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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
五章:シャングリラ

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ビジネス

 その金が少々、後ろ暗い金を洗浄した物である事。


 猟犬みたいに鼻が利く、税務署に目を付けられないためには……今年使う金は、先輩が手にする現金の範囲でやり繰りする必要がある事。


 それらを考えなくて良いならば、あとは他にも保有する金融商品としての資産について


「――これだけになる」


「ん? ……、――、……ま……マジか」


 先輩に向けてみせたスマホの画面。


 取引所で保有する暗号通貨の総額を指で差してみせると、先輩は絶句。


「……なァ、橘」


「はい」


 夢うつつ、定かならぬといった空気で先輩が気の抜けた声。


星山(ちかげだよ)と……来栖(みおだよ)に……結城(イオナだよ)、あとは一ノ瀬。おまえの本命は……星山なんだろうなぁってのは、まァ分かってる」


「……………………」


「――で、それを分かった上でだな? いっちょ頼みてぇことがある」


「なんです?」


「贅沢も言わねぇし、迷惑も絶対かけねぇ! 愛人でイイから!? 愛人でイイからッ?! な? な? 囲ってくれッ!!」


「いや、初っ端からどころか……前提で困る」

 


 * * *



 暦の上で秋口を前にしているからと言って、和らぐ様子も見せない残暑。


 太陽に焼かれた天井からの熱気とすえた匂いが立ち込める閉じ切ったトイレの中。


「……あっちぃ」


 音を上げて先輩がシャツの胸元のボタンを開くと、洋式便器の蓋に腰を下ろした。


「つまりだ……橘は自由に使う金は唸るほどあるし、それはあたしらに使う分には全く問題はねぇし? あのアホアホ共のひとりにだってポン♪ とくれてやるのも痛くもねぇ上にそれは善しと考えてる。でも、それをすると……お上から税金としてエゲツねぇ額をカツアゲされる上に、金の出所を辿られると少々都合も悪ぃ。だから一年間で使うことができる金額は百万前後の範囲って考えていて――この三百万は足がつかない、便利な金だと……そんな理解で問題ねぇか?」


「まぁ……概ね」


 柊先輩は、天井のタイルに張られた蜘蛛の巣でも見るみたいに見上げ、腕を組んで暫くの間思案にくれていた。


「……、――、……、――くひッ♡」


「どうしました?」


 淀んだ熱気の中で、先輩が胡乱な笑い。


「たぁちばぁなくぅ~ん……? イイお話があるんだわァ……ビジネスの話をする気はねえぇえ?」


 先輩に対する苦手意識が根強い一ノ瀬さんをしても、その人柄は面倒見の良い姉御肌という評。


 彼女が醸す外連味は、ハロウィン間際に目にする洋菓子を包む奇抜なラッピングみたいな物なのだと言う事も――今日までの付き合いで、そろそろ分かっていた。


「……伺わせて戴こうかな」


 粗暴で蓮っ葉な振る舞い、それが彼女のなりの世間に対する予防線なのだろうことも理解できている。


 すんなりと俺が耳を傾ける姿勢をみせたところ。


「……なんか橘。おまえ、たまに不安になるな……その額の財布の中身知った相手が、こんなこと言ってきたんだから――ちっとは疑ってかかれ? まぁイイや それは良いとして……ボチボチ、こんな臭ぇ上に蒸し暑いところ出ようぜ そうだなぁ……アッ! この側に駄菓子屋があるんだわ! 橘ッ! ラムネ ラムネッ! デートってことでラムネ奢れッ! あと、中のビー玉はくれな? 金魚鉢に沈めるのに、じぃつぅわ……集めてんだわ♪ げひひひッ……あと、ちょっと……あと、ちょっとで、金魚飼う準備が整うッ!」


 ブランド物が大好きな割りには――あまりに質素なコレクション。


 こちらは迷惑をかけっぱなしで、その程度の無心で済まされるのも……考えるものもあったけれど。


「急げ! 橘ッ! 駄菓子屋のじじぃ! 店閉めるの早えぇんだ!」


 駆け出す先輩に腕を取られて、御贔屓の店へと案内された。



 * * *



「おお……寝しょんべん垂れの律っちゃん……久しぶり。おじいちゃんの元気が出るように、乳か……尻か……両方? 両方か。触らせに来てくれたんだろ。ほら、好きなもん選び? 早よ早よ早よ」


「うぅるせぇ! じじい! 金払ってやるからラムネさっさっと持って来い! 仕事しろ! 仕事ォ! お? 笛ラムネある……たぁちばぁなくん♪ この笛ラムネも欲しいなぁなんて」


 キャラも砕け散る先輩の戯言に1000円札を差し出すと、それを傾きかけた太陽に透かして、上機嫌に――普段の先輩に戻ってくれた。


「……初めてみる顔だけど坊ちゃん。律ちゃんの彼氏? 彼氏? もう、えっちなこと律ちゃんとした? これ……ご縁があるようにサービス。五円チョコ。えっちしたら、おじいちゃんに話して聞かせてくれな? な? 茶菓子なら、なんぼでもサービスするから」


「んー♪ おじいちゃ~ん♡ おばあちゃんのところに逝きたいのかなぁ?」


 随分とヤリ手な様子の御老人。


 取ってきてくれたラムネ二瓶と、おまけの駄菓子を手渡しての……如何わしさ満点の交渉の最中。


 店の中を嬉しそうに見て回っていた先輩が戻ってきて――その背後に近づくのを察すると、逃げる様に奥の座敷に引っ込んで行った。


「律ちゃんのばーかばーか。避妊失敗してさっさと妊娠しろ。そんで赤ちゃん連れてきて、わしが死ぬ前に抱っこさせえ。超甘やかして育児で苦労させてやるからな」


「おーじゃあ……覚悟しとけよじじい、今からこいつと仕込みまくってきて、ガキの面倒で過労死させてやっから」


「や、やっぱ……その坊ちゃん彼氏さんなんか。わ、わしというものがありながら……、――律ちゃんにふられた」

いつもブクマ有難うございます。


今年に入ってから18~19歳での口座開設が

国内で可能にはなりましたけれど


未成年は、数年前みたいには国内の取引所で

暗号通貨買えないんですよね。


海外では買えなくもありませんが……

主人公を英語できる設定にしておいて良かった。


宜しければ、お読み下さった御感想や「いいね」


その他ブックマークや、このあとがきの下の方に

あります☆でのポイント


それらで御評価等戴けますと、それをもとに今後の

参考やモチベーションに変えさせて戴きますので


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

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