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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
四章:夏の終わり

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本当に……死ぬからな?

 好き勝手放題に、思ったことを脊椎反射で口にするアホ共。


「――俺が、お前ら如きに……期待することなんて なにひとつない」


 感慨も興味も無い、抑揚に欠ける背後からかけた俺の声に、連中は水を打ったように騒ぐのをピタリと止めた。


「……そ、そっすよねぇ」


 苦笑い混じりに整列し直す3年たちを避けながら、怯えた様に千影が駆け寄ってくる。


 フルフェイスを被ったままのせいで、頭身がおかしなことになってる幼馴染に腕を取られ――放って置けば、際限なく猿山の猿みたいに収拾がつかなくなる連中に、趣旨のみを伝え釘を刺す。



「……今日、お前らなんかをここに誘ったのは、俺なりの仏心って奴だ。


「イオナに少し前に叱られたものでな。それまで習慣も無かった お前たちに


「勉強勉強と、鞭打ってみたところで……効率が上がる訳も無いのも確かだ。


「そんな訳で今日は、千影のポテンシャルを維持するためのトレーニングも兼ねて――


「お前らにも興味が沸きそうなバイクの扱いについて、手解きを受けさせてやろうと思った訳だ。


「サーキットを借りるにあたっての、お前たちに対する保険は一応かけてやった。


「だからと言って……いつもの調子で、気の抜けたざまを続けてたら


「――本当に……死ぬからな? 覚悟しろ」



「「「「「応ッ!!!」」」」」


「……威勢に関してだけは……いつも、文句のつけ処も無いよな」



 * * *



 3年のひとりが珍しく気を利かせて用意してくれた、折り畳み椅子に座って見守っていると――バイクから降りた途端に、自信を消失させた千影を前に連中が整列した。


「……えっ……と……あの……よ、よろし……く」


「「「「「「オナァシャシャアアァァ£&※♯@€%☆――――ッッツス!!!!」」」」」」


「ひうッ!!」


 連中からの暑苦しすぎる返事に、千影がおたつく。


 本当に……何故、サーキットの走行中と、バイクを降りてからでは……こうまでガラリと人柄が変わってしまうのか。


「ち、千影ママぁ……こ、こんなのリアルで……み、見られるなんて……す、凄い、わたわた あうあうしてるママ……尊い……尊すぎるぅ……あぁあコレ描きたい、ママの表情……の、脳内に……しっかり焼き付けておかないとーーねっちょり視姦モード起動!」


 そばにいるイオナに助けを求めて、バイザーを跳ね上げたメット越しに視線を向けた千影だったけれど――いつもの様に自分の世界に旅立ってしまった彼女が、気持ちの悪い反応しか返してくれないだろうことを直ぐに察して


 不承不承と言った感じで震える口を開いた。


「……え、えっと……ざ、座学……代わりに……回した……D……VDは……み、観てきて……くれました……よね?」


「「「「「「応ッ!!!」」」」」」


 無駄に凶暴な声に、千影が膝を笑わせる。


 無理もない。


 中学に入ってからも度々、あいつの胸は男子一同からの好奇の目に晒されてきた。


 人見知りな上に、男性恐怖症の気まである あいつに荷が重いのは分かり切ってる。


 だからと言って――


「千影。そいつらの声は、マシンの排気音の……半分も無いぞ。ビビるな」


 俺も千影も幼いままでいるなんて、許される世の中でもない訳だ。


 千影の背中を後押しするべく一声を掛けてやるとーー少しの間をおいて


 自身を言い聞かせてみせたのか、幼馴染は幾分落ち着きを取り戻したように見えた。


 どんなに緊張を強いられるレースの前でも、すぐにマインドセットが完了する 親父さん譲りの本番に強いあいつ。


 落ち着きを取り戻すための糸口さえ手に入れれば――


「……、――そ、それじゃ……あの……あのね。……本当はダメなんだけど……くーちゃんが、お話をつけてくれたから……まずはタンデムで……バイクに慣れるところから」


 始まった千影の指導に 再び繰り返される暑苦しい声。


 俺の言った事が、足しになったのかどうかは分からなかったけれど


「ひ、ひとりずつ……嫌かも知れないけど……あの……わ、私の後ろに座って……タンデムベルトの握りをしっかり……掴んで……貰えます……か」


 自身の得意分野という土俵の上、慣れ親しんだホーム・グランドのサーキット。


 次第にいつもの調子を取り戻した千影は――サーキットを借り切った時間一杯、


 マシンとアホ共相手に、悲鳴を上げさせ続けた。



 * * *



「……レンタルだわ、小せぇわで……格好悪ィ……って思ってたけれどよ」


「お、おお……2ストって……250でも半端ねぇのな……あの加速……マジ怖ぇ」


「そんでもって……俺らをバカにするみてぇに……YZF-R1Mだっけか……あれ乗り回す千影の姐さんよ……なんつーかもう……悔しいとも思わん」


「ド素人の俺らを後ろに乗っけてんのによ……あのカーブの突っ込み――し、死んだ! って……思ったわ」


「てかよ……借り物で締まらねぇけど……初めてライダースーツ着たわ。着るとなんか……シュ! っとすんのな。なんだよアレ。なんつーか……なんとなく、長ラン短ラン着る感じに似てね?」


 春にも一泊した宿の和室。


 夕食も終えて、女子たちが温泉に向かったあと――部屋のテーブルでPCを開いて俺が作業をしていると、3年たちはバイクに初めて乗った興奮も冷めやらぬといった調子で


 日中の体験について語り合っていた。


「あのサーキットの貸し切り費用……便所行った帰り、受付でパンフ貰って読んだんだけどもよ……半端無ぇのな。桁数えてブルっちまったわ」

いつもブクマ有難うございます。


宜しければ、お読み下さった御感想や「いいね」


その他ブックマークや、このあとがきの下の方に

あります☆でのポイント


それらで御評価等戴けますと、それをもとに今後の

参考やモチベーションに変えさせて戴きますので


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

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