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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
二章:アウトサイダー

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クラカヂール

 身(じろ)ぎひとつしないまま、表情を凍り付かせる3年生一同。


「……とは言ってもね。彼女の言った通りで、さっきの装置で大立ち回りってのも……疲れるし。なにより暑いしさ。おまけに今は時間が時間で、場所も場所だし……この間みたいに、ちょっと工作すれば後腐れなく、皆さんを殺処分できるって訳でもない」


 どうやら この場は免れ得る。ならば、その間になんらかの手立てを……と。


 淡い期待が皆の顔に浮かぶ。


「――だから今日は、こう言った物を用意してきた」


 ポケットから、取り出したフリスクのケースを振ってみせると、呆気に取られた顔が ぐるりと並んだ。


 ケースを開いて中から取り出した、小さなビーズ玉の様なサイズ感の――グレープ・カラーを皮切りに、暗い色合いばかりのラムネ菓子を手の平に出して、それを俺がバリバリと噛み砕いてみせると、皆の間に笑顔が戻る。


「お、驚かせないでよ……た、(たちばな)くん」


 ひとりが肺に溜め込んだ息を吐き出すと、それを機に――たどたどしく、乾いた笑いが拡がってゆく。


 手を出させてケースの中身を配ってやる段には、これを手打ちの盃的なものだと捉えたのか、


 一同は、揃って先程までとは打って変わった、清々しいまでの晴れやかな笑顔を見せ、俺に倣ってバリバリと噛み砕き始めていた。


「……はァ。マぁジで……ビビった。終わったかと思ったわ。てか、わりと旨いねコレ。ああ、うん……橘くん。さっきのアイツ……あそこで伸びてる奴と同じでさ? この間の事は――言わないでおくから……信用してくれて良いから」


 噛み砕いたものを呑み下して、気の利いた事を言っているつもりらしい ひとりの言葉に、解放されたみたいな空気が辺りに漂う。


「信用? 誰が、誰を?」



 * * *



 俺のこれまでの行動と、たった今――口にした言葉の意味が分からないといった様子で、固まる一同。



「……ああ。そう言う事……なの……か?


「つまりは俺が、お前たちに……


「先日の件を漏らされるのを心配して


「――釘を刺しに来て、仲直りを申し込もうと……


「ささやかながらも、心尽くしに


「たった今、菓子を振る舞ってやった……と。


「そう、考えた……のか?」



 噛み砕いた物を、誰かが呑み込む音が大きく響いた。



「申し訳無いけれど、俺はお前たちみたいな……


「野生動物の行動を信用する程、おめでたくも無いんだ。


「いや、野生動物ならまだいいよ……行動が読めないのは、変わらないけど


「人様に悪意を持つことはないからな」



 気配に視線を向けてみれば――校舎裏の緑地スペースの植え込みの陰から


 おどおどと、目には涙を溜めて姿を見せた2年の女子。


 悪を(ただ)すなどと言った、烏滸がましいことを思うほど


 自身を(わきま)えていない訳でも無いけれど。


 先日、俺を屋上に呼び出した こいつらの事。


 ()りる……というよりも、学習するという機能が


 根本的に脳から欠如しているに違いない。


 説明を聞くまでも無く、また〝弄って〟いた――と、まぁ。


 おおかた今回は、カマキリ女のプレゼンツあたりで、下らないお遊びに興じていたと


 そう言った所か。


 俺から滲む不機嫌の気配に、途端に場に戻る 


 曇天さながらの暗鬱の空気。



「――今、配って召しあがって戴いたものは……誠に申し訳無いけど


「アイスのトッピングに使われるスプレー・シュガーみたいな


「お菓子の類なんてものじゃ 断じて無い。


「デソモルヒネって、聞いた事は……、――ないか」



 飛び出した単語の意味は分からない様子ながらも



 その単語から感じ取れる響きと〝モルヒネ〟と言う語に、不穏を感じ取ったらしい ひとりが、ひと目で――それと分かる青い顔を再び浮かべる。



「デソモルヒネ。ジヒドロデオキシモルヒネ。大量消費国ロシアでは〝クラカヂール〟……クロコダイルって言う意味の俗称で親しまれ愛されている。


「……ま、気が向いたらググってみてくれ。


「これはオピオイド系の合成薬で……その強度は、良く知られるモルヒネの8~10倍の鎮痛作用がある。


「とは言え、こんな場所で飛ばれても少々……こちらの腹筋にも堪えて宜しくないし


「……先程、口にされた様な――極々、微量を含有する、混ぜ物だらけに加工した代物を召しあがって戴いた」



 3年たちの間に毒物……ないし、なんらかのヤバい薬物を口にさせられたのだといった、恐怖と絶望に囚われた表情が拡がり始める。



「作ること自体は……薬局で購入可能な咳止めの薬や、あとはガソリンなんかを使って、物凄く簡単に作れたよ。


「それを針の先に付着する以下の分量。


「……お前らが、ラリってしまわない様に配慮に配慮を重ねて。


「そして警戒して手を出して貰えないのでは……意味も無いから、


「味や香りに違和感が出ない様に――


「先程の様な形にまとめるには、本当に苦労をした。


「中々に骨のある……やりがい深い調合だったよ」



 * * *



 こちらの話から感じ取れる不穏さは……察するものの。


 内容の万分の一もできない3年生一同が、その場に立ち尽くす。


「つまりはだ〝この間の事〟とやらを吹聴したい――と、言うのであればだ。すると良いんじゃないか? こちらは、全く困らない」


 俺の言葉に、動揺を見せる3年たち。



「体内から薬物が検出される お前たちの言葉を……まともに聞いてくれる奇特な人がいるなんて思えないしな」


「お、お、おま、おま……そ、そ、そ……それって」

いつもブクマ有難うございます。


ここに登場しますデソモルヒネ。検索自体は

……構わないかも、知れません。


けれども画像を御覧になるのは、

全くオススメできません。


御覧になられることは強く、お引止めさせて頂きます。


もし宜しければ……お読み下さった御感想や


その他にもブックマークや、このあとがきの

下の方にあります☆でのポイントに代えて、


御評価戴けますと、それを元に今後の参考や

モチベーションに変えさせて戴きますので、


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

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