幸せになろうね
子は親を選べない。
まだ生きづらい世の中。
この世の中の何が『あたりまえ』で何が『普通』のことなのか。
まあ、知ったところでどうにも出来ないし。
どうにか出来た時にはもう世の中が変わってるかもしれない。
“自分”は人並みに恋をしてきた。一目惚れだって、片想いだって、両思いだって。恋人ができて手だって繋いだ。“自分”は『普通』の人間として生きてきた。
そう。“自分”は『普通』の人間なんだよ。ただ、“あの子”を好きになっただけ。
知らないうちに目で追いかけてた。
気付いたら同じ気持ちで、付き合った。
「嘘偽りなんてない。自分たちの愛の形を作ろう」
「自分たちのペースで。ゆっくり歩こう」
これが我々の合言葉のようなものだった。本当に好きで大好きで。たまらなかった。やっと自分のものになったのだと思った。
それからの日々はちゃんと幸せだった。連絡を取り合って、電話をして、たまに会って、互いの体温を確かめ合ったりもした。ちゃんと幸せだった。
だからこそ親には言い出せなかった。結果が見えてるから。隠して隠して隠し通しての上に成り立った幸せ。それでも良かった。だって、それでも幸せだから。好きな人だから、大好きな人だから。
“あの子”はいなくなった。置いていかれた。
親の目の前で飛び降りたって。さすがだなあ。そういうところが本当に大好きだよ。それだけ愛してくれていたんだね。
追いかけてもいいかな。いまどこにいる?
早く会いたいな。明日にはそっちに行けると思うから。待っててね。
今世はまだ早かったみたい。あの世でだったら周りの目なんか気にせずに愛しあえるよね。
また幸せになろうね。
“自分”が、男でも女でもどちらでなくても。
“あの子”が、男でも女でもどちらでなくても。
恋愛には様々な形があって、誰を好きになってもいいんです。いいはずなんです。