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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
五章:シャングリラ

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ひすぱにおら号 【Picture】

 水を差すべきでないところなのは流石に……分かりはしたものの


 思わず俺は待ったをかけてしまっていた。


「ダメかよ……橘くん」


 連中のひとりが、朦朧といった調子で聞き返す。


 千影の居る席は、はしゃぐ女子たちの群れに遮られて辿り着けそうにない。


 空いている3年たちの席の側に腰を下ろすと――ささやかながらも、前向きな……やる気をみせるようになった こいつらに。


 流れだした窓の景色を眺めながら、なんといって納得させるべきか考えていた。



 * * *



 錆の浮いた外国船籍の船が、並んで停泊する埠頭の一画。


 夜には、ひと気も絶える その場所で――その船は錨を降ろしていた。


 船名は〝ひすぱにおら号〟


 宝島に登場した船の名前だった気もするが、少々自信が無い。


 停泊するその船を外から眺めてみれば、スクラップを待つばかりというかの……正直、足を踏み入れるのも躊躇する、みすぼらしい船。


 けれども一歩、船の中に入ってみれば、その印象はガラリと変わる。


 一体、どういう方法を用いて この内装工事を実現させたのかと首を捻らざるを得ない、豪華絢爛な船内。


 幽霊船を思わせられた外観からは一変して、その内部は……さながら豪華客船のそれ。


「……来た、来た来た来た来た来た来たァーッ!?」


 紳士淑女のパーティー会場と言っても通るだろう そんな中で――


 自慢のチャイナドレスに、ブランド物の白のジャケットを羽織って目一杯のドレスアップを果たした柊先輩が嬉しそうな声。


「……先輩、あんまり目立つことは」


 口を寄せて耳打ちするも、うわの空の返事と、適当な詫びの言葉を、彼女は返すばかり。


「イイねぇ……乗って来た乗って来た。昔、親父のパチンコに付き合って……拾い玉で打ってたら確変に突入したのを思い出したわ……くくくッ……ダメだ……笑いが止まらねぇ」


 違法カジノ船、ひすぱにおら号のホールのほぼ中央。


 ルーレット卓に腰を下ろすなり、みるみるチップの山を築きあげ始めた先輩は得意絶頂。


「Place Your Bets.」


 日本人の用いる英語とは異なる発音で、女性ディーラーが次の勝負の受付を宣言した。


 話に聞くアジアのあちこちに点在するカジノで働いていた……人間を引っ張って来たのかも知れなかったけれど、そんなことはどうでもいいし、今回の目的からすれば関係も無い。


 着慣れない礼服のせいか、首元が締め付けられる心地がした。


「おっし! んじゃあ……今度は、黒黒黒黒黒ォ! ……ちんみりな、ちんみり」


 全く推し量りようも無い先輩の勝負勘。


 俺たちふたりの存在が、場違いなのは明らか。


 抜き差しならないところへ踏み込むのも――面倒に巻き込まれるのも御免被りたい。


 早く、早く終わって欲しいと願いながらも、俺は自分の役割を果たすべく、背後から彼女を見守って、辺りを窺い続けた。


 

 * * *



 船を降りると俺と先輩は公園のトイレに飛び込んで――目立ちすぎる恰好から普段着に着替えると、園内に設けられたガゼポの椅子に掛けて、反省会。


「50万スタートで初めて……プラス12万か。欲かくんじゃなかった……」


 置かれた大理石調のテーブルに両肘をついて、先輩が頭を抱える。


「あそこで……引いておけば……、――、……なァ? さっきからスマホ弄って……なにしてんだよ? 橘」


 賭博の場で張り詰めた神経が、そこから解放されて弛緩したみたいな。


 いつもの険のある表情を、ふやけたものに変えた先輩が、一向に労いの言葉ひとつ掛けもしない、気の利かない後輩に水を向ける。


「――、……これか」


「あん?」


 俺の人付き合いの拙さは、もはや皆の知るところなのか。


 大した苛立ちも期待もしていないかの、先輩の……気の抜けた声。


 テーブルに、片肘をついて崩れる彼女にスマホの画面を向ける。


「あのホールの真ん中辺りに在ったステージの車」


「……車……って。あれ、車か?」


「広義の分類では。あれが、なんなのか気になって調べてみたんだけど……特徴も一致する。多分、これで間違いない」


挿絵(By みてみん)


「……かッ! お前のこったから……また訳の分からねぇ機械かなんかを使ってよ? 取り上げられたスマホ代わりに、こっそり持ち込んだそいつで――カジノん中、ウロウロしてたバニーのびーちく画像でも撮り溜めてきたのかと感心してたのに……ほんとブレねぇなお前。いっそキメぇぞ」


 ネットで検索して見つけた画像を拡大してみせてみれば、先輩は理解不能な様子で頭を掻いて、俺に辛辣な言葉。


 ……というか、柊先輩の中での俺に対する印象が、少し気にならないでもない。


「丁寧に施されたリペイント、……目にした装備が実動する物か……どうかまでは、ちょっと分からなかったけど……大戦中にイギリスで使用された装輪装甲車、スタッグハウンド Mk.1。これだと思う」


「んんな……もんに興味はねぇよ……こっちとら、これでも女子だぞ女ォ子ッ。あんなモンは戦車つっとけば、普通はそれで充分なんだよ。くっだらねぇ」


 心底興味も無さそうに、毒を吐く先輩に――世間一般の有難い御意見というものを垣間みた気分になって、笑ってしまいそうになった。

いつもブクマ有難うございます。


イラストのスタッグハウンドは主砲をM3 37㎜Gun

から、マウザーBK-27リヴォルバーカノンに換装


車体側のガンポートと機銃を排し


スモークディスチャージャーと、中国製RWSと

シュノーケル、それに国産4WDオフローダーの


ライトを砲塔に追加したゲテモノになります。

主砲を換装したことで軽くは……なっているハズ。

(誰得……わたし得)


宜しければ、お読み下さった御感想や「いいね」


その他ブックマークや、このあとがきの下の方に

あります☆でのポイント


それらで御評価等戴けますと、それをもとに今後の

参考やモチベーションに変えさせて戴きますので


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

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