追風
36歳になったとき、僕は公園のベンチに腰掛けて動かないブランコを眺めていた。1つになってしまったブランコ、切れかかった街灯、階段のかけた滑り台、錆びておれそうな鉄棒。以前は綺麗にならされていた砂場も、今では絶え間なく雑草が敷きつめられ目には見えなくなった。
20をこえた頃だろうか、時間は走り始め、歩くことはできなくなった。
12月の風は僕の身体を激しく揺さぶり、ブランコはぎいぎい音を立てて揺れた。風は住宅街をこえ、公園をわたり、僕の前から去っていった。僕の隣にはもう誰も座ってはいない。風に拾われてどこまでも行ってしまった。
僕はベンチから立ち上がり家へと向かう。明かりの消えた空っぽな家へ。
思い出の詰まった公園も古くなってしまいました。
あなたはいつのまにか、どこかへ行ってしまったのですね。