表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
四章:夏の終わり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/216

誰が、ツキノワグマを殺したの?

「お鞄! お持ちします! ウオォッス!」


 どういう風の吹き回しか……あれほど俺が悪目立ちする様なことは、控える様に言い含めていたにも関わらず、この態度。


「……いえ、困りますんで」


 ガラの悪い上級生に絡まれて、途方に暮れていると言った体で、迷惑を滲ませてみるものの、アホ共は悪ノリを止める気配をみせない。


 俺の手からしつこく鞄を取り上げようとするひとりに、必死になって拒む素振りをみせながら――


「……どういうつもりだ……お前ら……本気でぶち殺すぞ」


 最大級の殺意の籠った言葉を贈るも、どこ吹く風。


 こんな時代だと言うのに時代錯誤も甚だしい、校門前で生活指導に声を張りあげる――頭の悪さにおいては、こいつら3年とタメを張る体育教師に助けを求める視線を向けるも


 ……こいつらの普段の振る舞いが余程、手に余るのか。


 それはそっと目を背けられて――見事にスルーを決められてしまった。



 * * *



「おきゃあッ!?」


 校門で絡んで来た3年に連れていかれる体で、校舎裏に足を向けると――とりあえずさっきのアホは、すぐに感電グローブの餌食にしてやった。


「流石は橘くんだ……容赦がねぇ」


「ああ、ホント……やっぱり、とんでもねぇ御人だったんだな」


「俺……マジで……橘くんについてく」


 なのに仲間一人が酷い目に合わされているにも関わらず――コイツら、俺をヨイショするのを止めようともしない。


 あまりの気持ちの悪さに――俺の中のドス黒いものが、むくむくを起き上がる。



「登校するなり……新しくグローブに組み込んだ、パブロフ(装置名)のテストに協力してくれたのは……嬉しいけどな。


「一体全体……どういった風の吹き回しだ。なにを企んでる?


「お前ら如きが俺をハメれるとでも思ってるなら……大間違いだぞ


「……最後に……もう1度だけ聞いてやる


「口を開く気が無いなら、全員……ピラニア溶液で処分だ」



 殺気立つ俺の様子に、3年のひとりが泡を食って場の取り繕いにかかる。


「ちょ!? ちょっと待って?! 橘くん! 橘くん!? 浮かれ過ぎちゃってたのは……謝るから! 謝るからぁ!?」


「……俺が……お前ら如きの謝罪を……求めてるとでも思っているのか」


 ばちんッ!


 今日みたいなことが、この先もある事を想定して組み込んだ新しい装置「パブロフ」


 感電グローブを必要に応じて、単なるスタンガンに変える――威嚇のための、デモンストレーション用スパークと音を、大仰に発生させることができる様にしただけの……なんの事はない、虚仮脅しのための装置。


 これを……2学期早々、使う羽目になろうとは。


 ばちばちと派手に音を立てて、指の1本1本に纏い付く電光に顔を青くする3年たち。


「橘くんの! 橘くんのォ!!? 夏休みの武勇伝知って舞い上がっちゃったんだよォ! 許して! 

許してぇ! ピラニアは! ピラニアの水槽はイヤぁーーーーッ!!」



 * * *


 

 ピラニア溶液、またの名はピラニア腐食液。


 混合比は様々。


 しかし、概ね――濃硫酸に過酸化水素水を加えた代物。


 強力な腐食性を発揮するためアンダー・グラウンドでは、これを用いて人知れず死体を処理する業者や、居るのだとか居ないのだとか……。


 CO2排出の観点から考えると、荼毘にふすよりも環境負荷が少ないのだとかで、類する薬剤を用いての新しい、お送りの形として西側諸国で採用され始めたという話も無いではない。


「ピ、ピ、ピ……ピラニアって?! あ、あれだべ!? 牛とかマッハで骨にする魚だよな?? イヤだァ! そんな おっかねぇのはイヤだァ!!」


 ――なにかを盛大に勘違いしているらしい、3年が騒ぎたて始めたけれど……。


 俺が口にしてしまったピラニア溶液は、断じてそれじゃあない。


(昔の映画で……そんなシーンもあった様な気もしないでもないけど、お前らなんか食わせたらピラニアが可哀想だ……不味かろうに)


 こちらの機嫌を損ねてしまった結果、小魚の群れに啄ばまれて……骨に代わってしまう自分たちでも思い浮かべてしまったのか――3年たちは、怯えに怯えていた。


(……想像力、逞しすぎないか?)


 こいつらが、さっき口走った俺の『夏休みの武勇伝』


 思い当たるのは田舎での一件以外、他にない。


 正直なところ、それだったら公になったなら なったところで……といった程度のものでしかないにしても。


 悪目立ちの種にしかならない気もする この話。


 一体どこから、こいつらが知ることになったのかくらいは知っておきたい。


 考えつくのは、澪が話したと言っていた一ノ瀬さんから漏れた線だけど……あの人見知りな彼女が、こいつらなんかを相手に、愉し気なおしゃべりに興じるだなんて想像もできない。


「ちょーしくれたのは! マジごめん! マジでごめん! 謝るから! 謝るから橘くん! 許して! 許してぇ!!」


 ハッタリをかけるにも、リアリティを持たせるために……あった方が良いと踏んで用意した――機能を拡張した新しいグローブだったけれど、どうやら脅しが過ぎたらしい。


 お陰で話を聞き出そうにも苦労する有様で……2学期の初日にも関わらず俺は、2時間近くもの間。


 無駄過ぎる手間を食わされることになってしまった。

いつもブクマ有難うございます。


宜しければ、お読み下さった御感想や「いいね」


その他ブックマークや、このあとがきの下の方に

あります☆でのポイント


それらで御評価等戴けますと、それをもとに今後の

参考やモチベーションに変えさせて戴きますので


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ