愁眉(しゅうび)
「でも、くーちゃん……この間、どこかの塾のセンター試験の問題も……ほとんど満点だったって聞くよ? 勿体……無いよ」
「「……セ、センター……なに?」」
同時に口にした内容に慌てた様子で、互いに譲り合う澪とイオナ。
「イオナ……あんたさ、ちょっと先に言ってみ?」
「なにを……想像したかで……一緒に行くよ? 澪」
「給食センターの亜種」「ステージ真ん中の取り合い……のじゃんけん」
「「…………」」
互いに口にした内容が、どうやら正解から程遠かった事は理解できたらしい ふたりが沈黙。
「あ、あ、ふたりとも……気にする必要はないから。全然ないから。私たちまだ中学生だし。これに関しては、くーちゃんが、お勉強でき過ぎるだけだから」
静まり返るふたりを必死に千影が、フォロー。
「学業を蔑して脂下がってみせるクセに……お粗末な得点に終わった事については、言い訳のしようも無い、我が身の不徳と言った所だけどもな……」
「くーちゃん……分かるように、日本語で話してよぉ」
「……くさくさする話な訳だ。大学なら まだ、いざ知らず……こっちは学校なんてものに学ぶものなんて既に無いって言うのに――この国では決まった年数は、学校なんてものに縛られる。母さんに陳情はしてはみたけれど『うん、でも千影ちゃんと一緒に学校には行けぇ?』とか言われて梨の礫だった。時間の無駄だからと食い下がっても取り合ってもくれん」
「おばさま……ありがとう……本当にありがとう」
「蔵人のお母さんと、お父さんって……なにしてる人? ……聞いてマズい事だったら謝るけど」
浴衣の袖から差し入れた手で肘を掻いていると、澪がそんな事を訊ねて首をすくめてみせる。
「いや、別に……マズくは無い……んだが。少々特殊な人でさ。ざっくり言うと大学で……いつも、なにかしらを教えている。このふわっとしか説明できない理由については……訳もあって。あの人、常時複数の論文に取り組んでいるんだけれど……定期的に博士号が増えていくんだ。息子の俺にさえ母さんが、既にいくつの博士号を持っているのか……お恥ずかしながら把握しきれてはいない」
「「……ほ……ほう」」
「でも凄い、頭の良さそうな お母様なんだよ♪」
「いや実際、頭が良い人だってのは、間違い無いでしょうがよ……」
「――それで父さんとは、大学の研究棟で知り合った関係らしいけど……こちらは、なにを研究しているのかは未だに知らん。きっと俺と同じで、自分が興味を示す事柄以外に、関心が無い男なのは間違いない……と言うか、顔すら思い出せん。お陰で自分の事を母親の単性生殖で生じた生き物なのでは? と思う事すら有る」
「「……ほへーん」」
「で、だ。話が大幅に逸れたから、戻すとだな。
「その界隈の太客として根強く評価も高い、ヤクザ共のトレンドでも東側の商品は不人気なんだとかで、その銃の密造村の方たちも、西側の製品をコピーするのに血道を上げているって話らしいから……
「多分、あれらは――
「取引先に見本として提示するために用意された、高精度な仕上がりを示すデモンストレーションか、なにかのための物で
「――なんらかの理由で取引の場で不都合が発生して……商品の処分に困った売り手が、意図的にイオナの家のホテルに放置して行ったんじゃないかなと、思う……
「思う思う、らしい らしいばかりの……想像だらけの話で恐縮だけどな」
話の区切りがついたところで、先程まで音を立て続けていた小鍋の火が消えた。
「迷惑にも……ほどがある。確かに最近、わたしんちのある界隈、やったら治安悪いけどさぁ」
手から箸を取り落としそうな程に力を無くして、イオナが虚ろな表情を浮かべてみせる。
「警察が、うちに来てたら……しばらく、客足も遠退くから、営業にならなかったちゅーの。もしそうなったら……生活に……モロに影響が出てたわ。ほあぁ……考えるだに恐ろしいぃっ!」
「で、蔵人」
有り得たかも知れない、ロクでもない展開のイメージに……顔を青くするイオナを遮り――澪が、こちらに水を向ける。
「うん?」
「で、結局。アレ……どうすんのよ」
彼女たちからすれば、一刻も早く解放されたいに違いない――頭の痛い問題に対して、俺は自らが打った手立てについてを話して聞かせてやる事にした。
「一応、あれらは……拾って来た冷蔵庫を加工して作った装置に収めた上で――水式回転砥石でチタンのカップや、ゴルフクラブのアイアン、10円玉なんかを粉にして日々蓄えてきた材料を使ってだな? 製作したテルミット材と一緒に置いてある」
「TEL me……なに?」
「違う、うーん……説明が七面倒臭いな。理屈は……置くとして、説明するとアルミ、胴、酸化鉄の粉なんかを特定の割合で混ぜ合わせて、火を着けると――
「金属も溶け落ちさせるみたいな温度に達する、学校の理科室でも お手軽に再現可能なレベルの反応の事を言うんだけど……ともかく。
「耐熱レンガを組む手間を考えると、面倒臭かったし……肉体労働は、あんまり得意じゃないものだからさ。代わりに それを用意した」
「俺が決めた特定の手続きを踏んだ扉の開閉を行わなかったり、装置に組み込んだ型遅れのスマホに俺が連絡をひとつ入れるだけで――あれは、あっと言う間に溶けて無くなる様にはしておいた。
「……ま、そんな訳だ。ひとまずは安心しろ」
いつもブクマ有難うございます。
宜しければ、お読み下さった御感想や「いいね」
その他ブックマークや、このあとがきの下の方に
あります☆でのポイント
それらで御評価等戴けますと、それをもとに今後の
参考やモチベーションに変えさせて戴きますので
お手数では御座いますが、何卒宜しく
お願い申し上げます。




