事情を知るもの?
今回は改稿の仕方を大幅に変更しました。
皆様の感想・レヴューを踏まえて投稿済みの方も修正しようと思います。
「ハイルは元気だったかい?」
見知らぬ人物の名前を問うてきたのはまだ成人の年にも達しそうにないような、白く長い髪が目立つ華奢な体の少女だった。名前は確かレイリーと言ったか。
レイリーはシーニィをじっと見つめる。親しい友人と話すときのような笑顔を、顔に張り付けて。
その笑顔は、一見してみればただ人当たりの良い気のよさそうな優しい少女を連想させるだろう。ただその顔をこうも緊迫した状況でやられてみると、薄気味悪さや威圧感すら感じることを知ることができたのは、この場では実際に見つめられているシーニィただ一人だろう。
「知らない」と、ただ一言いえば済むはずなのに、こころなしか抑圧されている気がして、言葉がのどから出てこない。
一言で言ってしまえば可愛らしい少女の、どこからかただようプレッシャーは、笑顔とは裏腹にこちらを警戒しているようだった。
「遊ぼう、レイリー」
姉は妹にかまって攻撃をした。
「あとにしようか姉さん」
妹は華麗に姉からのかまって攻撃を回避した。
……そういえばいたな鎖女、名前は確かアイナと言ったか。
「あれ? ハンスは元気してるかなって聞いたんだけど?」
先ほどの姉妹のやり取りのせいか、さっきから感じていたプレッシャーは感じなくなっていた。
「そのハンスって人、あたしは知らないわよ」
ようやく口を開けた。だがハイルと言う名前に至っては見当がつかない。そもそもこれまでこちらの世界でかかわってきた人物が限りなく少ないのだ、ロサにグオネスにエスカ、宿屋の店主やあのチンピラの内の一人だった可能性はゼロだな。なぜか確信ができる。
「あれ? じゃあ自己紹介してなかったのかな。君をこっちの世界に飛ばした奴なんだけど」
「え、あいつ? え……そういえば名乗ってなかったわね、うん…え、ほんとに?」
「そうそうそのあいつ! 元気してた?」
こっちが混乱している中で、レイリーは懐かしそうな雰囲気を出していた。
いやまあ、確かに元気だったかと言われたら…少し殴り飛ばしたな。
「えっええ、元気だったわよ」
ここはさらっと模範解答を決めようと思ったたが、顔が引きつってしまったような気がする。
とはいえ、また疑問が一つ増えたわけだ。
「……どうして、私をこっちの世界に飛ばした奴の事を知ってるの?」
「そう、まずはそこに行きつくわけだ」
「そういうこと言うからには説明、あるんでしょうね?」
自分から話題を振っておいて、やっぱ今のなしと言うのはさすがにないだろう。だが思わぬ収穫ができたかもしれない。案外簡単にわかりそうだ。
「それがぜーんぜん、僕たちにもさっぱりなんだ」
さっきの言葉を訂正しよう、道はまだ遠かった。
正直まだ信用ならないとはいえ、期待していなかったと言えば嘘になる。だがこの落胆した気持ちを立て直すのは時間がかかりそうだ…。
「あたしの期待はどうしてくれるのよ」
シーニィが落胆した顔をしているのをよそに、レイリーはニコニコと笑っている。
「心中察するよ」
「だったらせめてそのニヤツいた顔、やめなさいよ」
「レイリーのは、笑顔!」
「うるさいわよ! ていうかあんたはいちいち会話を中断させんな!」
会話の途中からちゃっかりレイリーに抱き着いている。どれだけ妹命なんだ…。
「姉さん、後でね~」
「うぐぐっ」
アイナがかがんで頬を摺り寄せてくるのをレイリーは片手で押し返している。あと押し返す力がすごいのか、アイナの顔がすごいことになっている。
「ごめんねシーニィ、こんな姉で。話しは変わるけど、シーニィはこっちの世界に飛ばされたって言ったよね。じゃああっちの世界は覚えてるの?」
ここでレイリーが言っているあっちの世界とは、シーニィのもと居た世界の事だ。だがその答えは、もう決まっている。
「覚えてないわ、不本意だけどね」
「そっか………ねぇシーニィ、お面を出すことってできる?」
その質問はおかしい。なぜなら、吟醸のことはロサ達にしか喋っていないからだ。
「吟醸の事を知ってるって、やっぱりあんた達…」
「勘違いしないでほしいんだけど、これは僕たちギルドの情報網のおかげだ。本当に僕たちはハイルが今どこで何をしているのかも知らないし、君がどこの世界から来るのかも知らないよ?」
とは言うものの、この半信半疑の状態で見せていいものかどうか。
「……いいわ。吟醸を呼ぶ。それにあんた達、少なくとも敵ではないみたいだし」
「やっぱり、時々見せた敵意は僕たちを試すためだったか」
シーニィはこれまで、目の前の相手に幾度となく攻撃を仕掛けるように見せた。
その中で反撃に移ろうとしないということは、少なくとも交戦の意志はないという事。つまり、少し強引かもしれないが多少は信用できる。
「でも、姉の方は殺意がダダ漏れだったけど」
アイナは妹のレイリーとは違い、あまり理性的ではないようだ。会話の途中からもう臨戦態勢だった。
「お前、あいつの加護を受けてる。だから嫌い」
「加護ですって?」
「ああ、ただの翻訳だよ。こっちの言葉がわかるようにね」
なるほど気にも留めていなかったが、言われてみれば看板の文字なんかも意味は分からないが読めていたな。
「あのチャラ神、もっとましなのつけなさいよ」
「ははっ、チャラ神か~」
「まあ、いいわ。とりあえず吟醸を呼ぶ」
「よろしく頼むよ」
「吟醸」
名前を呼んだ直後、シーニィがかざした手のひらに白い渦が発生しそれが段々お面の形になっていく。
額に角が二本生えた、鬼のお面。今にして思えば、吟醸はその形にちなんで白鬼なんて呼ばれていた気がする。
そして、久々に話す、一緒の世界から来た喋るお面の一言目は…。
「さて、腹~へったな、お嬢!」
ご一読ありがとうございました。
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