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処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
二章:アウトサイダー

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申し訳無いけれど、死の宣告

 幼い頃から大好きな遊び場のひとつだった、おじいちゃんの工場。


 とりたてて最先端の設備がある訳でも……今風の、小綺麗な工場と言う訳でも無い、あの油の回った――


 怪獣の様に大きな工作機械たちが静かに休む、


 照明には裸電球が、ぶら下がっただけの田舎町の小さな工場。


 硬い鉄を口に突っ込めば、それをモノともせずに。


 ガリガリ丸齧りにして、食い散らかす怪獣たちの唸り声に俺は夢中になったものだった。


 幼少期の原風景とも言える記憶。


 懐かしい思い出に しみじみと浸っていると


「……あ、あの? た、橘……くん?」


 捜し歩いた、お目当てのバカ面たちの……恐る恐ると、かけてくる声によって


 俺は現実に引き戻されていた。

 


 * * *



 給食後、昼休みになって。


 屋上での一件について、やはり釘を刺しておこうと、目ぼしい場所を捜してみれば――連中は直ぐに見つかった。


 場所は校舎裏のゴミ捨て場。


 自身の身の程を弁える非常に〝らしい〟その場所で。


 車座を組んで座り込み、はたして味も分かっているのかも怪しい……食後の一服を決め込んでいる最中のようだった。


 側で、なにやら揉めているかの気配が感じられるところから察すると……また誰かを囲んで、相も変わらない、おふざけに興じている輩でも いらっしゃるのか。


 そちらへと向かおうとして……ふと思って立ち止まり。


 装置の動作確認をしていたところ――こちらを見つけたメンバーのひとりが、殊勝にも挨拶をしてきた。


「……な、なんか……俺たちに……用……っす……かね?」


 どうやら先日、お友達を感電させられたせいか『今も現在進行形で、全身の筋肉に電流を流されています』とでも言うかの


 総身を委縮させるみたいにした精一杯の敬語。


(おお、凄いぞ。電気刺激を与えて訓練すれば――サルでも、ちょっとは……マシになるんだな)



 * * *



「そ、その……右腕のジャキン! って奴……す、凄いっすね」


 あの日、見た感電グローブに慄いているのかと思えば……どうやら装置の動作確認の方が、デモンストレーションとして機能していたらしい。


(ほんと、俺って……人の感情の機微って奴を捉えるのは……てんでダメだわ)


 その辺において、俺なんかでは……背伸びしても比肩し得ない、澪の姿が頭に浮かぶ。


 あの明るい髪色の女子の……こちらを揶揄(からか)う様な表情を思い返すと頬が緩んだ。


「なに? 2年じゃん? あんたら、なに敬語になっちゃってんの? ウケるんだけど」


 連中の陰に居たらしい、痩せギスな女子が煙草を咥えたまま――暢気そうな声。


 制服を見れば、どうやら彼女も3年のよう。


「「ば、バカっ!」」


 連中の何人かが、泡を食う。


「まァ……梅雨も、まだだけど――じきに夏だしな。みつけたカマキリを囲んで、小学生時代を思い返すってのも……分かるよ? 尻を水につけると面白いしさ」


「そ、そっす……ね……ははっ」


 俺の用いたカマキリと言う単語に、愛想笑いを浮かべてくれたのが、ひとり。


 そして その単語を聞くなり


 3年の女子は途端に不機嫌そうになるや否や


 車座になって座っていた連中のひとりの――ズボンの尻にでも差してあった……らしい。


 通販で買えそうな伸縮警棒を引っこ抜いて、威勢良く引き伸ばした。


「面白そうなオモチャ持ってたじゃん……ボクぅ~? おねぇ~ちゃんとぉ? あそぼぉ?」


「ば、ばか! や、やめろ!?」


 カマキリ女の行動と言動に、信じられないものを見る目で慌てる連中たち。


「なァんよ? あんなオモチャ持ってたからって、本当に刺せる訳ないっしょ? なにビビってんの……ダっサ」


 咥えた煙草を、携帯灰皿に仕舞う辺り……校則違反には気を使うと言う所なのか?


 警棒を小脇に挟んで、火を消す女子が薄笑いを浮かべる。


「あ、あほ……た、橘くんは! 橘くんは?! マジで! マジで洒落にならないんだって! ……い、いや、ちょ……ちょっと待って!? 言って……言って聞かせるんで!!?」


 連中にとって……先日の俺の行動は、余程ショックだったらしい。


 蜂の巣をつついたかの様に慌てる連中の様子を笑ってカマキリ女は、得意そうに警棒を片手に こちらに向かい


 ゆっくりと、歩を進めてきた。



 * * *



「ひっ!」 


 彼らの恐怖心を揺さぶるスパーク音に、皆が首を(すく)める。


 そして、ゆっくりと――時代劇の〝斬られ方〟の様に頭を3時方向に向けて、仰け反って倒れるカマキリ女。


 呻き声も上げずに目を剥いて顔を強張らせる、酷い表情。


「感電させられた奴の話は……聞いてなかったのか?」


 間合いが詰まったところで、左手の感電グローブを警棒へと伸ばした寸毫の間際。


 (ほとばし)る電撃が、彼女が手にしていた得物へと一直線に向かって飛んだ。


「俺みたいなのを相手にするなら、絶縁と気密を確保するくらいは……最低でも必要だと思うぞ?」


 見るに堪えない顔を、足の裏で転がす様にして――あちらの方へと向かせると


 その所作に対して……と、思われる。


 信じられないないものを見る視線に


 短い悲鳴と、喉を鳴らす音。


 すっかり怯えきった彼らに近寄ってみれば、その場の皆は、萎縮して立ち上がって


 ――直立不動。


 中々に話を切り出し辛い空気に……我ながら、ぎこちない。


 それでも精一杯の愛想笑いを――俺が浮かべてみせると、


 釣られて何人かが、引き攣った顔ではあったものの、微笑み返してくれた。



「ありがとう。


「先日の一件、誰にも言わないでいてくれて。


「実は……あれから色々と考えたんだけど――、


「一身上の都合で……大変、申し訳無いけど


「……やっぱり、先輩方には死んで戴こうかな?


「って、思う様になったものだからさ」

いつもブクマ有難うございます。


ヤンキー漫画で解決できない永遠の命題。


「中学生ヤンキーは学校では給食を食べている」


……ならびに。


「おうちでは、お母さんがご飯を作ってくれている」


を切り取りました(悪し様に)


もし宜しければ……お読み下さった御感想や


その他にもブックマークや、このあとがきの

下の方にあります☆でのポイントに代えて、


御評価戴けますと、それを元に今後の参考や

モチベーションに変えさせて戴きますので、


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

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