表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処女搾乳  作者: ……くくく、えっ?
二章:アウトサイダー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/216

誰が、サイコパスだ

「直球じゃなくてさ……『わぁ♪ 意外~♫ 至って普通のお部屋じゃあ~ん♡』みたいなのを想像していた訳よ。ある意味……予想は、しっかりと裏切られたけど。なんだろう……これ。蔵人の部屋見てみたいって、押し切っといて本当に……なんだけど」


 横に置かれた急造のガンラックに並べて立てられた、最早……正式な商品名といった向きすらもある、ぶちぶちの梱包材に収められた24丁のガウスライフルや、加工機械たちから


 そそっと身を離す様にして――澪がグロスに艶めく口元をグラスに運ぶ。


「最初に言っただろう……俺の部屋は、団欒の場には全然、向いてないって」


 キンッ……キンッ……ココッ、キン……、――カカカッ! キン


「千影は? 来ないの?」


「そっとしておいて……やってくれ」


 俺の言葉に澪が、表情を曇らせる。


「やっぱ……千影にはハードル高すぎだったって……私でも、ちょっと引くもん」


「それは……まぁ、そうなのかも知れんが。俺は既にイオナには……沢山の借りもあってだな。強くも出られない事情もあるんだ。あいつの引っ込み思案っぷりを考えれば――多少は、これで……」


 キキンッ! キ……ン キーーーッ キッ キッ


「いや、度胸だのなんだのつく前に悪化するっしょ? 黒歴史確定だよ? ふつー」


「やっぱ、そうか……そうだよな。それは困った……どうしよう」


 とは言え、実のところ そんなことは――最初から分かりきっていた事。


 なんの事は無い。俺は、自身の装置の完成度を高めるために悪魔(イオナと読む)と契約を交わして千影を売った訳だ。


 今更、悔いてみた所で。


 この取引を経て、俺のガウスライフルは――伝え聞くところの、現在カービン化著しい、世界の自動小銃を彷彿とさせるサイズにまで小型化に成功し、その重量に至っては2.6キロを切るという軽量化に漕ぎつける快挙を果たしていた。


 おまけにイオナが主催するサークルには、チャンネルを御覧になられた……大きなお兄さん方から『ぼいんライダーさんへ』と言う名目で――ライダース・グッズに始まり、種々アウトウェアに加えて水着、その他にもカスタム・パーツやら、新車のリッター・マシンまで送り届けられて来ると言う役得に与って……。


 個人の特定に至ってしまう面倒を考えれば、これに……そのまま千影を乗せる訳にも行かなければ――名義をどうするかなど、考える事は色々あったけれども。


 サーキットで乗る分には、特に問題は何もない事を考えれば、これらは有意義な取引だった事は、疑いようも無い。


 ――無いのだ。


「千影の様子見に行った方が良くない? ヤバい気がするんだけど」


 ここ最近の付き合いで知った、時折、澪が発揮してみせる、この手の――面倒見の良さには、いつも感謝の念めいたものも覚えはしたけれども


 俺は、その申し出を静かに押し留めた。


「他にも……あるんだ。むしろ こちらの方が致命傷だったと言っても良い」


「……まさか、学校にバレ――」


 キン、キン、カカカッ カン!


 不穏の空気から、最悪のイメージに至ったらしい澪が、顔から血の気を失わせる。


「いや学校には……バレて無い。バレては……いないんだ。不思議な程に――ひょっとすると年の離れた兄弟が居る少数の生徒なんかには、気付かれてる可能性は……無きにしも非ずなんだけれど」


「なによ、それ」



 * * *



「……、――、……おおぅ。それは、なんとも」


 俺の説明に澪が絶句する。


「そんな訳でだな、出張先で動画を観た千影の母親からだな……いや、ちょっと待ってくれ。もういっそ直接観て貰った方が説明が早い」


 キーッ キーッ カチッ、――ずおおおおぉぉおおぉッ


 取り出したスマホで、その箇所を開くと――澪は、こちらに顔を寄せるみたいにして画面を覗き込む。


「……ここだ」


 イオナのチャンネルで流れる配信のコメント欄を指差してみせる。


『……あんた、乳放り出して何してるの? 着る服が無いなら、腹踊りしてないで……これで服でも買って来なさい――母より。スペインは、バスク地方から可哀想な娘へ』


 なんとも痛まし過ぎるコメントと共に投げられた――赤スパが。


 事態を理解した澪が、スマホから顔を離して――ぺたんと床に座り込むと、天井に向けた目を泳がせていた。


「これはぁ……無理だ。手の施しよう無いんじゃない……かな。これで復活できたら、千影……まぢモンのメンタルお化けだわ」


 チンッ チンッ……チンッ


「えらい事になっちまった訳だ。本当に……どうしよう。くそッ! 全く思いつかん! これが電気回路か何かなら……短絡箇所を見つけたり、接触不良を直したりで――すぐに修理できるのに」


「……蔵人、あんた。今の台詞 ちょっと……まぢモンのサイコパスっぽかったよ?」


「失敬な」



 * * *



「そんでさ、蔵人……あいつは一体、なにやってる訳?」


 絨毯に腰を降ろして向かい合う俺と澪には構いもせずに、作業机に向かって目を凝らし、黙々と手元を動かすイオナに怪訝の声。


「……うん。何日か前に、電話で話をしたんだけどさ――」


「ほほう?」


「……なんだよ。なんか……まとまった金が入る目途が立ったから……とかでだな。前々から欲しかったらしいアルブレヒト・デューラーやら、ギュスターヴ・ドレやらの版画の本を買い込んで読み耽ったとかで――お陰で、興味が湧いたらしくて……だ」

いつもブクマ有難うございます。


宜しければ、お読み下さった御感想や「いいね」


その他ブックマークや、このあとがきの下の方に

あります☆でのポイント


それらで御評価等戴けますと、それをもとに今後の

参考やモチベーションに変えさせて戴きますので


お手数では御座いますが、何卒宜しく

お願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ