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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
五章:シャングリラ

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12AⅩ7

「このお金……どうするの? くーちゃん。わたし……おばさまからも生活費渡されてるんだよ? ……絶対、こんなに要らないよ?」


「有って困るものではないけど、度が過ぎるのも確かに困るな。でもそもそも、この金を手に入れたのは全くの計算外だったとしか言いようがないんだ。かと言って……これを竹藪なり、どこぞに棄てようにも。大騒ぎになるよな」


「困ったねぇ」


「本当に困ってるよ。実際には、この3倍はあるからな?」


「……ま、まだ……ある……の?」


 降って沸いた――中学生がどうにかするには、手に余る額の大金を前に、俺たちが頭を悩ませていると、ガーミンのアラームが鳴った。


 手首を押さえてアラームを切ると、慎ましやかな中学生活を破壊するには充分な威力を持つ、この困った問題の事は……ひとまず置いて


「そろそろ澪たちが来るな。上に行ってあいつを呼んでくる。みんなに聞けば、なにか……イイ考えも出るだろう」


「……うん」


 その日、皆との集合場所にと決めていた我が家のリビング。


 これからきっと、また騒々しい事になるに違いない予感に軽い眩暈を覚えつつも、皆を迎え入れる準備を、千影とふたり整える事にした。

 


 * * *



 まだ夜も早い時間。


 泊まる準備も万端な様子で、続々と皆がやってきた。


 持ち寄った飲み物と、菓子をリビングのテーブルに置いて、めいめいでソファーに陣取ると――先日から我が家に滞在する異邦の客人に、グラスを手に皆が視線を向けた。


「「……………………」」


 その、人の目を引きすぎる容姿を……ひと目みて――なんだか気付いた様子のイオナと一ノ瀬さんが、胡乱なものを見る眼差し。


(流石に……このふたりは、気付くか) 


「では、自己紹介をさせて戴きます」


 流暢な日本語が、その口から漏れるや否や、イオナが水を差した。


「た! たんま! ……え? え? そ、その外見で? ……な、なんで……そんな日本語が流暢なん? ……ああッ! し、しまった! あまりのショックに防御装甲()被るの忘れてしもうた!」


「あんた……マジで空気読みなよ」


 イオナの上げた声に、非難を口にする澪を宥め――


「ぼくの住んでいた国は……というか、太平洋に浮かぶ小さな島なんですが……戦時中、日本と関りが強かったおかげで、今でも日本語を使える人は多いんですよ。ぼくくらい流暢に話せる方は、あまり多くはありませんけど。ぼく……お婆ちゃんっ子だったもので。あと、ぼくの この容姿は……セファルディム? とかいう……なんだか複雑な出自らしい、婿入りしてきた お父さん譲りのもので……右目の緑の瞳の色と肌の色以外は――大体、お父さんの血によるものですね」


「「……ほ、ほぉ」」


 話の腰を折られたにも関わらず、穏やかに応対する目の前の美貌の持ち主の言葉に、気の抜けた声が連なる。


「亡くなった、お爺ちゃんに……昔、そんな話を……聞いた気も」


 手にしたグラスに静かに口を付けて、一ノ瀬さんだけは思い当たることでもあるのか、天井を見上げていた。


「では、改めて……僕の名前はブルーフィルム・デュ・レカ・マルルゥ・じゃがいもダイスキー・トゥーナルナ・ペリ・ダンピエラ・12(トゥエルブ)(エイ)Ⅹ7(エックスセブン)・キュルキュマ・パクサピトゥカと、申します」


「「「「ブフ――――ッ!?」」」」



 * * *



 飲み物に口を付けていた――俺と千影を除く4人が。


 ケンケンと咳き込んで、ティッシュを奪い合う。


「……えほッ! えほッ!? ……あ゛~あ゛あ゛ッ! な、中々……気の利いた冗談かますじゃねぇか……コノヤロウ」


 普段使いのリップが滲むのも気にせず、口周りを拭い終えた柊先輩が、苛立たし気に眉間に皺。


「すみません……長い名前であればあるほど……立派な名前とされる文化の土地なものでして」


「はァ? マジで言ってんのか??」


「気にするな12AⅩ7。正直……ブルーフィルムは、どうかと思うが……良い名前じゃないか。特に12AⅩ7の部分が、実に良い」


「あ、ああ……タチバナ……きみだけです。ぼくの名前を家族以外で……そんな風に言ってくれる方は」


「待て待て待て待てぇい! そこッ! そォこッ! 千影が居るのにイチャつき始めるんじゃない! 百歩譲って長い名前なんだとしても! 明らかに『じゃがいもダイスキー』だとか、聞き捨てならない言葉が入ってたぞ!」


「え? あ、すみません。……それ、僕が生まれて暫くして……離乳食の煮たジャガイモを……本当に美味しそうに食べていたと――その様子を喜んでくれた、お婆ちゃんが……後から付け足してくれたものなんです」


「くーちゃん? ブルーフィルムってなぁに? あと、とぅえるぶ・えーえっくす・せぶんって?」


「……ブルーフィルムは……そのなんだ。イオナの家の……有線チャンネルで観られる……映像の類の事だ」


「へぇ、流石はくーちゃん♪ ……へえ゛ッ?!」


「で、12AⅩ7は。これは真空管の電圧増幅用、双三極菅を指す型番の事だ……多分な。プリアンプ用の真空管として広く使われる代物でだな? これがまた非常に、そそられる形状をしているんだ――」

いつもブクマ有難うございます。


宜しければ、お読み下さった御感想や「いいね」


その他ブックマークや、このあとがきの下の方に

あります☆でのポイント


それらで御評価等戴けますと、それをもとに今後の

参考やモチベーションに変えさせて戴きますので


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

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