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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
三章:モラトリアム

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針姫の業と黒衣

 予想はできていた その返しに――どう、言って聞かせたものかと頭を悩ませながらも、肩を上げ下げしてみれば


 学生服の肩口から、袖にかけて――ゆったりと仕立て直された制服が、寸分のツッパリも違和感も無い、今まで以上の軽さとなって感じられた。


(中学生……女子の仕事とは、とても思えん)


 職人の果たした仕事に対して、対価を支払わないというのは……なんとも心苦しい上に、おさまりも悪い。


 なんとか彼女に報酬の支払いを受け取っては貰えないものかと、願ってみた訳だったけれど――彼女は これに対して


「橘くんたちは……お友達だから」


 と、頑として……受け取ってくれる そぶりを見せてはくれなかった。


 下腕部外側部分に……重ね合わせたカーボン・メッシュのシートに、ポリカーボネイトを充填して、耐衝撃吸収ゲルを組み合わせた装甲パネルと、装置の袖の中での干渉を防ぐために追加したカイデクス(樹脂素材)製のカバーにより


 肥大し続ける装置を、学生服の袖の中に収めるのは既に限界に達していたこともあって、彼女の裁縫の業に一縷の望みを託した次第だったけれど……


 出来上がったものは、シルエットを微塵も崩しもせずに……極めて自然に仕上がった――信じられないようなモノだった。


(……できたら……千影の下着や、制服にも手を加えて欲しかったんだけど……頼み辛い。――に、しても……)


 袖口を気にする必要もなく飛び出させる事が可能なリトラクタブル(伸縮式)・ブレードのご機嫌な動作音に、思わず笑いが零れそうになる。


「……3年のあいつらじゃあるまいし……俺が改造学生服を着るようになるなんてな」


 思わず口をついてしまった言葉に、一ノ瀬さんが泡を食う。


「ご、ごめんなさい! ……ど、どこか……気に入らないところとか……あった……かな」


 生真面目な彼女の側で、配慮に欠けることを呟いてしまったものだったけれど……彼女の仕事に対して不満らしいものを敢えて上げるとすれば――


 それは俺が手を加える必要性皆無な、完璧な仕事をしてみせた上で、報酬を受け取ってくれないと言うことをおいて他にない。


 俺の口から飛び出すクレームに備える様に、身を固くする彼女の様子に苦笑を噛み殺していると


「ところでさ? 蔵人。今から……じきに夏な訳だし? その……夏を先取りし過ぎて、胸を刺激しちゃいそうな……」


「うん、立体起動装置で吊られるんかい! って、思ってた……」


「――その……シャツの上に着つけた それは……なんなの?」


 澪とイオナの二人が、共に疑問に思っていたらしい――俺の新しい装置について、不思議なモノを見る目で訊ねられていた。



 * * *



「これは……プリテンショナー付きリトラクターを――えぇっと、だな……自動車事故の際にシートベルトの弛みを……瞬時に火薬の力を利用して、巻き取る装置があるんだけど、それを組み込んで作った……う~ん、なんて説明すりゃいいんだ……」


 運ばれてくる料理を待つ間の余興程度に訊ねられたに違いない、質問に頭を悩ませていると、澪とイオナ――そして、この装置の制作に一役買ってくれた一ノ瀬さんが、こちらに視線を注いでいた。


「発想は……俺のモノな訳では無いんだけどな。作ってみたくて作った……といったところか? 一時期ネットで少し話題になって、それっきりなんだけど……米軍が開発を試みていたっていう……人体の負傷をバイタルで検知すると、止血点上の このベルトがきゅッ! と締まって、出血を抑制する……っていう装置でだな」


「……しゅ、出血?」


 俺から飛び出た剣呑な単語に、顔色を曇らす一ノ瀬さん。


 それを直ぐに汲み取って、さもバカ話であるかの様に――澪が俺をからかう。


「あ~、要るわぁ……それぇ。蔵人みたいな、人生送ってたら、絶対そういうの必要だわぁ。要る要る要るぅ」


「……俺を粗忽者みたいに言うんじゃない。こう言う日常とは まるで関係のない、非日常で必要になる装置を作るのが愉しいんだろうが」


「使うじゃん……蔵人、絶っ対……それ使うじゃん。使いこなすじゃん。わたしには見える! 遠くない未来にそれを纏って……また、大立ち回りを繰り広げてみせる蔵人の姿がッ!」


「……だな」


「……おまえら。でも、まぁ……とはいえ。散々、猿山のサル共と思ってきた3年連中や、しばらく前の夜の集会に集まってた――脊椎反射で、よく考えもせずに……見切り発車で行動を実行に移す、あいつらと。頭に浮かんだものをひとつずつ実際に形にして、テストを繰り返して改良を行うことで悦に浸る俺との間に。差は無いのだろうから――残念ながら、お前たちのご意見も御尤なモノだ……悔しい限りではあるけれどな」


 そして、いつも通りに好き勝手に――面白おかしく俺を弄り出す、澪とイオナ。


 ふたりの様子とは対照的に、何事かを考える一ノ瀬さん。



「しかし、まぁ……俺が車の廃棄場で貰い集めたシートベルトの裁断も、


「その裁断面の……裁ち目かがりだっけ?


「それを一ノ瀬さんが引き受けてくれたからこそ、完成に漕ぎつけられた訳だ。


「頭の中で纏めきれなかったアイディアを形にする事ができた今、


「……俺は、大変機嫌がいい」

いつもブクマ有難うございます。


このお話で登場する出血を抑制する装置。


以前は、わりと話題になっていた気もしますが

最近は全くネットでもお話にでてきません。


やっぱり、使い勝手が悪かったんでしょうか。


もし宜しければ お読み下さった御感想や


その他にもブックマークや、このあとがきの

下の方にあります☆でのポイントに代えて、


御評価戴けますと、それを元に今後の参考や

モチベーションに変えさせて戴きますので、


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

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