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第1話 転生と同時に何かおかしいと気づく

 ぶつんと何かが切れるような音がした。


 今まで見ていた映像が途切れ、一瞬で黒く塗り潰される。まるでテレビのコンセントを無理やり引っこ抜いたかのような唐突さだった。


 何してたんだっけ?

 寝てた? と思いながら、まぶたをこじ開けようとする。


 寝る前は確か外で恋人と会っていて、彼が何かを言って……帰宅して、婚約者が誰かの顔を切り裂いたと罵って、何かを持って立ち上がって、私は首を……私は首を、斬られて……首を、くくっ……首?


 何かおかしい。


 バチッと大きく目を開いて起き上がる。

 夢を見ていたのか、いまだ夢の中をさまよっているのか、目に映ったのは見慣れた自室のベッドと見慣れぬ小さな自分の手。

 それから「グロリアお嬢様!」と青ざめる、どこかで見たようなメイドの顔。


 ――私を裏切ったあのメイドに似ている。


 ――私がハマってた乙女ゲームのキャラにめっちゃ似てる。


 具合はどうかとしきりに聞いてくるメイドの顔を見ながら、似ているようで違ったことを考える。


 ――あのメイドよりも年齢が上のようだ。あれの母親か?


 ――ああ、好感度を教えてくれるお助けキャラ、ケイトのお母さんかな。


 「名前、なんていうんですか?」


 「わ、わたしはカイラと申します」


 「カイラ……そっか。あ、娘さんいるよね?」


 唐突にくだけた調子で問いかけられたメイドは、怯えながらも肯定する。続けて娘の名前を聞かれて、メイドはさらに怯えて答えた。


 「ケイトという、お嬢様と同い年の娘がおりますが……」


 ほら~やっぱ『希望の王国と癒しの光 ~聖女は、真実の愛を知りました~』のケイトのお母さんじゃん!

 え! てことは私、もしかして流行りの乙女ゲー転生しちゃった⁉

 てかグロリアって、悪役令嬢の? やだ、最後に処刑されて死ぬじゃん!

 せっかく転生したのに私、死ぬの⁉


 「お嬢様……?」


 「あ、ごめんなさい……えーっと、ちょっと一人にしてくれますか?」


 「お嬢様が謝……っい、いえ、失礼いたしました!」


 ぎょっとしたようにカイラが言う。公爵家のメイドにあるまじき失態である。


 グロリアは自分の体を自由に使う何者かが〝乙女ゲー転生〟とやらに気がついたように、死んだはずの自分が生き返っていて、しかも相当若返っていることに気がついた。

 しかしこのうるさい何者かから自分の体を取り戻さなければ、無礼なメイドを罰することもできない。


 怯えながら退室するカイラに、自分の体はのほほんと手を振った。





 ネグリジェ姿で仁王立ちし、鏡の中からこちらを見ているのは間違いなくグロリアだ。

 金髪、紫色の目。最期の記憶よりも体に凹凸はなく身長もだいぶ縮んでいるが、確かに見慣れた自分の姿であった。


 しかし頭の中では、一方はそれを自分の幼少期であると認識し、一方はそれをゲームのキャラクターの子供姿であると認識する。

 両方とも〝グロリアである〟と思っているにもかかわらず、靴を左右逆に履いたような気持ち悪さがあった。


 ともかく現状の確認をしようと、グロリアは鏡に映った自分へ問いかけた。


 (あなたはいったい何者だ)


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オレは、オレ達は、ガンダムだ。
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