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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
四章:夏の終わり

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眠らない使い魔

 ヒリヒリ痛むらしい、舌を出したまま 涙目でこちらを見ながら――暫くして。


 イオナが理由についてを、ぽつりぽつりと話してくれた。


「どうしてって……いや、あの……蔵人? うん……まぁ、あんたがさ。そういう方面に……疎いやら……気が回らないのは、流石に……いい加減分かってるし


「別に そんなこと責めるつもりもないんだけどね


「わたしと……少なくとも澪の中じゃ、男子とか……幼稚園児か、お猿さんか? ってな生き物な訳なのよ


「端的に言うとね? あんたの目指すところに対するやり方というか……アプローチって言うの?


「それが見てられなかった訳なんですわ


「わたしも、ザラメ(愛兎)くんも」



 俺とイオナの足元で、ふっふっ! と、短い呼気を発して……信じられない速度で成される、カンフー映画の手業の応酬シーンよろしく


 慌ただしく前脚を上下にバタつかせてみせたザラメ氏が――俺たちのやりとりなんて興味も無さそうに


 シャンプーのCMを地で行く、流れる長い髪を両手でケアするみたいな振る舞いで、片側ずつ耳を丁寧に丁寧に……てちてち てちてちと、毛繕いを始めていた。


 そんな ご主人の愛らしい仕草に、頬を緩めっぱなしのまま――



「とりあえずね? 蔵人? あの3年生の先輩さんたちにストイックに当たりすぎ


「あの人たちはね? わたしなんかと同じで、自分のやりたくないことは、絶対にやらない人たちなの。


「……分かれ


「そんな人たち相手に、飴もなしに……


「鞭ッ! 鞭ッ! 鞭ッ! これでもか鞭ッ! こぉれでもかムぅチッ! そんでもって さぁらぁに……鞭ッ!!


「いやぁ……ね? あのね? こんなんで……一体、誰が話を聞いてくれると思うの?」


「画像も無しに掲示板にスレだけ立てて……みたいな? 無能、無能、無能! って、呼ばれても仕方のないレベルのことを、あんたはしようとしてた訳なのよ。


「……いや、画像も無しに……う~ん。言うほど……最近、見ないし……聞かない……かもなぁ」



 毛繕いを終え、可愛らしい舌を覗かせて――『そんなことも分からないのか蔵人』


 とでもバカにするみたいな……さも つまらなそうな様子で欠伸をみせるザラメ氏。


「……言葉も無い」


 イオナが手伝ってくれる理由。


 それにはきっと……いつもの打算に満ちた、深慮あってのこととばかり思っていたのだけれど……。


 蓋を開けてみれば――俺のどうしようもない、人付き合いの拙さをみかねて、ただ手を差し伸べてくれただけという


 有難くも、もう少し……贅沢を申し上げれば、なにか欲しかった……取るに足りない理由しか、そこにはなかった。



 ――俺はバカか。



「……イオナ」


「なんざんしょ?」


「もう1本……コーラ……要らないか?」


「ご、ごふッ?! こ、この……バカにしてるみたいな……テキトー極まる物での釣り様よ。……でも、要る。1本250円になりまぁす♡」


「高いよなァ」


 足元を見るような価格設定に()ちて、イオナとザラメ氏に背を向けると俺は――冷蔵庫へと向かった。









「……、――、……本当に……ダメな奴」



 * * *



「……あっつ……」


 夏の盛りも過ぎたはずの夕方も近い時間帯。


 庭に新しく置いた、アルミ物置の中を片づけていると、気怠げに澪が鳴いた。


「……家の中に入ってれば いいだろ」


 声の位置から察すると――物置のそばで座り込んでいるらしい彼女へ、投げやりに返してみれば


「……うんー、いやァ……ね? なんていうのか……あんたのために晩御飯を作る千影の……ヲトメの気迫っての? それに当てられ続けてるとさ……なんだかお日様に照らされちゃった吸血鬼みたいに……灰になっちゃいそうで――逃げだしてきたんよ」


 我が家のリビングの居心地の悪さらしきものを、しきりに訴える澪だったけれど


「――言ってることの……意味が分からん」


 それを俺に言ったところでと、言ったところ。


 小休止でもしようと顎を伝う汗を拭いて、外に出ると――幾分、ぬるくなった風が汗を奪う。


「てかさ、蔵人。……この物置ぃ? 買ったって話だったけど、あんた……良くお金あるよね。いや、多分……あのお金……なんだろうけどさ。何に使うの? こう言うの買ってさ? オモチャを片すのに要るんだろうなぁ……ってのは分かるんだけど。……、――100万円くらい? するんじゃないの? こういうのって」


『あの お金』


 春先にイオナの家のホテルで俺たちが見つけてしまった――明らかにヤバイ金について、澪が言い辛そうに口にする。



「最近は……この手の商品って奴は。在庫が余って値崩れも凄いんだそうだ。安い買い物じゃなかったけど――100万はしなかった。


「お察しの通り物が多くてな。あとは、この物置自体に手を加えて……ファラデーケージとして利用しようかと考えてる。


「――お前の言う金な。


「出所を欺瞞する一環として それを元本にして。


「いや、まァ……これで完全に金の流れを誤魔化せるのか? と聞かれたら、そんなことも無いし……調べようと思えばリアルタイムで追跡することもできてしまうんだけど


「まぁ……おまじない代わりだな。で、だ。


「セキュリティ強度の高い暗号通貨の銘柄を選んで……組んだAPI(オートパイロット・インテリジェンス)で、アービトラージ……裁定取引とか、サヤ取りとかって言うんだけど


「取引所ごとに異なる価格の差額分を……マシン頼みで拾い集めるみたいに、利ざやを稼ぐのをメインに遊んでみてたんだけど――まあ、単に……運が良かったんだろうな。

いつもブクマ有難うございます。


宜しければ、お読み下さった御感想や「いいね」


その他ブックマークや、このあとがきの下の方に

あります☆でのポイント


それらで御評価等戴けますと、それをもとに今後の

参考やモチベーションに変えさせて戴きますので


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

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