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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
三章:モラトリアム

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そしてバカなお前は……この手から逃れるチャンスを失った

 折角の空気を台無しにするかの言葉。


 幼い頃から抱き続けてくれた千影の想いを――突き放すような


 俺が口にしてしまった内容に、思い返すまでも無い……いくつもの類例を


 記憶に思い浮かべるのか、千影が口をつぐむ。



「……そんなんで良いのかよ? 俺は……俺や、お前をほったらかしにしてきた大人たちと、なんら変わらない奴にしか成れないんだぞ?」


「くーちゃんは……絶対、そうならないもん」



 拠り所も何もない、意固地になっての――ただ口を吐いただけの否定かと思った。



 この後は、お決まりの()()()()が開始されるに違いないと……内心、後悔して


 どうやって こいつの機嫌を直させようかと、不実に考えを巡らせてみれば


 そんな事一顧だにもしないような


 俺の目に焼き付けるみたいな笑顔を浮かべて――こいつは。



「寂しいのは嫌だけど……くーちゃん、お薬屋さんのおにぎりばっかり食べてイヤになって、ちゃんとしたご飯食べたくなったら――絶対に、私のところに帰ってくるもん」



 揺るぎない確信を口にした。


 

 * * *



 統計的データに基づく……いや、そんなものでは到底言い尽くせない、こいつの俺に対する――異論の挟みようも無い、完璧過ぎる行動予測に


 声を上げて笑ってしまいそうになる。


 思えば、ドラッグストアのおにぎりに対する……俺の根深い失望は


 大昔に、こいつと喧嘩した際に買い込んで来たレパートリーの――そのいずれもが


 事在る毎に、いつも千影が小さな手で握ってくれた、塩と味付け海苔だけの


 おかしな形をした……それに


 どれひとつとして及ばなかったことが――原因だった事を思い出す。


 隠しようも無く、肩を振るわせて笑う俺に


 むくれる千影。


 ここで、こいつの機嫌を損ねてしまえば……目も当てられない。


 本当に一週間と云わずに ひと月は。


 あの保存料が香る、おにぎりの世話になる覚悟が要る。 



「……じゃあ、気の毒だけど――色々と諦めてくれ


「あと、あんまり下らん心配の類とかもするな


「無駄だ……馬鹿馬鹿しい」



 先の笑いを何とか噛み殺して


 ここ最近の千影の心配事……だったかも知れない事柄を


 ――解消してやるべく、珍しく言葉を費やしてみれば







「く、くー……ちゃ……ん」







 浴槽から立ち上がった千影は


 嬉し気な声ひとつ、飛びついてきた。



 * * *



「おい、分かったから離れろ」


「……、――やだ」


「離れろって言ってんだろうが……察しろ。分かれ」


「別にいい」


「あと……苦しい」



 抱擁に音を上げて、押し退けようにも


 既に俺の首を捉えて、がっしりと決まってしまった こいつの腕から


 逃れるのは無理そう。


 仕方も無しに嵐が過ぎるのを待つみたいに、


 こいつの気が済むまでの間、されるがままに任せて――


 大人しく やり過ごす事に決めた。


 飽きることなく、俺の濡れ髪に


 頬ずりと口づけを繰り返す、こいつに


 好き勝手されている内に


 この……みっともない有様に、もくもくと立ち込める


 黒雲のような自虐の念が込み上げる。



「中学生の俺なんかが


「こんなことを……口にしてるなんてな


「世に出て、必死に毎日汗して


「社会を動かしている方々からすれば……


「さぞや、滑稽な……小僧の戯言だろうな――――……」



「どうでもいい……くーちゃん……、――、……好き」



 昔は毎日……挨拶か、なにかみたいに――他愛なく繰り返された言葉。


 こいつの口から好意を伝えられたのは、どれぐらいぶりの事だっただろう。


 

 ふたりして、ぬるくなった湯に気づいた頃


 漸く俺は、抱擁から解放された。


 一緒に風呂を上がって、パジャマに着替えると



 ――その夜。



 俺と千影は、幼い頃のままに


 随分と狭く感じる様になったシングルで


 仔犬の様に くっつきあって


 一緒に眠りに就いた



 * * *



 同好会の女子たちに見守られながら、


 手先に目線を落としてミシンを走らせ、


 家庭科室で小気味の良い音を響かせていた、一ノ瀬さんが手を止めた。


「……どう?」


 実のところ――理解に余る部分も、いくつかあった。


 自信の程を訊ねられたなら


 ……正直、微妙なところではあったけれど。


「問題……ないと思います。というか、私の家にある……業務用を思わせる、軽快さと滑らかさでした。しばらく使い込んでみないと、分からない点もありますけど……これを――その……橘くんが?」


 手元のミシンに視線を向けて――彼女が口籠る。


「うん? ああ。先日、千影と一緒に街でジャンクを扱う店をまわったついでに。捨て値で売られていた物を買って、ニコイチで修理した。コンピューターのプログラムに関しては得意分野ではあるけど〝縫う〟って言う技法については……針の運びからして全くの門外漢だから。そちら方面で、不具合があったりしたら、どうしようもなかったけど――でもまぁ……上手く修理できたなら良かったよ」

いつもブクマ有難うございます。


>千影と一緒に街のジャンクを扱う店をまわったついでに


これ、大嘘です。


街のジャンクを集めたところで

どうにもなりません。


それどころか、高い買い物のハズなのに

修理をメーカーに依頼しても


「――申し訳ありません。部品のストックも、もう無い状態でして」


と、サービスセンターから面倒くさそうに


(……ちっ、修理とか言ってねぇで買い替えろよ)


そんな心の声が聞こえてきそうな

感じで扱われるのが関の山です。


きっと、主人公は街のジャンク屋ではなく

ネットのオークションなんかで


捨て値の同年式、同メーカーのミシンの

ジャンクを掻き集めたに違いありません。


とはいえ、それでも普通は修理とかできる

ような代物じゃねーです。


ハイ(´Д⊂ヽ


使い慣れた頃に壊れるんですよなぁ……。


でも手間をかけたとなりますと彼女

気にし過ぎちゃうからね


仕方ないね。


もし宜しければ お読み下さった御感想や


その他にもブックマークや、このあとがきの

下の方にあります☆でのポイントに代えて、


御評価戴けますと、それを元に今後の参考や

モチベーションに変えさせて戴きますので、


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

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