第21話 コードウェルの色彩
とはいえ、グロリアも王太子の婚約者になる必要がある。
顔に丸めた書類を投げつけられたので軽い嫌がらせのつもりで色々言ったが、父の言うとおり、今度の茶会で酒やセドリックばかりにかまけているわけにもいかない。
叔父の二番目の息子を公爵家の養子にして跡取りにすれば話は簡単だが、それには父の許可がいる。
母のことが嫌いな父はグロリアがコードウェル家を継ぐことを厭っているが、それ以上に叔父が嫌いなのだ。素直にうなずきはしないだろう。
父はグロリアを王太子の婚約者へ据えることに執着している。これ以上この話を続けていたら「別の女と再婚して子供を作りそれを跡取りとする」などと言い出しかねない。
今回の失敗は愛人が平民だったからだと思っている節がある。今度は金のない貧乏男爵家の行き遅れあたりを金で買って後妻に据えるかもしれない。
そうなると一応生まれてくる子供は貴族であり、最低限の血筋は確保されてしまう。
腕組みを解き、握りしめた拳で机の天板を叩きだした父とこれ以上話していても、父の血圧が上がるだけで全く実りがない。
一度部屋に戻るか……。そう考えて踵を返しかけた時だった。
扉の外が騒がしい。
背後のケイトが緊張し、扉の前の護衛騎士が眉をひそめて腰の剣に手をかけた――瞬間、荒々しくドアが開き、「お父さま!」と子供の甲高い声がグロリアの耳を突いた。
「お待ちください坊ちゃま! 旦那様は今、お嬢様と大事なお話をして……!」
金髪に、紫の瞳の少年。
コードウェルの色彩を継いだ子供の顔は切迫していて、入室を止めようとする執事の手を振り切って部屋に乱入してきた。
その顔には見覚えがある。
前世、この時期にはすでにグロリアの義理の弟としてこの屋敷で生活していた、アランだ。
頭の中のA子が、(えー! ちびアランだ! かっわいい! でもこの時期になんかイベントあったっけ?)と間抜けな声をあげた。




