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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
三章:モラトリアム

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刀剣鑑賞会 in バスの中 【Picture】

 渡されたものをどうしたものかと持て余し、お爺ちゃんの言葉を待っている内に――遠くに姿を現したバスを目にして澪が声を上げた。


「お前が考えてるみてぇな……しょうもねぇ使い方をするんなら、そいつぁ……単なる骨董よ。そういう使い方するんなら……他にもっと気の利いたものが……色々と思いつくのがお前ぇじゃねぇのか?」


 お爺ちゃんとお婆ちゃんには、隠し通してきたライフワーク。火遊びを見透かされでもしていたのかと――ギョッとして息を呑む。


 けれどもお爺ちゃんはそんな俺の反応なんて気にも留める様子も見せずに、これについてを話してくれた。



「あの可愛げのねぇ……いっつも小難しい事ばかりで、頭ん中ごちゃごちゃさせてる――なに考えてんだか分かりゃしねぇ、お前ぇの母親は……こいつを笑ったっけな。


「『鑑定士なんて胡散臭い人たちやら……先祖とかいう顔も知らない人の言ってたことが、あてになるの?』


「……ってよ」



 * * *



 記憶にある――如何にも母が口にしそうなこと。冷笑を浮かべた顔と共に、その場面が再現された。


「とはいえ、まぁ……女にとっちゃ刃物なんてよ? 包丁だ鋏なんかと同じで……切れりゃいいだけの道具だろうし。そんなもんか……と思って、しょぼくれて片しといたんだが……あのバカ娘。ある日、帰ってくるなり勝手に持ち出してたそれを、ポンと投げて寄越しやがってよ。


『どうやらそれ、本物みたいだわ』


「……だと」



 その時のことを思い出しているのか――お爺ちゃんが……滅多に見せない、柔らかな表情を浮かべる。



「あいつが一体、全体……大学の研究室で、どんな研究をしていて――そいつをどんな風に……あいつが納得する形で調べたのかは……分かりゃしねぇが。……刀身に使われている鉄自体は、介者剣術やら甲冑組打ちなんてものが、華々しく世に登場するより遥か昔。


「奈良か飛鳥時代頃か……、それ以前の時代に造られた鉄で、間違いねぇんだそうだ。


「奈良だったり京都だったり……あとは九州の日田なんてところでも、古い建物を取り壊したり建て直したりする時にゃ、古い釘やら かすがいを求めて宮大工たちが群がる……なんて話も聞いた気もしねぇでもねぇ


「――その刀身がそんなに古くから遺っている物なのか……その時代の太刀なり槍なりを擦り上げて造ったもんなのか、潰した鍋鎌から造り出されたものなのか


「……そもそもアイツの見立て自体が間違っているのかは――分からねぇけどよ。


「古い鉄ってものは、特別な組成をしてるって話も聞くわな。


「お前ぇは俺なんかと違って賢ぇんだ……くれてやったそいつぁ、埃被せようと潰しても構わねぇから――俺も冴子も考えもつかねぇ様な使い道に使え」



 * * *



 お爺ちゃんと、お婆ちゃんが見送ってくれたバスの中。


 ほかに客も見当たらない車内で、女子三匹は一番後ろの座席を陣取って、話に花を咲かせ始めていた。


「――お風呂……ふっつぅ~……だったね」


「ああ、わたしも……なんかこう……もっと昔話に出てくるみたいな薪で沸かす、お風呂期待してた」


「お婆ちゃんが言ってたけど、くーちゃんが生まれる3年くらい前までは……たしか……、――ご、ご、ご? ……権……兵衛? あっ?! 拷問! 拷問風呂だ! ……って、お風呂だったって聞いたことがあるよ?」


「ご……拷問?? ってアレか?! 斬鉄剣の人で出汁とって殺して……釜揚げうどんにしたってお風呂か!?」


「うん! 多分それ!! でも、それで……おうどんできるのかなぁ……昔の人って凄いね♡」


「ぅうおお……は、話のタネに入ってみたかった奴……これでもJCの端くれ。その手のマニアが泣いて喜ぶ美味しい出汁を……身体中の穴という穴から、垂れ流してやったものを……無念っ!」


「穴という穴からってのは……ちょっと、どうかな澪さん。……、――ふ、ふひっ♪」


 恐らくは……五右衛門風呂の事を言いたいらしい、一から十まで間違ってる女子たちの会話を聞き流し、お爺ちゃんに渡された包みの紐を解く。


 顔を見せたのは職人の技が光る拵えを纏った――馬手差し(めてざし)


挿絵(By みてみん)


 鞘に備えられた当時の髪結いのためのアメニティ。耳搔きのついた(こうがい)


 目釘を隠す目貫きなどには、我が家の墓に刻まれた家紋。


 鍔迫り合いでの手元の防護のため……という目的よりも、突き刺すための力を乗せるためだけにあるらしい、小さな――しかし、一切の妥協無く制作された鍔。


 一応、注意を払って車内を見回し――死角に居る事を改めて確認して。


 身を小さくして鞘を払ってみれば、冷たい鉄の地肌も美しい――太く短く鋭い……組討ちで相手の甲冑の帷子部分を貫くための刃が姿を見せた。


 定期的に発生しては社会を騒がす走行中のバスでの刃物による凶行。


 そんな頭の程度も知れる様なことを起こすつもりなんて……毛頭無いけれど。人に知られでもしたら避難を浴びること必死な、到着するまでの刀剣鑑賞。


「――でも、あれッ! あれ超ォ美味しかったよね?! あの白い小さなトウモロコシ。食べると……もちっ! もちっ! ってしてて、スーパーの黄色い奴みたいな……あからさまな甘さが無いの!」

いつもブクマ有難うございます。


宜しければ、お読み下さった御感想や「いいね」


その他ブックマークや、このあとがきの下の方に

あります☆でのポイント


それらで御評価等戴けますと、それをもとに今後の

参考やモチベーションに変えさせて戴きますので


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。


うぷ致しました馬手差しですが……。


黒の背景に、黒鞘は止めておけば良かったと

後悔しております。


磨かれた漆塗りの黒を表そうと、雑に光沢を

入れたせいで鞘が湾曲している様に見えますね。


鞘も刀身も真っ直ぐな刃物だけに、失敗とです

(´Д⊂ヽ

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