それじゃあ……あとは、若い方たちにお任せして
「あんたとくっついてると……なんか……めっちゃイイね。和む……相変らず……超イイ匂いするし……ほんわか気持ちイイし……幸せ」
「そ、そう……せ、狭……い」
「……、――癒しと生活力の千影……世界が滅んじゃっても大丈夫そうな……不必要なくらい盤石な生活基盤を既に確保してる蔵人か
「……んー……、ん~、ん~~~~、……決めた。
「私……今日からバイ。バイになる!」
「み!? 澪ちゃ?!」
「おお……わ、わたしの幼馴染の……性癖を歪めて……人生まで狂わす……千影ままのおっぺぇ……凄い……凄すぎる
「オキャアアアアァーーーッ! しィぬぅうううううううううッ! 耽美に……耽美に殺されるううぅ! 死んじゃうぁアアアアアアアッ!
「……んじゃ、わたしは……若いおふたりのレズを邪魔しないように……あっちのお布団に引っ越ししますんで♡ ど、どうぞ……ご……ごゆっくり。
「ぐ、ぐふ♡ ぐふひッ……ぐひっ♪
「……あ、スマホで撮影……イイっすか? 薄い本描く資料にしたいんで」
「いやぁ! イオナちゃ!? イオナちゃ?! 行かないで! 置いて行かないでぇ!!」
「千影……今日も、おっぱいが……素敵だよ
「……蔵人と三人一緒に……いっぱい……エッチなこと……しようね?
「そんで、あっちの布団で……目ぇ、ギラギラさせてる変態に絵でも描かせてさ?
「私たちのスイートなおうちの……素敵なリビングに飾ろ?
「……お……お……お……おお……心得た……心得たアァッ! 描く! わたしの命削ってでも! 描ァく! そのエロエロな場面を見事、切り取って! 超ッ凄い奴! 描き切ってみせぇるッ!!」
とんでも将来設計に――千影が悲鳴。
思い描かれる その光景に……イオナが迷惑極まりない決意を口にしたところで、針を握る一ノ瀬さんの手が止まった。
「私……取柄も無いし……ふたりの……オモチャになってあげるくらいしかできないの……
「――今夜は……寝かせないから」
「い……いやあぁぁッ?! くーちゃん! 助けてッ! くーちゃん! くーちゃあん!?」
(また……一ノ瀬さんがキレる前に……やめろって お前ら)
* * *
静まり返った夜の廊下で、自販機が大きな音を立てた。
取り出した飲み物を一ノ瀬さんに手渡すと、次々と腕に抱えながら
「……星山さん……、――置いてきて……良かったんですか?」
ひとり千影を置き去りにしてきた罪悪感からか、浮かない顔。
「前に……澪とイオナには迷惑かけた手前……俺からは何も……言えないんだよ。でも……あの2人は、俺や千影みたいな奴とは比べるのも馬鹿らしくなるくらい――巧みな人付き合いができる奴らだし、心配の必要は無いと思う」
あのふたりに対する、俺の偽りない評価。
それを聞いて納得してくれたのか、少しだけ一ノ瀬さんがホッとした空気を滲ませた。
「柊先輩も……一緒に来てましたよ……ね? 先輩はどちらに?」
どうやら苦手意識が抜けないらしい、姿の見えない先輩について。
言葉少なげに訊ねる彼女の腕の中は、既にペットボトルで一杯。
いくつかを受け取り、近くのベンチに並べて。
空いたベンチの片隅を勧めると――ボトルで濡れて、色合いを変えた浴衣を気にするように視線を落とす一ノ瀬さんに、話して聞かせた。
「柊先輩は……マッサージ機が気に入ったらしくて……夕食の後、また出て行ったみたいなんだけど――
「そこで知り合った客のおじさんたちと、麻雀話で盛り上がったとかで、さっき……」
『カモ見つけた! カモ! なけなしの色気振り絞って……オッサン共の下心、そそのかしまくってよォ……金目のモン――毟り取って来ちゃるゼェ!』
「……とか言って、出かけていっちゃった」
「だ、大丈夫なんですか……それ」
暫く前、自身の身に起こったことを想い出すのか――一ノ瀬さんが腕を組んで身を震わせる。
「まァ……先輩の家で働く……俺の先生方の手前もあって。あの人にもスマートウォッチと、リングは渡しておいたから、心配は……いらないと思うけど」
「……そ、そうですか……良かった」
強張りかけた顔に少しだけ、安堵を浮かべて。
ぎこちない笑顔で、一ノ瀬さんが小さく息を吐く。
「ちなみに他の3年のアホd……先輩方は。男子部屋で勉強中だから放って置いて貰えると助かるよ。今頃、集中力も切れて……遊び始めてる可能性もなくはないけど」
* * *
この宿に来て部屋から逃げ出したのは、これで二度目。
はしゃぐ澪たちから逃れるべく、一ノ瀬さんを誘って飲み物の調達に出た訳だったけれど……そろそろ事態も鎮火したハズ。
抱えられるだけ抱えたペットボトルを持って、俺たちは部屋に戻ることに。
騒ぐ人の声なんて聞こえもしない、シーズンオフの地方の宿。
微かな足音すら立たない、絨毯敷きの廊下を歩いて俺は。
彼女……一ノ瀬 紬の申し出に対して、どう返すべきか頭を悩ませていた。
人と慣れ合うことを、まず由としない彼女。
俺が夏休み前に進呈したミシンの礼として、同好会の面々と協力して――経験値稼ぎに始めたのだという縫製の内職。
ミシン掛けから、ファスナー付けなんてものを皆で続ける内に……俺が進呈したミシンの代金には遠く届かないにしても――
いつもブクマ有難うございます。
こいつらのお話を書いていますと……いずれまた
ノクターンに沈めてやりたくなってきます。
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