表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
五章:シャングリラ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/216

払暁

 柊先輩経由で預かって貰った普段着に着替えると、その子を千影に送らせる事にした。


「じゃあ千影、打ち合わせ通りのルートを……できる限り最短時間で頼む。みんなは家に集まってくれてるな?」


 俺の言葉に無言で頷いて、バイクをターンさせると、VIPを後ろに乗せて走り去って行く。


「大丈夫なんかよ?」


 着替えている間に少し、いつもの調子を取り戻した先輩が不安を口にする。



「……正直なところ、この小細工が必要になるのか、どうかは分からないけどな。


「ふたりのことなら、その辺の心配は必要ない。千影と、あの子の体重を合わせても多分、大人一人分の体重より余程軽い。


「と、なると。軽量化に優る改良無しって金言もレース世界にはある。走り出しさえすれば、アイツに追いつける奴なんて居ない。加えて――


「あいつには、いつ覚えたのかも分からない隠し芸の常識外れの曲乗りがある。不摂生の塊みたいな中年ヤクザが何人来ようと相手にもならない。


「バニー・ホップなんか使って、200㎏を超える車体を跳ねさせる千影を取り押さえるなんて不可能だ。仮に飛び道具を出そうとしたところで、2秒もあれば射程外に逃げられる。


「バイクに乗ったあいつは、一切迷うことなく的確な行動を選択する。問題ない」



「……星山まで、ヤベぇ奴じゃねぇか」


 この場に千影が居たなら、きっと良い顔はしなかっただろう その言葉。


 けれど、とりあえずは――先輩も納得してくれた御様子。


 現金の詰まった目立ちすぎるケースは、事務所の片隅に置かせて貰い、俺たちは礼を述べて――お暇することにした。


「おっさん……金持ってトンズラとかしねぇよな」


 先日も先輩と時間を潰した、海を臨む公園のガゼポで欠伸を噛み殺して、明るくなるのを待っていると――恐らく……御尤もな懸念が口を吐く。


「それは別にどうでもいいよ。それだけの御迷惑は、お掛けしたと思うし」


「……勿体な。ぜってぇ、風俗か酒とかで無駄に消えると思うわ……あー煙草吸いてぇ……1本くらい分けて貰っときゃ良かったぜ。クソッ」


 ポケットでスマホが鳴った。


 通知に目をやれば、千影が帰宅したことを報せる内容と、添付されていたのは短い動画。


 いつも通りの絵文字吹き荒れるメールに続いたのは――


 状況が状況だけに……面倒な輩が家に踏み込んでくる可能性も踏まえて。


 待機させておいた3年の皆に渡しておいたガウスライフルならびに その他を手に座り込んで――面倒臭そうにピースサインをカメラに向ける映像。


 こいつらがボディーガードの代わりになるとは到底思えなかったけど……なにかあった際には、警察なりが、揉み消すのも苦労するくらいの騒ぎを起こすぐらいの事は……きっと、やってくれるハズ。


 空が白むにつれて、目を覚ました鳥の声が辺りに響き始めた。


 港湾地区に入って来る車が増えるに従って――人の気配も。


「ボチボチ帰るか……流石に こんだけ明るけりゃ、補導される事もねぇだろ」


 眠たそうな目で気怠そうに話す先輩が、立ち上がる。


「……帰ったら……誰か、煙草持ってっかな……ああ、あいつら……煙草止めるつってたっけか。いい加減、ヤニ切れで辛ぇ」


 バッグから出した空の煙草の箱を握り潰すと、先輩は溜息をついて それを放り捨てた。



 * * *



 船からの脱出を果たした あの子が、俺と柊先輩と一緒に帰ったなら。


 ひすぱにおら号から立ち去る3人として、これほど目立つ情報も無い。


 そんな訳で港湾地区を立ち去る子供一人、または三人組という該当情報を崩すべく、千影にまで協力を求めて小細工を労した訳だったけれど――


 拍子抜けするくらい何事も無く、俺たちは家に帰りついていた。


「……じゃあ、橘くん。俺ら……帰っから」


 まさか、こいつらの世話になる日が来るとは思いもしなかった。


 3年共に礼を口にすると、皆から嘆息。


「橘くんよ……そっちだって、ダチ助けてくれたんだろ? ……やめろや」


 理解し難い こいつらの価値観に――何と言って返したものかと考えている内に、連中は大欠伸をしながら帰って行った。


 玄関先での見送りを済ませたついでに、手早くバイクのナンバーを取り換えて家に入ると――千影の作る朝食の匂い。


 漂う香りから察すると、お得意の……バルサミコを極少量差して焼いたベーコンに、卵を落としたベースド・エッグ。あとは彩りを添える生野菜のサラダと言ったところか。


 自家製ガーリック・バターを染み込ませたトーストの香りもしてきた。


 朝食の匂いに合わせて、シャンプーの匂いもする。柊先輩か、あの子はシャワーを浴びているらしい。


 もう慣れっこになったと思っていた、柊先輩のお供だったけど……流石にくたびれ果てた。


 空きっ腹を押さえてダイニングに向かうと――テーブルで忙しそうに準備する千影と、置物のように座る あの子が俺を迎えてくれた。



 * * *



「……お前らと一緒にいるとよ? 中華じゃねぇ朝飯にありつけるから……なんだかテンション上がるけど……ダメだ。眠くて味が、よー分からん」


「この方もぼくのために……お力を貸して下さったんですね」


「おい……橘。なんでこいつは、この(つら)で日本語喋れてやがるんだ? いや、やっぱどーでも良い。小難しい話は今、聞きたかね。んな事より……あーもうダメだ。橘……星山でもイイ。寝床貸してくれ。ソファーでもいい。ひと眠りしてから帰るわ。死ぬ……死んじまう。脳細胞が、バラバラに崩れる音を感じるんだわ……ああ、そうだ。た、煙草……ねぇよ……なぁ」


 肩を落とす先輩を、千影が上の階へと案内する。


 階段を昇る足音を聞きながら暫く、エキゾチックの塊の様な客人と差し向かい。

いつもブクマ有難うございます。


宜しければ、お読み下さった御感想や「いいね」


その他ブックマークや、このあとがきの下の方に

あります☆でのポイント


それらで御評価等戴けますと、それをもとに今後の

参考やモチベーションに変えさせて戴きますので


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ