ケイトの心はとどめを刺された。
聖地へ移動する馬車に乗ったケイトの、窓越しの虚ろな顔。
それが彼女を見た最後の姿だった。
せいせいした。




