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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
二章:アウトサイダー

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ねりひばりにして……やる!

 窓の外から聞こえて来る姦しい3人の声に、滅入っているところに家庭科の先生がやってきた。


 実習で食中毒を発生させた責任を追及されているのか、表情は心労の色が隠せない。


 席を立って、先生に礼を傾けると……



「あ、あ……まぁ、気を楽にして? ショックだったかも知れないけれど……蔵人くんが悪い訳じゃないから」



 そう言うと先生は、力のない痛ましい笑顔を浮かべる。



「心中……お察し申し上げます」


「……ありがとう、本当に僕も泣いちゃいそう――いかんいかん。そんなことよりテストだよね」


「はい」


「とは言っても、実習は班での共同作業を見るような類のものでしかないから……お義理程度の文章問題に――」



 そこ……ぶっちゃけられても宜しいので? と、思わず問い返したくなるような胡乱な一言を口にして、安心させようとして下さっているのか……先生は必死に繕った、柔らかな笑顔で続ける。



「――あとは、楽しく……みんなで料理してくれたら、それで点はあげられる程度の内容でしか無いから、心配しないで」


「……はい」


「補習って言うよりも実質、追加テストの内容なんだけど……職員会議の結果、もう当分……真空パックでも生モノは止めにしようって事になってね? 献立は――ご飯と、お味噌汁だけ……寂しいけど、お願いできる?」


「か……かしこまりましたッ!」


「ん? ど、どうしたの? 橘くん?」


「な、なんでも……なんでもありません。なん……でも」



 * * *



「……んーでもさ? お菓子作りケーキ作りは化学だ! ってキャッチ・コピーみたいなのもあるじゃない? あんま……わたしには蔵人が料理できないようには思えないよママ」


「そういうレベルじゃ……そういうレベルじゃないんだよ……イオナちゃ。あと、ママじゃないもん」


「どうしよう……千影。あんたと蔵人には悪いけど、なんだか私楽しみでしょうがないわ……やッべ♪ メスシリンダーとか持ち出して計り始めたりしたら……どうしよう。噴き出す自信がある」


「橘……くん?」


 窓の向こうに隠れて、面白おかしく俺の無様を笑う3人に視線をくれていると――俺の顔を覗き込んでから、窓の外に目を向ける女子の声。


 慌てて声の主に顔を向けてみれば、先日3年連中にイジられていた同級生の女子が――相も変わらない、気弱そうな顔でそこに立っていた。


「あの、先生の話聞いて……た?」



 * * *



「おおぅ……なんだかわたし……この学校の生徒ですらないのに……試食係に御呼ばれしちゃってんですけど。いいのか? てか、これって……他校の生徒だから……腹ぁ壊しても別にいっかぁ♪ みたいな話じゃ……ないよね?」


「どうしたん? 千影? どこかにメール?」


「……遺書じゃないけど……お母さんにメール書いてる。なにかあったら、夜の8時に送信されるようにして……」


「大袈裟すぎなぁい? 千影ちゃあぁん♪ ……え、ガチなん?」



 視界の外で姦しくされても、気が散って敵わない。


 担当の先生に窓の外の3人を審査係に加えては戴けないものか、試しに申し出てみたところ――意外なほどに……それはあっさりと通ってしまった。


 担当教師自らが、お義理程度の文章問題の……さらには、その――添え物か、付け合わせくらいにしかみていない


 調理実習の追加テストなんかに……果たしてそんな御大層なものが必要なのかどうかは、分からなかったけれども――ともあれテストは、そんな形で開始され


「……それじゃあ……先生さ。これからまた……この間の実習の件で怒られてくるから」


(……つらい)


「大して難しくもない献立だし……心配もしてないけど……あとで僕も試食にくるから、それまでに一ノ瀬さんと一緒に頑張ってね。お手伝いをお願いした彼女、家庭科同好会の会長だし……橘くんも安心してくれて良いから」


 先生は、先日の不祥事の件で、これからまた槍玉に突き上げられるのだ……といった。暗澹たる空気そのものをたなびかせて、実習室を出て行った。



 * * *



⦅ママぁ……ひそひそ⦆


⦅ママじゃないもん、ひそ⦆


⦅パパが知らない女子と、いちゃいちゃ仲良く おりょーりちてるよ? ぷしゅぷしゅぷしゅぷしゅ♪⦆


⦅…………⦆


⦅蔵人め……やりおるわい⦆



 視界の外で、あれこれ言われる煩わしさこそ無くなったものの


 一向に軽減されない3人の……げんなりする言葉と、好奇の視線。


 心強い……らしい。


 お手伝いさんと言うよりも一切合切、一部始終、一から十まで。


 ――の指示を一ノ瀬さんに仰ぎながら


 課題の献立に取り掛かる。


「て、手は……猫さんの手……手は……猫さんの手……」


 ダンッ!!


 味噌汁の具に使う、大根をカットする際に立てた、


 切断音に一ノ瀬さんが肩を竦める。



⦅なんだか……蔵人……やけに、ぶきっちょさんじゃね? 千影? なにがどーなってんのよ?⦆


⦅…………⦆



 外野の雑音を耳から追い出して、必死に具材の野菜と格闘する俺に


 一ノ瀬さんが耳打ち。


⦅……本当は、イケないことなんだろうけど……お味噌汁は、私が片づけるから……橘くんは、ご飯を炊いてくれますか? この間のお礼には……全然足りないだろうけど⦆


 この……情けなくも正直、不安しかなかった――本来、俺が一人で片づけるべき課題に対して


 彼女は背中まである、長い黒髪を揺らして はにかみながら


 助け舟を渡してくれた。

いつもブクマ有難うございます。


もし宜しければ お読み下さった御感想や


その他にもブックマークや、このあとがきの

下の方にあります☆でのポイントに代えて、


御評価戴けますと、それを元に今後の参考や

モチベーションに変えさせて戴きますので、


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

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