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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
三章:モラトリアム

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あの頃のように ふたりで入浴を

「なんだか久しぶりに、くーちゃんとお風呂入りたくなったんだもん」


 その声は、底なしに無邪気な


 俺の記憶にある、昔から変わらない幼馴染のそれ。


 ――髪を洗い終え


 注意深くアングルに注意を払い、俺が浴室から逃げ出そうとするのを


「ダメ。夏でもちゃんとお風呂に浸からないと、お肌乾燥しちゃうんだよ?」


 気配で察した千影が、ぴしゃりと言い放って――引き留める。


 そして浴槽へと俺を追いやると、奪い取った椅子に悠々と腰を下ろして


 今度は、こちらの事なんて気にする様子も見せずに、悠長に自分の身体を洗い始めた。


 男女混浴の――温泉的な発想の産物、水着でも着て来たのかと思えば


 この考えなしには そんな小細工、思いつきもしなかったのか……それとも労する気すらも無かったのか


 俺と同じくタオルひとつ、身体に巻いていなかった。


「……♪ ……、――♬ ……♫」


 ――目のやり場に困りながら、観念して浴槽に浸かっていると


 愉しそうに歌う千影の鼻歌が浴室に響く。


 イオナのチャンネルの動画撮影の折りに


 布面積が小さいと大騒ぎした、アレはなんだったのか。


 いくら俺が、幼馴染だからって、


 そこまで気にせずにいられる理由は、一体なんなのか――


 端的に申し上げて……もはや、こいつの考えていることが理解できなかった。


 毎朝の日課のお陰で、見慣れてしまった感も強くあった


 規格外のサイズの千影の胸。


 ボディー・ソープに塗れて揺れるさまを


 まんじりともしないまま


 気が付けば目で追ってしまっていたのは……


 俺の人間性の拙さが原因なのか。



 * * *



「……昔は、くーちゃんに手を掴まえて貰って……バタ足の練習してたのにね」


「お前が、なにを考えてるのか……もうさっぱり分からん。お陰で見ろ。さっきまでは、ゆったり脚を伸ばして風呂に浸かってたのに――なんで、おまえと一緒に体育座りで並んで……風呂に入らにゃならんのだ。浴槽の広さを考えれば分かるだろ? ココお前んちだぞ? お前んち」


「えへへッ くーちゃんに怒られちゃった」


 小言を繰り出したところで、一向に堪える様子もなく千影が笑う。


「……まさか本当に、入ってくるとか」


 こぼしてみたところで、後の祭り。


「恥ずかしがって入って来ないって思ったんでしょ? 残念でした♪ くーちゃんと、お風呂に入るかどうかなんて――コースのカーヴに突っ込んで行くよりも楽勝なんだ♫」


 御馳走になった老酒(ラオチュウ)蒸しに、微かにアルコールでも残っていて――それに酔っ払ってしまっているのではと


 ……疑わざるを得ない程の千影の上機嫌。


 だったら今日まで、一緒に風呂に入らない様にしてきたのは、


 一体なんだったんだ? と、皮肉のひとつも交えて……呈してみたくもなったけれども。


 こんな調子では、まともな答えが返ってくるなんて無いに違いない。


 次第に言葉を返すのにも面倒臭くなって――


「ひゃくいち、ひゃくにぃ、ひゃくさぁん、ひゃくよん……」


 湯に浸かって愉し気に数を数える――暴君と御成りにあそばされた こいつから


 解放されるのを待ちつつ、浴槽で膝を抱えて小さくなると


 春先からの……俺たち、ふたりの毎日の中


 こいつとここまで、水入らずで


 他を気にすることなく、過ごせた時間が無かった事実について


 俺は、ぼんやりと考えていた。


 この家と、そして隣り合う――俺の家。


 狭い、潮溜まりのような世界の中だけで完結していた


 引っ込み思案なこいつと、人と慣れ合うことを煩わしいものと考えてきた


 ――俺の ささやかすぎる毎日。


 思えば、分不相応に


 騒々しい毎日を……ここ最近、送り過ぎたように思えないでもない。


 小さな頃から、俺と結婚すると言って聞かなかった……こいつの事。


 千影の この良く分からないテンションの源は、


 ここ最近の目まぐるしい環境の変化によって もたらされた


 不安の裏返しなのか。


「……千影」


「なぁに? くーちゃん」


 ぼんやりと呼んでみれば、さっきまでと変わらない嬉しそうな声。



「――夏休みになったら、ふたりで……俺のお爺ちゃんの所に遊びに行こうか。お婆ちゃんも、きっと喜ぶ」



「えっ?」



 俺の提案に――驚いた声。


「まぁ……来年はお前、高校受験だし――都合が悪いっていうなら」


「行くっ! 絶対に行く! 川で泳ぎたいし、お婆ちゃんの畑の……真っ白な、小さなトウモロコシもまた食べたい!」



 ……まさか、こいつが



 こんなことで、ここまで嬉しそうな反応を見せてくれるとは思いもしなかった。



 湯にのぼせた気怠さに、浴室の壁に頭をもたれさせ つらつらと――



「あとな……俺は、


「お前以外の人間と、付き合ったり


「――ましてや、結婚だ……なんだのなんて、


「まぁ、気の早い話でしかない訳だけど……無理だと思ってるし、


「想像するだに、面倒臭いとさえ思ってる


「……正直、実際のところ


「イメージすら微塵も沸かん――


「……こんな心底ロクでもない俺の


「なにが良いのかは、まるで理解もできないけど――……


「一緒に居ても……お前を構いもしないことだって


「今までにだって、沢山あったろ?」

いつもブクマ有難うございます。


もし宜しければ お読み下さった御感想や


その他にもブックマークや、このあとがきの

下の方にあります☆でのポイントに代えて、


御評価戴けますと、それを元に今後の参考や

モチベーションに変えさせて戴きますので、


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

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