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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
三章:モラトリアム

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聖域

 お爺ちゃんの家にやって来て数日が経過。


 作業の合間を盗んで、こそこそと機械に触れるような真似はしないでも――旋盤工を引退して久しいお爺ちゃんは、工場に顔を出すことはほとんど無かった。


 誰に、なにを言われる事も無く、工場(こうば)の機械たちを喚かせ続けることができる至福のひととき。


 俺は夢中になって、鉄を貪り食う怪獣たちと戯れた。


 工作機械の刃がステンレスの丸棒に触れるや、ねじれた金属の削りカスが次々と手品か魔術かといった風に生み出される。


 この夏休みに予定していた、ガウスライフルで発射するための400系ステンレス製、実験用磁性体弾120発の削り出しはあっと言う間に……それこそ欠伸をする間すら無く完了した。


 そんな訳で勢いに任せて――最終的に削り終えた磁性体弾は計2400発。それに加えCURVE(カーヴ)用にライフリングも備えた銃身に、興味本位で作りたくなった閃光手榴弾用の外殻。低腔圧の拳銃弾に用途を限れば実用に耐えそうな薬莢360発分。


 これだけあれば当分の間、実験するにも――お遊びに用いるにしても充分。


 MC(マシニング・センタ)によって棚ぼたで獲得した工作能力に俺は有頂天絶頂。


 さらに嬉しい事は重なるもの。


 我が物顔で俺が工場を占拠している合間に片隅に置かれていた段ボールを漁ってみれば――出てきた物はアシスト力40キロ強、空気圧作動式のパワー・アシストスーツ数着。


 家の縁側で詰将棋に興じていたお爺ちゃんに、それについて訊ねてみれば――なんでも近所の介護老人ホームで使われていた代物だったものの


 エアが抜ける動作不良を修理して欲しいと、お爺ちゃんを知る御仁から工場に持ち込まれたらしい。


 けれど流石のお爺ちゃんも門外漢のスーツに……さて、どうしたものかと考えあぐねている内に――普段から職員の確保の問題で運営に支障が生じていた依頼主のホームの所長が、運営資金を持ち逃げして消えてしまったのだとか。


 預かった数着のスーツも安いものではないだけに、これをどこに引き渡したらいいのかも分からず、放り出したまま数年が経過していたのだという。


(俺の夏休みの工作は……決まった)



 * * *



「澪ちゃ! イオナちゃ!」


 バスから降りた2人の姿を目にするなり、千影が駆け寄って行く。


「く、くおォッ?! ま……まばゆいッ! まばゆ過ぎてじょ……浄化されるッ! 太陽照り付ける長閑(のどか)な田舎の緑の風景の中――キャンバスの塗り残しのような……白のサマー・ワンピを着こなす千影ママのお姿と……今すぐにも子育てにも耐え得ると無言で訴えかけてくる――おっぺぇの暴


「なんという……なんという……破壊力。それに加えて……


「『ご両親へのご挨拶なんて、とうの昔に済ませましたが……なにかぁ?』 と、云わんばかりのえげつないまでの……正妻力……


「ぅ……う、うおあキャあああああああぁぁッ!! わ、わ、わたしも……わたしも! こ、こんなおっぺぇに生まれたかったんじゃぁああァッ!!!」


(猿みたいに叫ぶな……この辺りは山彦になるんだって)


「イ!? イオナちゃ! あ、あとママじゃないもん!」


「ごめんよ……千影。女子に毎年毎年、夏休みのたびに学校から『工作』なんて無体を要求されさえしなけりゃ……2人っきりにさせてあげられたんだけど……片手間でいいから蔵人貸して貰いたくてさぁ。でないと……でないと……また夏休み明けには……教室の中は……女子たちが持ち込むペットボトル――()()()()()で埋め尽くされて……何度も何度も再提出って名前の不毛過ぎる地獄の無限ループに呑み込まれるん……よ」


「そうだね……女子はみんな……お裁縫ダメな子は……ペットボトルで造った風車か水車か……お船かで被っちゃうもん……ね」


 毎年の夏休み明けの地獄模様を思い浮かべて――澪と千影が暗い顔。


「大体さ? 女子に工作やってこいってのが分かんなくね? 女子のきゅーきょくの目標は、イイ旦那さんみつけて、お嫁さんになって食っちゃ寝することだっちゅーの。工作とかなんとかは、旦那にさんにやって貰うもんだろうがッ! ……て、思わね? 私はそう思う。女子が手に怪我とかして、傷が残ったりしたら責任取れんだろうな? おォん? って、私ゃ声を大にして訴えたい!」


「い、意外と古風な考え方の持ち主だよね……澪ちゃんって」


「そんな訳でさァ……こんな場所にまで押しかけちゃった訳だけど……ほんとゴメン。コイツ(イオナ)とかマジ連れて来るつもりはなかったんだけど……なんか勘付かれてさぁ。まァ絵ぇさえ描かせてさえいりゃ大人しくは……してると思うからさ勘弁して?」


「うぅうん♪ くーちゃんのお婆ちゃんも、賑やかなのは嬉しいって言ってくれてるから心配しないで大丈夫! すっごく可愛いお婆ちゃんなんだよ♬ ――ん? あれ? ……そういえば一ノ瀬さんと柊先輩は?」


 こいつらどれだけ声をかけて周ったんだと一瞬、気を揉んだものの……どうやら杞憂の様。


「柊先輩は、家のバイトが忙しいんだってさ。なんか――なんとか? ……って? ヨーロッパ・ブランドの欲しいものがあるとかなんとか……。靴だったか、ネックレスだったか。すっげぇ野太いた声で『休みなど……要らぬッ!』とかって言ってたから――」

いつもブクマ有難うございます。


もし宜しければ お読み下さった御感想や


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お手数では御座いますが、何卒宜しく

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