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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
二章:アウトサイダー

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なにもありませんでした

 漸く理解に至った何人かが、顔から血の気を失って膝を鳴らす。


 学校の校則なんてものを気にしながら、味も分からない煙草を吹かすのが精々の輩が――


 その結末の悲惨さにおいては、比肩するものもない〝薬物〟を摂取させられたという


 事実を突きつけられた訳だから、仕方も無い。


 もっとも、俺が彼らに振る舞ったフリスク・ケースの中身は、その凄惨極まる副作用で


 悪名高い……デソモルヒネなんて代物が含まれた物なんかでは無くて。


 ごく普通のスーパーの製菓コーナーで。


 ハロウィンの頃に見つけた――口にするには……ちょっと勇気が要求される、毒々しいカラーリングの単なるスプレー・シュガーに過ぎない。


 製造に大した手間も費用も掛からない薬物だけに実際、用意しようと思えば……できない訳でも無かったけれど。この群れなければ、なにもできない小心なアホ共が――


 青い顔して医療機関に転がり込もうものなら、事は大事になる。


 そんな訳で純粋に、戯言でしかない言葉を労してみた次第だったけれども。


「……ふ、ふかしだ! ……そんなヤベぇものだったら……テメぇが、口にするハズ……ねぇだらぁ?!」


 流石は虚勢渦巻く、威勢だけで序列が決まる 可哀想な生き物。


 見事に俺のブラフを看破して――みせたかに見えた。



「あぁ、御免。単に俺には効かないんだ さっきの奴。


「……いや、効かない訳じゃないな。


「それは語弊がある――効き辛いんだ体質的に。


「お陰で、眠れない夜なんかには……睡眠導入剤代わりに利用するようにしてるよ。


「人様には、全く御勧めできないけどな」



 我ながら嫌気が差す程に表情筋に欠ける顔で、淡々と嘘を重ねる。


 けれども、今日までの俺の振る舞いのいくつかを実際に目にしてきた 3年たちは。


 威勢良く噴き出しかけた その啖呵も尻すぼんで。


 ――なけなしのメンタルが、崩壊寸前の様子は、俺みたいな人間にも理解できるまでに達していた。



「禁断症状に苦しむ分量は、配合しなかったけども……まぁ、お気をつけて。


「ネットで検索すれば出てくるとは思うけれど、この薬物――兎角、副作用が酷い。


「心配する間柄じゃないのは……分かってるけど。


「くれぐれも今後しばらくは、他の薬の類に手を出すのは気をつけてくれ。


「アスピリンみたいなものだったとしても……どんな影響が出るかは……ちょっと、良く分からない」



 他人の人生に寸暇では済まない影響を与えながらも平然とする俺に、たじろぐ面々。



「……ああ、あと


「今後、俺に対してだけど。かしづいてくれたり……親し気にするのは無しで頼む。


「いや、これは……饅頭が怖い的な話では無くて。そう言った類の話じゃない。


「学校の中で悪目立ちしたくは無いんだ――社会的には、優等生で通っているからな これでも。


「そう言った訳だから……まぁ、これまでと同様。


「俺を目にした際には……


「節度を守って――今までのお前等らしく?


「俺を弄ったり、……メンチ切る……ってのか? 分からんけど。


「そうしてくれると有難い。


「こちらに煩わしい思いをさせさえしなければ、


「そちらの顔を立てる様に、心がけもするし。


「まぁ……兎に角、そんな訳で宜しく頼むよ先輩方」



 俺がそこまでを言い終えるや否や、3年生たちは我を争う様にして水飲み場の方へ駆けて行った。


 きっと今から、他の生徒の目なんてものを気にもせず――たらふく水を呑み込んでは、喉に指を突っ込んで嘔吐を繰り返す、見るも汚らしい……滑稽な催し物を繰り広げるに違いない。


 笑う膝が祟って、転びそうになって駆けてゆく――連中の背後を見送ってやりながら。


(……しまった。ここは、あれだ〝Welcome to Underground〟って、言ってやるべきところじゃなかったのか?)


 一時期、ネット界隈を賑わせたと聞いた、つまらないミームが、頭の片隅に浮かんで消えた。



 * * *



 とりあえずの釘は刺せた事だろう。


 懸念していた件もこれで、しばらくの間は問題無いハズ。


 そこから先の事は、……まぁ良く分からないけれど。


 その時は、その時。


 こうまで見事にブラフを頭から信じ込んでくれた連中の知能には、


 正直憐れみすら感じないでも無いけれど。


 微かに聞こえてくる水飲み場方面からの騒動の様子に。


 ひとつ息を吐いていると。


「……あ、あの」


 背後から女子の声。


 そちらを向いてみれば――俺と同じく、お世辞にも


 人との関りが巧みそうには見えない同級生が


 はたき終えたにも関わらず――皺が寄って、薄汚れた制服のまま


 おどおどとして……彼女の中では、きっと蛮勇とも言える


 ものを振り絞ったに違いない、そんな様子で俺に声をかけてきた。


「あ、ありが……とう……、――ござい……ました」


 自身に余裕なんてものも無いハズなのに


 俯いて、細切れに間の空いた礼を口にする彼女。


 女子一人、囲んで弄っていた連中の思考も理解出来なければ――


 されるがままになっていた彼女の思考も


 等しく、俺には理解し難いものではあるけれど。


 (いじ)り易いからと、ただそれだけで弄ってくる


 アホ共の煩わしさを思い描けば――


 まだ早い時期にも関わらず、耳元をかすめ飛ぶ


 やぶ蚊の羽音にも似て、鬱陶しさもひとしお。

いつもブクマ有難うございます。


この場面に登場しました……同級生女子。


彼女の外見、その他に関する描写は、

あえて控えました。


この手の事は、偏執めいたテクスチャーをこさえる

のを趣味としていたりするのですが

(生かせるとは言ってない)


……に、にちゃらせたかった。


粘度高めに。


にちゃらせた上で、主人公を

ドヤらせたかったんです……けど……も!


あえて……あえて……。


この場では、控えることに致しました。

(ノД`)・゜・。


とか、なんとか言っておきながら、

彼女の再登場 削ったりしたら 


どうしましょう。


もし宜しければ お読み下さった御感想や


その他にもブックマークや、このあとがきの

下の方にあります☆でのポイントに代えて、


御評価戴けますと、それを元に今後の参考や

モチベーションに変えさせて戴きますので、


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

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