第71話 指名
ギッギッ……と、ベッドが二人分の重さで揺らされ軋んでいる。
今夜はグロリアとエドワードが結婚して初めて二人で過ごす夜だった。
けれど誰にも見られないよう天蓋に覆われた中からはエドワードの愉悦に満ちた声と、それを受けて我慢するようなケイトのうめき声が聞こえてくる。
グロリアはそれを耳の端に入れながら、暖炉の側に置かれたソファに座って温かい紅茶と読書を楽しんでいた。
前世で殺された年をようやく越えたので、読んだことがない本もちらほら出てきた。だから最近は読書が楽しい。
桜は花が散って青葉が芽吹く季節となったが、今夜は少し肌寒く感じる。
ゆらゆらと揺れる炎の熱が心地良かった。
初夜の準備へ訪れたケイトに告げたのは、結婚式直後にエドワードに言われた「お前を愛さない」宣言だ。
そして真実の愛の相手として、ケイトが選ばれたということも。
グロリアが内心で嘲笑したその言葉はケイトを心から動揺させ、彼女は真っ青な顔をして持っていた櫛を取り落とした。
しかし王太子直々の指名に加え、「私の代わりに殿下の子を産んでくれ」と、主であるグロリアに頭を下げられれば、非常識な王太子の言動への嫌悪と、グロリアへの申し訳なさと、その他のさまざまな感情をない交ぜにした顔でケイトは恐る恐るうなずいたのだった。




