アンファングという街①
次の日、ジベルたちは起きるとすぐに朝食を食べに行った。そこで、今日の予定を決めることになった。
「ジベルは今日何する予定なの?」
ジベルは食事を目の前にして合掌をし、少しの間目をつぶっていたが、目を開けて元気よくいただきますと言ってからその質問に答えた。
「今日は、ソルジャーの本申し込みをしに街の中心にある役所に行く予定だよ」
ジベルが答えると、
「俺も今日行く予定だったから、一緒に行こうぜ!そんで、申し込みが終わったら街の店を見に回ろうぜ!ここの商品高いから買えないけど、見るのはタダだしな!」
アグニが楽しそうに話す。
「そうだね!」
「そうと決まれば、色々な店に行きたいから、早く飯食って、旅館に戻って役所に行っちまおうぜ!!」
2人は勢いよく朝食を食べ、旅館に戻りすぐに出発した。
役所までは歩いていき、道中様々な店があったが行きたい気持ちを抑え、役所に急いで向かった。しばらく歩くと、センタータウンの入り口が見えてきた。
「うわー、大きな入口だ!!」
そこには、大きな扉の空いている門があった。それはまるでセンタータウンだけをしっかりと守るかのように建てられていた。
門をくぐり、一番高い建物に向かって歩き始めた。その建物の最上階がスタッド町長の町長室があり、一階は役所になっている。
ジベルはいつも通り辺りをキョロキョロしながら歩いていると、横から頭を軽くはたかれた。
「キョロキョロするな!田舎者ってばれるだろ」
恥ずかしそうに言う。
「痛いなー、そんなことで叩かないでよー」
痛そうに頭をさすっていた。門をくぐってから少し歩くと、すぐに役所まで着くことができた。
「門をくぐってからは役所に着くまでは早かったね」
「そうだな。それじゃあさっさと申し込みしちゃおうぜ」
2人は役所に入り、すぐにソルジャーの申し込み場所に行った。
「あのー、ソルジャーの本申し込みをしたいんですけど、」
窓口のお姉さんに声をかけると、二人の対応をしてくれた。
「仮申込書をご提出してください」
仮申込書をお姉さんに渡した。
「はい。確かに預からせていただきました。最後に確認をさせていただきます。本当に申し込みをさせていただいてもよろしいですか?本申し込み後はどんな理由であれ、辞退をした場合は今後一切の受験を認めません」
2人の答えはすでに決まっていた。
「大丈夫です!!」
「あったりめーだ!!」
迷いはなかった。
「かしこまりました。それでは受験番号のプレートをお渡しします」
そう言われると、長方形に数字の描かれたプレートを渡された。
「これには受験者の個人情報などの情報が入ったチップが埋め込まれています。違う人が試験当日につけてきますと入場ができないようになっています。くれぐれも紛失等がないようにお願いいたします。試験日時は今日から一週間後の朝9時にこの建物の地下に集合ですので遅れないようにしてください。地下への行き方は当日この窓口に声をかけていただければご案内させていただきます」
「わかりました!!ありがとうございます!!」
そう言うと二人は役所を後にした。
「このあと、どこに行くの?」
ジベルが質問をした。
「それはもちろん、武器屋だろ!!」
アグニは目を輝かせて言った。
「試験では武器の持ち込みが禁止だけど、ソルジャーになれたらなにか、かっこいい武器使いたいじゃん!!!それじゃいくぞ!!」
アグニは走って武器屋に向かい、それを追いかけるようにジベルはついて行った。
2人は昼間を色々なお店に行って楽しんだ。買うことはできなかったが、二人でいろいろな店にいることが楽しくて仕方なかったのだ。時間はあっという間に過ぎ、夕方になっていた。
「いやー、今日はたくさん見て回ったな!」
アグニは楽しそうに笑いながら言う。
「とくにあの迷路みたいになっているお店はおもしろかったね!アグニがはぐれちゃって、探すの大変だったよ!」
「迷子になったのは、ジベルの方だろ!」
2人は楽しそうに話しながら、旅館の近くのところまで来ていた。すると、男性の大きな怒鳴り声が聞こえてきた。
「だから、金のない奴には売らねーよ!!」
声のする方に行くと、薄汚れた格好をした男性が、パン屋の前で店員らしき人にしがみついていた。
「頼む。残飯でも何でもいい、少しだけ食べ物をくれぬか」
「しつこいんだよジジィ!!」
「「あっ!!」」
2人は店員が汚れている男性を思いっ切り蹴り、男性が後ろに倒れてしまうところを見た。
「人間の分際で雷人が作った食べ物を食おうなんて、できると思うなよ。雷で攻撃しなかっただけ感謝しろよ」
そう言われると、薄汚れた格好の男性は肩を落としながら道を歩き始めた。
「あそこまでしなくてもいいのにな」
呑気にアグニがそう言ってジベルの方を見た。そこには無表情ではあるが、怒りが今にも爆発しそうなジベルの姿があった。
ジベルは無言でゆっくりと歩いて店に向かっていく。アグニはジベルの顔を見て、驚きすぐに動くことができなかったが、少し経って「はっ」とする。
(まさかあいつ、店員のことを殴ったりしないよな、、、)
アグニは不安になり走って、追いかけるがジベルはすでに店の前にいた。
「おじさん!!!!!」
ジベルは大声で店員を呼んだ。すると、
「パン一斤頂戴」
殴るのを必死に抑えているのか、右の拳が震えているのがアグニには見えていた。
店員は一斤を持ってきた。そして、ジベルは机を叩きつけるようにお金を乱暴に置いた。その衝撃で机がミシっと音を立てた。
「これちょうどあるから」
そう言うと、走って薄汚いおじさんを追いかけ、アグニもそれを追った。おじさんの歩く速度は遅くパン屋からすぐのところで追いつくことができた。
「おじさーん!!」
ジベルはおじさんに笑顔で近寄った。そのジベルの姿におじさんはひどく怯え、泣きながら土下座をした。
「何度も頼んで申し訳なかった。だからどうか命だけは助けてくれ」
涙声で地面に頭をこすりつけながら命乞いをした。するとジベルはしゃがみ込み、おじさんに顔を近づけた。
「そんな命を取ったりしないよ!僕はおじさんにこ、、」
話の途中で後ろから急に誰からか口を手で塞がれた。
「んんーー!!」
しかし、ジベルはそれをすぐに振りほどき後ろを向くとそこにはアグニがいた。
「なにするんだよ!!」
ジベルは大声で叫んだ。
「まさか、アグニもあい、、、、」
アグニはジベルの口をもう一度塞ぎ、耳元でつぶやいた。
「一回冷静になれ。お前を助けてやる。俺の言う通りに動け。このじいさんを助けたいならな」
そう言うと、アグニはジベルの口から手を放した。
「ジベル。おじさんをそこまでして、からかうなよ。こんなやつほっておいて行こうぜ」
「何言、、!?」
アグニはジベルをにらみつけ黙らせた。
「おいくそジジィ。金もねぇーのにパンをもらえると思ったか??お前の土下座は傑作だったぜ!!」
爆笑しながらそう言うとしゃがみ込み耳元で何かつぶやいた後、おじいさんは悲鳴を上げながら走って行った。パン屋の店員はそのやり取りをジッと見ていた。
「ジベル、早く帰って飯にしようぜ」
アグニは歩き出し、ジベルはその後姿を睨むようにして見ていた。
・・・・・
しばらく無言で歩いていたが、ジベルがとうとう我慢できず口を開いた。
「アグニ、あの行動はなに?僕はアグニのことを見損なったよ。まさか、あの店員のやったことが正しいと思っているの?」
その言葉に、アグニの眉毛がピクリと動き、歩くのをやめた。
「お前、助けてもらっておいて、なんてこと言いやがる」
怒りの形相でジベルの方を見る。
「僕は助けてなんてもら」
「だまれ!!!!」
アグニの声が響く。
「この街のルールをお前は知らないできたのか?」
(この街のルール?)
ジベルは怒った顔から少しだけ不思議そうな顔をした。
「その感じからすると、知らねーみてーだな。この街だけってわけじゃねーが、人間の人種差別が行われているんだよ!この街、アンファングは、スラム街以外は雷人しか住んでない。逆に言い換えると、スラム街でしか人間は住めないようになっている」
「?!?!?」
アグニは話を続けた。
「あと、この街には人間に手を差し伸べてはいけないという法律も存在する。もしすれば即刻死刑だ。おめーは俺が助けなければ、パン屋に通報されて死刑だったんだぞ!!」
ジベルの顔がだんだん青くなる。
「くそ、気分わりーな!!」
足元にあった小石を思いっ切り蹴った。
「ごめん、、、」
2人に会話はなく、ジベルは静かにアグニの後について行った。旅館を通り過ぎ、しばらく歩くと路地裏に入って行った。するとそこには
「遅くなっちまってすまねーな、おっさん」
さっきのおじさんが怯えながら立っていた。ジベルは状況が理解できなかった。
「これは、、、」
アグニはジベルの背中を押した。
「早く渡してこいよ。俺は見張っててやるから」
そう言うと路地を抜けていった。
「おじさん、これさっき渡せなかったけどよかったら食べて!!」
おじさんは受け取ろうか迷ったが受け取ることにした。
「な、なぜ、わしを助けてくれる。見る所、おまえさんは雷人じゃないか」
声を震わせて聞いてきた。
「なぜって言われても、、、」
頭を掻きながら、
「だって、困っている人がいるんだもん。そこには人間も雷人もないと僕はないと思うんだ」
満面の笑顔でおじさんに向かって言った。その言葉を聞き、おじさんは泣き崩れた。
「なんて少年だ、私は雷人というものを誤解していた。中にはこんなにも心優しい人もいるではないか。この恩は一生忘れない。今はお返しはできぬが、いつか必ずお返しをさせていただく」
「お返しなんていらないよ!!」
恥ずかしそうにジベルが言う前で、おじさんは赤ちゃんのように泣いていた。そこでジベルは何かを思い出したかのようにアグニの方へ走って行った。すると、戻ってきたのはジベルではなくてアグニだった。
「おっさん、さっきはそのなんだ、悪口言って悪かったな」
おじさんはその言葉に首を横に振った。
「あんたがいなかったら、わしもあの子も殺されていた。本当に助かった。ありがとう」
「やめろよ、俺はあんたを助けるつもりはなかったんだから。ただ、友人が殺されたくなかっただけだ。」
アグニの照れ隠しにおじさんはクスッと笑い、もう一度感謝を述べ、スラム街に戻って行った。
2人は無言で旅館の前まで戻って行った。そこでジベルは立ち止まり、アグニの名前を大声で呼んだ。
「アグニ!!!!」
その声にビクッとなりアグニは後ろを振り向く。
「さっきはひどいこと言ってごめん!!僕が何も知らないから助けてくれたのに、、、本当にごめん!!!」
ジベルは90度頭を下げた。
それを見てアグニは笑い始めた。
「もう怒ってないからいいよ!さっきのおじさんのあんなに嬉しそうに泣いている姿見たら俺も嬉しくなっちまったからな!」
アグニはジベルに笑顔を向けた。
「まぁ、貸し1としておくぜ!それより早く飯食って風呂入って昨日の修行しようぜ!」
2人は急いで部屋に行った。
「そういえばなんでおじさんがあそこにいるのわかったの?」
不思議そうにアグニに聞く。
「あーそれは、おっさんの耳元で、悲鳴をあげながら、さっきの路地裏まで走っていけ。そしたら、あとは俺たちが何とかしといてやるて言ったんだよ。」
ジベルは感心していた。
(アグニって何も考えてなさそうなのに色々考えていてすごいな)
そんなことを思ったが口にしたら怒られそうなので、言わないことにした。
2人は無言で風呂の準備をしていると、ジベルはこんな話題を振った。
「アグニ、怒るかもしれないけど教えてほしいことがあるんだ」
「ん?どうした?」
アグニは準備をしながら軽く返事をした。
「この街の人種差別について詳しく教えてくれない?」
アグニは驚き、ジベルの方を見たが、ジベルの目は真剣でどこか怖いような目をしていた。
今回は少し長めです。
どうしたら人種差別なくなるかな?




