アジト
「こ、こ、こ……ココが……あ、あの……」
「へ、へ……へぇ! ま、まァ!? 想像したほどのことも……ねぇなァ! なぁ?!」
――それは。
それまでの俺からすれば、想像もできないことだった。
3年連中が進む未来に……憐れな結末しか待っていない事を知ってしまった俺は。
一週間後、連中を集めると――イオナの家へと向かった。
イオナの御実家が営むファッションホテル業。
その立地に目をつけていたのだという……近所の倒産したホテルをつい最近、安く買い取ったとのことで、内装のリフォームに関する代金を抑えたいのだと相談を受けていた俺は、夏休みの間。
暇を見つけては足繫く通って、お手伝いをしてきた。
防音・断熱性を高めるグラスウールの詰め直し。
煙草の煙で変色した、くすんだ天井と壁のクロス貼り。
照明と室内配線のメンテナンス(違法)。
排水周りにボイラーの点検に
やっぱり、ここでもメンテナンス……などなど。
やることはそれなりに存在したものの、部屋数10前後のホテルの――全室の大まかなリフォームは、延べ二週間程で完了。
ふと気になって、電波を洗い洗い……アタリをつけて、作業の合間に探してみれば……出るは出るはの盗聴器と盗撮カメラの山。
そのまま使う訳には行かないけれど……これらは、その内再利用するために……有難く戴いておくことにした。
調度類なんかのチョイス等は、俺なんかが及ぶべくもない――とんでもないセンスを持った奴が、お身内に居られる訳で、あとは気にする必要も無いハズ。
仕事の出来栄えと速さに御満足頂けた様子の親御さんから、労働の対価として――それなりの金額を包んで戴けるとの申し出もあったけれど、俺はこれを固辞した。
つまり先日の一ノ瀬さんとのやり取りを、俺なんかが文句を言う資格もない訳だけれど、こちらの場合――
紙幣の番号追跡を行うアプリなんてものが登場して久しい昨今。
金の流れから、色々と痛い腹を誰かに探られるのもなんだからと言う理由もあった。
そんな訳でイオナの奴に相談してみてみれば……意外にも。
どのような説明を親御さんにしたのかは分からなかったけれど、彼女は大した手間も無しに話を丸く収めた様子で、ならば その代わりにと――
その考えられる維持の手間と――特異なプレイ内容を好む層にしか需要が見込め無いとのことから……パネルの撤去を頼まれていた1室を、イオナのアトリエ兼、御主人であられる……らしい、ザラメ氏の運動場として。
そして俺にも防音の利く勉強部屋として。
ご厚意で自由に使わせて戴ける運びとなった。
防音の利く部屋に――男子である俺が、娘さんと入り浸るのは、親御さんとしては、気を揉まれないのだろうか? と、訝しみもしたもけれど……。
子供を放任する親の実例なんて、俺と千影の両親とで事足りる。
俺は、そのご厚意に「……では、その内に」と甘えさせて戴くことに決めた。
我が家のリビングの4つ、5つ分はあろうかという、50人は収容可能なのだという――この手の業態では、問題の種にしかならなそうなパーティ・スペース。
そんな場所に3年連中を集めた趣旨について、俺は説明した。
部屋の正面に設けられたカラオケが置かれた壇上に上がり、連中を見据えると――溜息を吐きそうになった。
そんな俺の様子を気にも留める事無く、気もそぞろとは……こんな様子を表す言葉に違いないと、理解させてくれる、落ち着きの無さで。
初めて足を踏み入れる、男女の営みの場である箱の1室を、連中はきょろきょろと見回していた。
「先輩方……ごめん。俺は……アンタらのことを動物め……動物め……って、今日まで思ってきたんだけど――本当に……そうだったんだな」
「ん? ん? 橘くん?? なにが……どうしたん? 今日は、いつも以上に……話が難しくねぇか?」
(……………………)
部屋の空気にあてられて……だらしなく鼻の下を伸ばしたままの連中に、なんとか……ご理解戴けるように俺は、かみ砕いて……かみ砕いて――
例えとしてあげる話の精神年齢は、これでもかこれでもか……と、低く低く設定することを心掛け。
結城家の御厚意で貸して戴けた この部屋に、今後集まる様にして――俺が、勉強を見ようという旨を伝えたわけだった……が。
「なァんだ♪ それなら そうと早く言ってくれやァ橘くん。てっきり、また俺らがなんかやらかしちまって……ビリビリさせられるのかって、ビビっちまってたゼ。……つまり。今日からココが! ……俺らの新しい溜まり場ってことだな? まァじ! アジトじゃんよ♬ アジトォ。……オイオイオイ♪ グループの名前……決めようゼ。グループの名前ぇ。やっぱ『橘組』か? でも橘くんにゃ悪ィけど……なんか、まんま土建屋みてぇだな……堅ぇ。おい! 他ねぇか他は!? お前らも案出せ案をよ! おぎょアァッ!」
「――違うからな? 取り合えず……少し黙ってろ」
これっぽっちも、こちらの言いたいことを酌んでくれない連中の一人を――パブロフ・モードで黙らせると、改めて皆を見回す。
「お前たちの内……ひとりしか、高校に進学できないって話を先日、聞いた。
「そして、その射程圏に収めることができる学校とやらについても……俺は調べてみた。
「言わせて貰う。そこは断じて高校なんて場所じゃない。
「調教師か、飼育員さんが下の世話までして下さる動物園だ」
「高校には、給食もおやつの時間も無いんだ。分かれ……分かってくれ……察しろ」
「そういった訳で……だな――」
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