第75話 失望
メイドの子は死産だったが、その代わりに生まれたのはエドワード国王への不信感と軽蔑だ。
グロリアはもちろん、エドワード自身が不貞の情報を制限しなかったので、話は王城だけでなく市井にまで伝わってしまった。
グロリアはわかっていて放置したが、エドワードは自分を慮った誰かが情報規制をすると思っていたのかもしれない。
だがグロリアがいながら下級メイドに手を出したエドワードへの、臣民の失望は大きかった。A子の世界でいえば、美人女優と結婚した芸人が不倫をしたときの反応に近いかもしれない。
妊娠を告げた相手を金目当てかと罵倒し、死産だった赤子のために涙のひとつも流すことがなかったエドワードの態度が人々に広まるにつれ、不義の子を王の子として丁寧に弔い、その母の下級メイドにもきちんと良縁を探して城から出したグロリアの評価は高まった。
けれどこれ以上、エドワードの女性関係に関しての高評価は必要ない。
グロリアはエドワードが手を付けた女性たちを雇うことにした。スケジュールを組み、女たちが妊娠しないように避妊薬を飲ませ、秘かに管理している。
もちろんケイトにそれを教えることはない。
エドワードは女たちから十分に愛されていると思っているし、女たちがエドワードに愛されて喜んでいると思っている。
しかしその喜びの理由は、エドワードの相手をきちんとすればグロリアが自分や実家に適切な手当てをしてくれるからだ。
エドワードという男の性根ほど、前世と変わらないものもない。
彼は自分の素を受け入れてくれる者たちで身の回りを固め、自分がどれだけ愛されているかを量ることで心の安寧を得ていた。
前世ではグロリアのことを「俺のことを王太子の肩書しか見ていない強欲な女」と罵り、「エドワードというただの男を慕ってくれる」と言って聖女を寵愛した。
けれど今エドワードの周りには、彼の大嫌いな、国王という肩書に阿諛追従する者たちしかいない。
今世での真実の愛の相手であるケイトだって、素の彼が恋しくて心を引き留めようとしているわけではない。
彼に人間としての魅力を感じ、支えようと集まっている者は皆無であった。




