サウロンの影的な……ナニか 【Picture】
ふたりの会話の内容から察するものの、それがなんであるのかは……俺には、ピンとは来なかった。
「私と蔵人と、そこで面白そうに賑やかしてるバカで3:3:3で……残りの1が、千影って感じ?」
「えっ? ……ウソん。わたしも勘定に入ってるの?」
「…………」
何故か説得力溢れる、過失割合めいたものを告げる澪。
* * *
「……なんか最近、ヤベぇよな」
「なにが?」
「いや、兄貴に聞いた話……なんだけどよ?」
「おぉ」
「兄貴の先輩で、めっちゃ喧嘩強い人が居て……旧車會? とかって言う……昔の車に拘る暴走族的な? ……まぁ、そんな集団の頭張ってる人がボコられたらしい」
「ほぉ~ん。でもよ? そう言う人種って……漫画でしか知らんけど。喧嘩なんて、いつもの事なんじゃねぇの? 珍しい話なんか? それ」
「問題はよ。その……ボコられ方が普通じゃ無かったらしいんだわ」
「なんだよ それ?」
「なんでも爆弾で……皆殺しみたいなノリだったらしい」
「ふあっ?!」
「つっても、だとしたらこの話、誰から聞いた お話なんだよって……夏の怪談話みたいになっちまうんだけどよ」
「お、おお……そうだよな」
「でも、その兄貴の先輩さんのチームの何十人かは……知らねぇけど。実際、マジで病院送りになってて……しかも、その集会に参加してた姫……的な? 女子、何人も何人も攫っていって――エロエロしまくった後で、どっかの山に棄てて、そいつは消えたとかでだ。……攫われた女子たちは、犯されまくった後、泣きながら裸で帰って来たらしい」
「う、うらやま……けしからん! お、俺も混ぜて欲っすぃ~!!」
「あほ、マジでヤバイから関わるんじゃねぇよ。てか、俺らみたいなパンピーにゃ……そんなのに出くわす機会も無ぇだろうけどよ」
* * *
――中休み――
机の上に腰を降ろして、そんなフォークロアめいたものを愉し気に披露し合う、クラスの連中の話を耳にしながら――その渦中にあった張本人の俺は……内心穏やかでは、いられなかった。
尾鰭に背鰭がついて、情報の信用度が著しく低下するのは有難い。
けれども、ヒレを得た噂話が自由気ままに世間を泳ぎ回って、広範の人に知られるてしまうと言うのは……好ましからざる事態を招きかねない。
ニュースで、この爆弾魔について触れられて居ない理由については……あの後ろ暗い集会に参加していた面々が
治療に当たる医療機関等での問診で、その怪我の原因について口を揃えて、季節外れの花火で大騒ぎしていたら……と。
そんな風に言葉を濁したからだと、澪経由で裏付けも取れている。
はしゃぎ過ぎた自身の軽率が招いた結果とは言え……それについては、今は心配する程の事では無いだろう。
千丈の堤も螻蟻の穴を以て潰ゆと言うのは、韓非子だったろうか。
立派な堤もオケラや、アリの開けた穴から決壊するという
大陸的な気風感じられる壮大な寓話は――
火遊びを糧にしなくては生きてはいけない、この卑し過ぎる自身の性状にも……すんなりと納得できたし、毎日の作業の中におけるモットーであるところの
善き神は細部に宿る
悪魔は細部に潜む
にも……ぴたりと相容れる。深く首肯するより他にない。
中休み終了のチャイムが鳴った。
俺は机の中から、教科書を取り出すと次の授業を受ける準備を整え。
先日の屋上での一件については……やはり、念には念を入れて――
早々に、あの連中に釘を刺しておかなくてはと、
始まった退屈の授業の中……そんな事を考えていた。
* * *
「ロック解除」
スマートリングを嵌めた左手の指を耳に差して、指定して置いた言葉を呟くとBlue tooth経由で、試作した装置の安全装置が解除された。
装備した右腕下腕部の中指を外側に反る様に意識して、手の平を勢い良く反らすと、親指側の側面に配置した筋電位センサーが、命令の入力を受け付け
ジャキン!
辺りに威圧的な音を響かせて、下腕部内側にレイアウトした装置から、二段伸縮のチタン・ブルーの刃が飛び出す。
反らした手の平を内側に折るイメージで指先を動かすと、高トルク・モーターの稼働音と、噛み合うギアたちの奏でる音と共に、瞬きする間に――チタニウムの電解着色でコーティングした、鋼材表面の結晶パターンが美しい刃は、袖の中に消えた。
(……動作は、悪く無い。夜なべしてPythonで組んだコードにも問題は無い……か?)
何度か刃の出し入れを繰り返して確かめるも――装置に、これと言った問題は見当たらない様に思える。
もっとも、この装置には。
先日イオナの家に置き去りにされていた――彼女たちからすれば〝困った〟俺個人からすれば小躍りしたくなる品々の中に紛れていた.380ACPと言う規格の銃弾。
これを使用する事を目的としたブラジルの銃器メーカー。
トーラス社の小型拳銃〝Curve〟をコピーして、プリンターで出力した物を、併せて組み込むつもりではあるから――その結果。
なんらかの不具合が発生する可能性も……無いではない。
(ま、夏休みに……おじいちゃんち行って、旋盤を使わせて貰ってからの話か。ガウスライフルの弾も削らせて貰わないと)
いつもブクマ有難うございます。
イラストの手首部分の袖と言うかタブは、
これは主人公が漸く購入叶った、
レザーマン・トラッドが、左腕側の装置に
「ガシガシ」干渉することを嫌って、
余らせた部分になります。デザインは左右一緒。
腕の長さを計り間違えたとかでは……無いですよ?
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