・おまけ
オマージュにしてリスペクト
注意されたら消します
まぁ、夏になりますと色々と熱にやられて、体が弱くなりますねぇ。
夏風邪だの熱中症だの夏バテだのということで、体が弱った人が行き着く先は病院という事でして。
私が体験したちょっと怖い話を。
その日は気温が三十八度を超える夏らしい夏だったんです。
ちょっと地方に仕事で用事があったもんですから、車でそちらまで運転して移動したんですね。
仕事も終わって帰る頃に、ダルイなぁ~、肩が重いな~、なんて感じがしましてね、仕事柄体調に気を使っていたので、持っていた体温計で熱を測ったんですが、三十七度とちょっとありまして。
あぁ、これは気分が悪いはずだ、と思ったんですが、何せ連れがいないもので、仕方なく自分で車を運転して帰っていたんです。
で、帰り道に道路の脇に内科の個人病院を見つけまして、ちょうど駐車場も開いていたので、これはラッキーだな、という感じでそこに入ったんですね。
それで、中に入ったのは良いんですが、中の様子がおかしい。
大体、こういった地方にある個人病院というのは、ご高齢の方々が大勢いらっしゃるもんだと思うんですが、そういったご高齢の方々というのは大抵おしゃべりなもんなんです。
偏見かもしれませんが、そういったもんだと思うんですね。
ところが診療を待っている人は三人しかいない。
その三人は端っこの方で集まって何やらゴニョゴニョ、ヒソヒソと話をしている。
気のせいか天井の蛍光灯もどことなく薄暗い。それで、何だこれは? と思いつつ受付へといったんですが、受付もどことなくおかしい。
よくある受付の中と外を仕切る為の半透明なプラスチックの壁があるじゃないですか、アレが傷なのか元々の色なのか、くすんでいて白く曇っている。
そのお陰で受付の看護師さんの顔が見えない。
気持ち悪いなぁ~と思いながらも、熱があるんで仕方ないですよねぇ。
健康保険証を出して待っていたんですよねぇ。
それで、色あせたソファーのところに座って待っていたんですけれど。
なんか、こう……、端のほうでコソコソ、ゴニョゴニョ話している声とか気にしながら、腕を組んで待っていたんですが、その内、こっくりっこくり船を漕ぎ始めちゃって。
風邪の所為なのか仕事の疲れなのか、気づいたら眠っていたんですね。
それで、私を呼ぶ声に気づいたんですけれども、グッって体が固まって、頭が下を向いた体勢のまま体を戻す事が出来ない。
視界の外れでかろうじて私を呼んでいる人の足元だけが見える。
あ~何か始まったな~なんて。
私の名前を呼んでいる人は、白い靴と膝下のスカートで、恐らく女性の看護師さんだということは分かるんですけれども、それの様子がどうもおかしい。
靴や足元が泥で汚れている。
白いスカートも何かの液体で汚れたのか所々茶色い。
それでピンと来ました。
これはこの世のものじゃないな、と。
これはヤバイ。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。
もう、冷や汗がダラダラ出てきましてね。
その間でも私を呼ぶ声は続いている。
体を動かそうとしてみるんですけど、もう完全な金縛り状態。
しばらくしてると何かに引っ張られるようにして、体が起き上がっていくんです。
こうグググッという感じで、背筋がピーンと伸びていくんですねぇ。
さっきまで私を呼んでいたモノの腰あたりから下、足元あたりが視界の端で見えていたんですが、それが段々と全身が見えてくるんです。
フッ、クッ、って力を入れて抵抗するんですが、体は自由にならないんです。
座った状態で背筋が真っ直ぐになっていきますと、最後は顔だ。
ついに顔が前を向きまして、看護師さんの全身が見えたんです。
恐らく血だと思うんですけれど、白いナース服やナースキャップが所々茶色に汚れていて、その姿が全体的に茶色に薄汚れていたんですね。
服が汚れているところ以外の場所、顔や体は普通の姿だったんですが。
ナースキャプっていうのは、最近じゃ看護師さんは着けないらしいですね。
まあ、そんな事もあって、目の前の人がこの世のものじゃないと余計分かったんですけれども。
それで、起き上がった私の目を見た看護師さんは、私の名前を呼ぶのを止めると、見たこともないような怖い笑顔で首を横に曲げたんです。
一瞬の出来事なんですが、首が曲がったと思ったら、そのままグルンと看護師さんが横に丸まったんです。
こう長いものをクルクルと巻いて縮めるみたいに。
頭から丸まって、最後は足までグルンっと。
最後にはペロペロキャンディーみたいな円盤状なって、床に転がりました。
そこで目が覚めたんです。
起き上がって周りを見回すとそこは結構な広さの空き地で、私は車の横に転がっていました。
病院なんて影も形もありませんでしたよ。
恐らくそこで何かあったんでしょうねぇ……。
数日後に懲りずに短編集みたいなのを投稿開始予定です