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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
五章:シャングリラ

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DID

 周囲の今まで以上の目もあるだけに、注意と慎重さを促すサインを柊先輩に送ると


「ん~? ちゅーしてやろうか♪」


 了解を示す揶揄を先輩が口にした。


 そしてその夜の稼ぎ場所として選んだ、ブラックジャックのテーブルに着くと――俺はいつも通りの気乗りのしない仕事をこなす事に。



 * * *


 

 ここ最近のスコアから、若干のプラスになるように配慮してのゲーム終了。


 集中力の維持可能な時間を考慮して、決まった向きもある お遊びの時間。


 時間を過ぎて、お役御免となった俺は


「もうひと稼ぎッ!」


 ――と、息巻く先輩を残して、ひとり甲板に出ることにした。


 自分の持ち分で遊ぶ分には、確かに……俺からなにも言う事はないけれど。


「……連日の様に……連れ出される俺の身にも……なってくれ……」


 手すりに掴まって項垂れてみれば、通りがかった この間とは、違う見回りからの


「おふたりのゲームみてましたよ。良いゲームでした」


 ――嬉しくも無い御賛辞。


「どうも」


 しょぼくれた声で短く返すと、それが俺に定着しつつあるイメージに適ったのか


 見回りの男は、なんだか満足げな空気だけを残して立ち去って行った。


「なにをして、時間を潰そうか」


 日々、細々としたスケジュールに忙殺されていた毎日が恋しい。


 もう十分すぎる程知り尽くした この船。


 見て回りたいものなんて特に思いつかない。


 けれど、気がつくと俺の足は、かつての この船の心臓部。


 機関室の方へと、自然と向かっていた。



 * * *


 

 こびり付いたままのC重油の匂いに誘われるみたいに、動かなくなった機関室へと足を伸ばした俺。


 今頃、冷えて固まるどころか、経年劣化でグリースとアスファルトに変化して、配管だって詰まらせたに違いない、寿命を終えた機関を眺めていた。


「……話すんじゃなかった」


 柊先輩が、毟り取られる前にと……厚意から教えてやったのが運の尽き。


 金に目の色を変えた先輩が、ここまで俺の毎日に浸食してくるとは思いもよらなかった。


「か、帰りたい」


 自然と口を吐いた泣き言に、さらに滅入って立ち尽くしていると――なにやら視線。


 辺りを見回してみるも当然、人影は無し。


(……気のせいか)


 いよいよ欲求不満のストレスが、メンタルに悪影響でも及ぼしているのかと、ささやかな不安を覚えて苦笑を零しそうになっていたところ――視線の主をみつけた。


「……………………」


 傍の床の小さなハッチが、下から押し上げられて


 暗がりの中でも粗末なものと分かるボロ布の間から、ふたつの目がこちらを窺っていた。


「誰だ?」


 こんな老朽化した廃船待ったなしの船で、講談みたいな密航者もないことだろう。


 この船で働く人間が総じて身に纏う、特有の――剣呑な空気も無し。


 俺がその視線に誰何の声を掛けると、ホールでは今も大勢が振り撒いているだろう


 一か八かを競るみたいな空気で、そいつは話しかけてきた。


 英語だった。


「……あ、あの……貴方は……この船の方ですか?」



 * * *


 

「その〝船の方〟が、ここで働く人間を差しているなら違う。単なるカジノ客だ」


 明かりのない機関室の中ではあったけれど、その声が、俺たちとあまり年も違わない、女の子のものだという事は分かった。


「なんで……そんなところにいるんだ? メンテナンスハッチに潜ったところで……直せる船でも無いだろ?」


 色々と……おかしな、この船のこと。


 彼女が辺りを窺うハッチを潜れば――その先に、なにがあるのかなんて知る由も無い。


 けれども、特に興味があった訳でも無いにも関わらず、俺は……なんとはなしに彼女に、そんなことを尋ねて――そして


「捕らわれています……助けては戴けないでしょうか」


 迂闊にも藪蛇を突いてしまっていた。



 * * * 

 


 ――翌日、夜――


「まじかよォ……」


 ここ最近、作戦会議室となった感もある、先輩の家の――店の奥の個室。


 チャイナテーブルに足を投げ出して、彼女が天井を仰いでいた。


「……ああ、バイトあとで……チトむくんでっけどよ。あたしの脚見んのはサービスだ。見とけ見とけ……てか、それ……本当にマジか?」


 行儀悪くテーブルに乗せた足を、サービスだとは先輩らしくもあったけれど。


 生憎と、そんな類の冗談で晴れる気分でも無かった。


 投げ出された足が組み直されて、ドレスの裾が絹鳴りを立てた。


「ロクでも無ぇところなのは……分かってたんだけどなァ――まさか……それほどまでとは思いもしなかったわ」


 淹れて戴いた龍井(ロンジン)茶なる中国茶に手を伸ばして、不機嫌そうに()ちる先輩の話に耳を傾けてみれば



「うちで働くオヤジども。あいつらについて今更……お前に、なにか言うこともないとは思うけどよ。なんつったか……武林(ムーリン)だったか江湖(ジャンフー)だったか……どっちも同じ意味だったか……忘れちまったけど。


「とにかく、そんな……ド突き合いの社会での、横の繋がりってのは、とんでもなく広いらしくてだな――

いつもブクマ有難うございます。


宜しければ、お読み下さった御感想や「いいね」


その他ブックマークや、このあとがきの下の方に

あります☆でのポイント


それらで御評価等戴けますと、それをもとに今後の

参考やモチベーションに変えさせて戴きますので


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

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