第51話 教会と導き手
その後、騒ぎを聞いて駆けつけてきたバーナードに後始末を任せ、ケイトとともに帰宅した。
馬車の中で少しうとうとしたら、肉体の主導権はグロリアへと戻っていた。
バーナードがメロディから奪い返した導き手のペンダントは、教会へ修理に出された。
その時に学園での出来事を聞いたハトルストーン伯爵はひどく青ざめ、次の瞬間激怒したという。おそらくは導き手に手を上げたメロディに。
この世界の常識として、教会の権威は時に王族を超えることもある。
世界中の人間が信じているホワイトホープ教という宗教。それに認められて過去百年ほど任命されたことがなかった〝導き手〟という権威に、ああまで堂々と無礼を働く者などいない。
国によってはメロディはその場で切り殺されていただろう。そしてそういう国に今回の所業が知られれば、国境を越えて殺しにくることも十分考えられる。
そして我が国はそれを侵害だと非難するのは難しい。
なにせ奪われ壊されたのは、導き手しか持つことを許されないペンダントだ。グロリアが死んだあとはホワイトホープ山の霊廟にローブとともに安置されることが決まっている。
それくらいホワイトホープ教にとっては大事なものなのだ。
しかもグロリアの怪我の部位は首だった。首、人体の急所のひとつである。
もしもメロディが暗殺者で凶器を持っていたら、殺されていてもおかしくはなかった。そうなれば、この国は国ごと教会から破門されていただろう。
生涯を通じて世話になる宗教からの破門は、人権を剥奪されると同義である。生きてはいけない。
たとえそれが国という巨大な生き物であっても。
叔父はソールズベリー男爵と王家、それからエンベリー侯爵家に正式な抗議文を出した。
聖女を自称し、それを信じる者たちがいたことを把握していながら対策をしていなかった学園と、グロリアが報告したにもかかわらず対応が後手に回った王都の教会にも騒動の調査を依頼し、グロリアはそれぞれの答えが届くまで学園を欠席することが決まった。
教会に関してはセドリックの件もあり、失態続きである。ハトルストーン伯爵や新司教の心境はいかばかりか。
とはいえメロディの中身が本当に転生者なのかを確定させたかったグロリアが、これを好機となかば強引に召喚状を渡す役目を引き受けたことにも原因の一端がある。
グロリアがなぜそうしたかは知らない叔父も、その強引さが問題だったことも一応わかっているので教会にはそこまで強く抗議はしていない。グロリア自身に至っては何も言っていない。
彼らにとっては無言のほうが怖いのかもしれないが。




