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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
五章:シャングリラ

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エスコートを仰せつかる

 住んでいた街で、テレビでしか観たことのなかった下町の人間模様が息づいていたことに、驚かざるを得ない。


「んじゃ、行こうか橘」


 先輩の声に踵を返して会釈すると、御老人が穏やかに手を振って返してくれた。


 先を行く先輩に駆け寄ると、作戦会議のお供には少々……貧相にも思える駄菓子と、ラムネを携え――適当な場所に腰を下ろし、先輩の言うビジネスの話について窺う。


「実はだな?」



 * * *



 俺はこの……柊律子という先輩を侮っていたらしい。


「ん? へばってんのか橘……体力ホント無ぇな、お前。ま、それはいいや。ちょっと休憩したら、次行くからな」


「……はい」


 先生たちに稽古をつけて貰うようになって、毎朝のランニングも……できる限り欠かさないように勤しむようにはしてきた。


 けれども、繁盛店のホールでの仕事を何年も続けてきた先輩からすれば、それらはお話にならない程度のものでしかないらしい。


 少し、興味も湧いて――


 暫く前に進呈したスマートウォッチを万歩計代わりに身に着けて貰って、それをモニターしてみれば、先輩のバイト開始2~3時間で1万歩なんて直ぐに突破。


 先生たちに教えて貰っての中国武術の稽古。


 そもそもが、走り込みの様なことをさせられた記憶もなければ、ゆったりとした基本功と、普段は極々基本的な学習内容に留まっていた訳だから、それは当然のことなのかも知れなかったけれど。


 消費するカロリーを比べても、先輩のバイト時のそれには遠く及びもしなかった。


(どれだけ……慌ただしいバイトなんだ)


 俺の朝夕のランニングに稽古、それらを合わせてみても、到底及びもしない先輩の活動量。


 それでいながら、暇を見つけては先日の駄菓子屋を初めてとして――あちらこちらに顔を出してまわる活発すぎる活動範囲。


「……虎か、なにかか」


「あん? なんか言ったか? 橘」


「……、――、……いえ」


 そのテリトリーは優に1000キロを超えるのだとか。


 先輩のとてつもないバイタリティーを思うと、そんなことが口を吐いて出てしまっていた。


「ぼちぼち……一ノ瀬が終わった頃だ。行くぞ橘」


(……過労か、ストレスで……死ぬかも知れん)



 * * *



 柊先輩が持ち掛けてくれた『ビジネス』


 それは正直なところ、ビジネスとは呼び難い内容の代物でしかなかった。


 と言うのは、先輩が俺の先生方より巻き上げたのだという1通の招待状。


 明らかに、まっとうなものとは言いかねる、その招待先へと向かって――


 あとは、その場で考えるという、本当にビジネスの体を成していないものだった。


 招待状が、記される行く先は港湾区画にあるらしい……非合法のカジノ。


 そんなものを持ってる先生方も先生方なら、巻き上げたそれに……興味を持って出かけようという先輩も先輩。



「坊や! 坊や! お願いヨ! 律子(リィズゥ)! 律子ひとりで行かせないで欲しいネ! おの子! おしめしてた時から私たちが、なに言っても聞いてくれないネ。行かせたら柊に……(ヂョンムゥ)に……私たち、ぶちのめされるヨ


「そうなったら……そうなったら……私たち……柊に……柊に


「ころころ……小さく切られて……明日の炒飯の具に……されちゃうかも……しれないネ


「ア……アイヤァ~~~……私たち……美味しい炒飯になりたく無いヨォーーーッ!!」


(御免なさい……先生。びっくりするほど美味しそうには思えません)


 ならば、先生たちが俺の代わりにお付きをされたらイイのに……とも、思いもしたけれど。


 どうやらそれには、そうもいかない理由として――


 先生方の財布では、とても賄えない額の賭け金が動くカジノであるということ。


 招待状の中に書かれた『フォーマルな装いでいらして下さい』と言う一文。


 ドレスコードを満たすにしても、これにも金がかかると言う事で、先生たちにはとてもついていくことは敵わないという事情であるらしかった。


 であれば……俺が先生方に一着ご用意させて戴けば、それでいいハズな訳ではあるけれど。


「……ったく、あたしんちのオヤジ共は……すぅぐ、あれダメ……これダメってウルセぇしよ。かといって、あたしひとりじゃ……流石にヤベぇような気もするし、軍資金も心許ねぇしで困ってたんだわ」


 それを断固として受け入れない先輩側の事情もあったらしい。


(と言うか先生方を……ぶちのめすって言う、先輩のお父さんって何者なんだ……)


 着慣れないフォーマルではあったけれど、古着屋で調達したそれに一ノ瀬さんが手を加えてくれたことで、そこまでの窮屈さは感じない。


 もっともこれを仕上げて貰うに当たっては――


共布(ともぬの)……あ、えっと……スーツを買うと普通予備の釦と一緒に付いてるものなんですけど……使われた生地の小さな切れ端。それが付いたものを見つけてきて貰えますか? 虫食いだったり、小さな傷があった場合、かけはぎをしないといけませんので……」


 ただでさえ、古着屋の在庫の中で少ない礼服の中から、一ノ瀬さんのひと手間を戴くにあたって――お眼鏡に適う物を探さなくてはならなかっただけに、それ相応の労も必要となった訳だけど。


 礼服に合わせて、こちらは購入した革靴。


 我儘を言って、一ノ瀬さんに手を加えて貰った踵にも違和感らしきものは感じられない。

いつもブクマ有難うございます。


宜しければ、お読み下さった御感想や「いいね」


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それらで御評価等戴けますと、それをもとに今後の

参考やモチベーションに変えさせて戴きますので


お手数では御座いますが、何卒宜しく

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