第22話 坊ちゃん
執事の制止も聞かず、開いた扉と目を見張る父との線上にいるグロリアを雑な動作で押しのけ、アランはぐいぐい前に進む。
その傍若無人な行いに目をむいたケイトが、アランに掴みかかろうと手を伸ばした。
グロリアはそれを制して、そっと彼女を促して扉の前から動かない護衛騎士のところまで移動する。
我が家の執事が平民の子供を「坊ちゃん」と呼ぶことも、子供とはいえ不審者が乱入してきたというのに切り捨てるどころか動かない護衛騎士も、まるでそれが日常のような慣れを見せた父付きの侍女たちのことも、グロリアの神経に障った。
そのいら立つ気持ちを、来るのならそろそろだろうと思っていたアランと父の対面に居合わすことができたタイミングの良さで打ち消すことにした。
「なんなんですか! あの子供は!」
グロリアをかばうように斜め前で仁王立ちをしながらアランをねめつけるケイトに、そっと呟いた。
「父と愛人の子供だ」
ケイトが顔色を変えて振り返った。そばかすの散った顔の中でことさら存在感を放つ大きな瞳が、グロリアを心配そうに見上げてくる。
その視線を受けて、グロリアは少しだけ眉尻を下げ、突然の侵入者からグロリアをかばいもせず困ったような顔をして立つ騎士を見た。
ケイトが表情を引きしめてうなずいた。
「他の騎士様を呼んできます。お嬢様は……」
「父の子が来たのだ。私も無関係ではいられない」
「……わかりました、すぐに戻ってきますから!」
ケイトが軽い足音を立てて走り出したのと同時に、父が大きな音を立てて椅子から立ち上がった。その顔色は悪い。
父と距離を詰めて向かい合うアランの様子を斜め後ろから見つめつつ、さて、彼はいったい何を言いに来たのだろうか……と、グロリアは彼らと同じ紫の瞳をすっと細めた。




